第一章 初まり
こんにちは!
明けましておめでとうございます♪
本年もよろしくお願い致します(めり込み土下座)。
なかなか筆が進まず前回の投稿から日が開いてしまいまして、気づいたら年が変わってしまっていました(汗)。
待って下さっていた方いらっしゃいましたらごめんなさい・・・!!
さて!気を取り直して、「神々のイデア」始まります!
「あたしもやる。平和で豊かな国だったら、ってずっと願ってたけど、あなたに出会って分かった。戦いの無い世の中には、あたしがすればいいんだって」
その目には、決意と共に見たことのないモノが宿っていた。
[其れ]がどれほど害になろうと、必ずやそれを上回る利をもたらすだろう。
「──分かった」
その瞳に、国を託す。
***
木立の中、訓練用の武器を手にしたマイはじっと木の瘤を睨む。
伸ばし過ぎた髪は乱れてぼさぼさ、お下がりの巫女服は汗でどろどろ。
だが格好になど構いもしない。
何故なら彼女は今、紛争を終わらせるための、小規模組織の見習いとして鞭を握っているのだから。
精鋭組織に、役立たずは要らない。
突出した実力が無ければ、捨てられる事だってあり得る。
泥まみれになってやっと得た居場所だ。失いたくは無かった。
「体力無いなぁ。その程度で戦闘とか無理」
ふらついた拍子に飛んだ、アリスの挑発に体が熱くなる。
「まだ動ける!」
師は口の端を引いて笑った。
***
「ご飯できたわよー!」
毎日のことながら、これほどまでにほっとする言葉はないと思う。
そして、これほど騒がしい時間もないと思う。
「マイ早く!食いっぱぐれるよ!」
さっきまでの威厳は何処へやら、すっかり平常モードのアリスに手を引かれ、半ば強引に本日の稽古は終了。
──わーい、お腹空いた。
料理を担当しているのは、リネラ全体の家事や裁縫を取り仕切るビオラだ。
ゆるくウェーブを描いた金色の髪が印象的な女性である。
リネラ、と言うのはマイ達が所属する組織の名で、このイデアの国に六十年以上続く紛争を終わらせるため活動する精鋭達のことだ。
頭領を含めた構成員八人のうち、ビオラを除く七人が戦闘要員であるため、日々訓練そして怪我人が絶えない。
なお、新人のマイが最初に教え込まれたのは、絶対にビオラだけは怒らせてはならない、だった。
何故かはよくわからないのだが。
居間となっている畳敷きの部屋に入ると、狭い食卓に皿が敷き詰められていた。
「#♪$%/≠:仝^€」
先に座っていた──というか、つまみ食いしていたシュヤが片手を上げてもごもごと何か言っているが、悲しきかな、何が言いたいのか全く分からない。
アリスが小首を傾げた。
「──何て?」
「&☆¥°〒〆*+→|☾✿↑♦└〈✼※〉♞✣」
「いただきまーす」
「あのねアリス、あれでも頑張って喋っているから聞いてあげて?聞き返しておいてそれはないと思うわ」
「ねえビオラ、分かったけどしれっと悪口挟むのやめよ?」
「@/&○>€〜〒〆=×^*☆!!」
「飲み込んでから喋れば良いのに」
「_&@£♤%^〜]〒\#$」
「うるさ」
「外まで良い匂いしてるな。今日は焼き魚か?」
微妙に噛み合わない会話を続けていると、腰に刀を差した青髪の青年が顔を出した。
「お察しの通りよ。ちょっと奮発して、汁物には貝も入ってるわ」
ビオラがおっとり微笑み、ジュノの目がきらっと光る。
が。
「・・・なあ俺のやつだけ貝入ってないぞ」
不思議そうな顔が、ジュノの皿に伸びたシュヤの箸を見て引き攣った。
「おいまたお前か!」
「*〆♪・%#=、$^/★、▽:℃〒+£」
「これで四回目だよな?殴るって言ったよな?」
「ちょ、ジュノ、ごはん中だから!」
一歩出るマイ。
ちゃぶ台ごと避難するビオラ。
アリスは既に不敵な笑みで拳骨をボキボキ言わせているが、華奢な体躯だけに違和感がすごい。
そもそも、素手で戦う人じゃない。
「/@※%£^≠♤仝ヾ://〜♪」
「早く飲み込めば良いのに・・・」
「ジュノなんかに殴られたって、痛くも痒くもないってさ」
揉み合いながらツッコミを入れる弟子の苦労はどこ吹く風で、アリスが楽しげに笑う。
「舐めすぎだろ。本気で殴るぞ」
「やめてー!」
「・・・〜、おいてめアリス適当に喋んな!」
「食べながら喋るから悪いんじゃん。私は無罪」
相変わらずアリスの方は気楽なもので、マイとシュヤの抗議を聞き流し笑い飛ばした挙句、ちゃっかりジュノの食事にまで箸を伸ばしている。
「嘘つけ。どのみち俺の飯に手出したから有罪」
──大惨事の予感・・・!
「食べない方が悪いんだよ、私は無罪」
「ふざけんじゃねーよ、アホ仲間のくせに」
「一ミリも空気読まない上に、真っ先に人の分盗み食いしてた誰かさんとは違いますー」
「うっせーな、空気っつーのは吸うモンだろうが」
「私以上のバカはっけーん」
「お前らどっちもどっちだろ。しれっと俺の飯食いやがって。しかも否定すらしない」
「ご飯に執着しすぎでしょ」
「食べ物の恨みは怖いんだぞ」
「恨まれたところで、だよ。どうせジュノ怖くないじゃん」
「いちいち煩いな。じゃあ、やるか?」
太刀を握って凄まれても、アリスはへらへら笑っている。
彼女のことだから──外野の苦悩をよそに──ジュノと手合わせしたいだけだろう。
そうこうする間にも、ジュノの皿からはどんどん食べ物が消えている。
つまり。
国中が紛争に明け暮れ、日夜その中心にいながらも、ご飯の時間だけはみんな子どもに戻るのだ。