サクシャノメイソウ
シャルロット編を書き終えた時、疲れ果ててシリアスが書けなくなった作者の迷走によって、何の脈絡もなく生み出された究極のネタ回です。楽しんでいただければ。
「ん?何だこの紙。『この間の戦いで力尽きて後が完全に迷子なので、そっちで適当に日常回お願いします』・・・?誰だこれ書いたの。あ、名前書いてた。by作者───っておい!ここ俺の席だぞ!話の収拾丸投げするなぁぁぁ!」
──ハイそれでは作者は瞑想します(←?)。司会進行(と言うかツッコミ)はジュノ。やる気喪失した作者の代わりに頑張ってくれ給え。
「おい逃げるな作者!おいこの!馬鹿やろぉぉぉ!!」
***
「──と言う訳で、日常回をする事になったそうです。因みにジュノ(二十五歳男性)は不貞腐れ中です」
「あれー、本編だとヴァキア死にかかってるじゃん。良いの普通に出ちゃって?」
「いーンじゃねェのか?クソ真面目過ぎンだアリスはよォ」
「アークがアホ過ぎるだけじゃん。やっぱこの辺はきっちりしなきゃね」
「ふァァァ・・・眠ィ」
「話聞いてた?」
「日常回と言っても何をするかは決めた方が良いですね。取り敢えずこの紙に普段している事を書いて下さい」
「頭領も全然話聞かないし。独り言×三じゃ成り立たないでしょ。おーいジュノ?聞いてる?」
「聞いてない」
「思いっきり聞いてるじゃん。ジュノいないと纏まんないんだから拗ねない」
「自覚あるならお前が突っ込めよ〜」
「ジュノ、せっかくヴァキアが目立ってるんだから合わせてあげなさい───じゃなくて、せっかく上等な紙を配られたんだから、やる気出して書いて?」
「ビオラ心の声ダダ漏れ過ぎな。しかもどう見てもザラ紙の裏紙だろこれ」
「あたし文字書けなーい」
「俺もムリ」
「オレ読めねェ」
「あー、まあそう言う奴も居るよな───いやお前は読めろよ!忍者はそれじゃ駄目だろ!」
「書状盗み見する時とか、改竄する時とか困るよね?」
「んァ?まァその辺はテキトーに」
「ノリ⁈お前のノリかよ⁈真逆まさかのリネラの命運⁈」
「怖っ。嘘過ぎでしょ」
「恐ろしい話だ」
「何だチビいたのかよ。悪りぃ、ちっさ過ぎて見えんかった」
「貴様・・・・・・‼︎」
「出て来て早々に喧嘩してたら、いつまでも話進まないよね───ってイノスそれあたしのお饅頭‼︎」
「・・・知らぬ」
「知らぬじゃない!後でこっそり食べようと思って隠してたのに!人の懐漁るなんて最低!」
「・・・油断大敵」
「認めたー‼︎」
「・・・落ちていた」
「矛盾し過ぎ!返して!」
「返さぬ」
「最低‼︎なんでそこだけ即答⁈」
「見習いは大して小遣いもらえないだろ。なんで饅頭なんか持ってるんだ?」
「隣のお爺さんの農作業手伝ったらくれたの!どうでもいいから早く返して」
「・・・・・・」
上背を強調するように立ち上がり饅頭を掲げるイノス。
当然、マイに届くはずがない。それなら──!
床を踏み締め、全身をしならせて渾身の力で饅頭目掛けて跳び上がる。
と、不自然に爪先が浮いた。
「アリス⁈」
「可愛い弟子が頑張ってるんだから、このくらい協力してあげるのが師匠ってものじゃん」
「お前の師匠像どォなッてんだ」
マイを軽々持ち上げて、得意気に師匠が笑う。
ツッコミを放棄したジュノと、シュヤとの喧嘩に忙しいルイの代わりに、アークが頭を抱えた。
「アークの師匠みたいにぶっ飛んでないじゃん私」
「あー、・・・姐サンは除外で」
「エレナはほとんど人間やめてた」
「ルテシアはまァまァまともだったろォ。お前の師匠ォ、副頭領だったからなァ」
「別に副頭領まともじゃないじゃん。うちの代、アレだよ?」
アリスが顎で指した先。首を回すと──
「知能指数の低い猿が!」
「あ?ロクに屋根にも登れねぇヤツが何で副頭領なんだよ!」
「煩いいつの話をしている貴様!」
「うっせぇな、二ヶ月しか経ってねぇぞ」
「二年と二ヶ月の違いすら分からない低脳のくせに言葉を発するな。時間と文字数の無駄だ」
「二年前っててめぇ十六だろ⁈まだ落ちてたのかよ⁈そんで包帯まみれになってたのかダッセェ」
「喧しい!敵後方四十四度の死角を崩していなかった以上問題など有る筈が無かろう。その上、落下していようとも矢は当てた」
「受け身取れアホ。つかバレなかったってだけの話じゃねぇか。ちっさすぎて見えなかったんじゃねぇの?」
「偶にはその減らず口を閉じようと思わんのか貴様!」
「キレやすい副頭領だな、ったく」
「ちびちび煩い!大体、六年前まで貴様の方が遥かに低かっただろうが!」
「いつまで過去の栄光に縋ってんだチビ」
「煩いな!貴様ら一体いつの間に伸びたんだよ⁈同世代なのにこの差は何だ⁈ジュノも貴様も六尺近いし!イノスに至っては超えてるだろ六尺!」
「ちびっこのクセによく見えてんな。あいつ六尺超えてんのか」
「チビ言うな!」
「落ち着けチビ。まだアークいんだろ。あとモヤシもいる」
「奴は忍びだ、小柄な方が良いに決まっている!もやしに足りないのは縦寸ではなく存在感だ!」
「そのちっせぇアークとトントンだけどな。地味野郎とは勝負になってねぇ」
「喧しいぞ!俺はこれから伸びるからな!」
「いい加減諦めろよてめぇ幾つだよ」
「十八ならばまだ望みはある」
「コジンサってのがあんだろ。チビ助にゃぜってームリだな。来世に期待〜」
「黙れ脳筋単細胞!阿呆のくせに無駄に場所取るな邪魔だ!(※身長の話)」
「はあ⁈どっちが単細胞なんだよ⁈(※サイズ感の話)視界にも入れねぇチビに言われたくねぇ!協調性ゼロのクソ野郎!」
「貴様の阿呆の方が深刻だ馬鹿野郎!貴様のせいでどれだけ説明に難儀すると思っている!『個人差』がカタカナ表記の時点で程度が知れるわ!作戦会議中に『奇襲』の意味を半刻も説明させられるとは予想だにしなかった!」
「・・・・・・副頭領は兎も角ルテシアはまァまァまともだったろォ。背ェ高かったしなァ」
「それ関係ないでしょ。低いのはルイだけじゃん。というか、別にそこまで小さくもないし」
「イジるには微妙な背丈だよな」
「ねえ、さっきから全然進まないわ。そろそろ路線に戻しましょう」
「喧嘩の尺、長くない?」
「このタイミングで新入りが編集に目覚めた」
「ツッコミがメタいわジュノ。でも復活して良かった。あとはあの二人をなんとかしなくちゃ───」
「・・・どうやって?」
「大体何で人間の組織に小人が参加してんだよ!」
「貴様はチビしか言えんのか!引き出しの無さに驚かされるぞ!」
激昂した二人、と言うかルイは今や掴みかからんばかりの勢いである。
そして、売られた喧嘩は必ず買うのがシュヤと言う生命体なのだ。
「身長の話で殴り合いって。そんな事ある?」
「ソレがあるンだよなァ」
「現に今、目の前でな・・・」
心底、頭痛そうにするジュノ。
その隣に禍禍しい気が渦巻いているのも原因かも知れない。
ジュノの隣で、にこにこと微笑むビオラ。
しかしその背後には豪炎が火災旋風を巻き起こしている。
──爆発、三秒前。
ではその三秒で何が出来るかと言えば──
「いい加減になさいッ‼︎」
光速で飛来する鋼鉄の玉杓子。
一撃必殺のそれが、しゃがんで頭を庇う四人の頭上を通過し、喧嘩を続けるシュヤとルイに連続ヒット。
真っ青になって静止する二人。
追い討ちに放たれるトドメの一言。
「全員、ご飯抜きッ!!!」
──残された三秒でマイ達に出来ることと言えば、両耳を塞いで縮こまることだけだった。
まるで、その台詞さえ聞かなければ自分達は飯抜きを喰らわないとでも言うかのように。
***
沈黙は数分間続いた。
嵐の通り過ぎた後、その場の惨状に呆けるのと同じだ。
皆が無事に揃っているとはいえ、
──片付けどうしよう・・・
と言うあれである。
嵐を巻き起こし特大の雷を落としたビオラはビオラで、全てのエネルギーを使い果たし放心状態。
結果、誰も喋らない。
「──なぁ」
最初に沈黙を破ったのはシュヤだった。
万事において一切空気を読まない彼は、こう言う雰囲気も見事にぶっ壊してくれる。
「さっきから一人足りてねぇよな?」
・・・そして、爆弾も投下してくれる。
皆がてんでバラバラに人数を数え始め、本当だーとか何とか同調し始めたが、本当は足りているのである。
暗殺者としての訓練を幾星霜と積み重ね、光学迷彩並みの超高性能ステルス機能を常時発動出来る様になってしまったために誰にも数えられず(アリスとイノスは気づいていたが、彼らはそれぞれ自分やマイを数えるのを忘れていた)、
発言のタイミングを逃したせいで気づいて貰えないが、ちゃんと居るのである。
頭領は。
「マジでいねぇな。探して来る」
フットワークが枯れ葉のように軽いシュヤを筆頭に、皆が役割を分担して出て行く。
だが彼らの認識は一致していない。
具体的に誰が居ないのか。
探せど探せど、初めから居ないものは見つかるはずがないのである。
***
リネラ総出で捜索することしばし。
近辺をあらかた探し尽くし、ようやく彼らは気づき始めた。
──あれ、居ないのってヴァキアじゃなかったっけ?でもヴァキアさっき居たよね?
・・・と。
──じゃあ居なかったのは誰なの?
・・・と。
そうして皆が戻って来る中、明後日の方向へ疾駆する女が一人。
──アリスである。
当然だ。彼女は自分を数に入れていないのだから。そこに気づかない限り人探しは終わらない。
更に彼女は重度の方向音痴。
他の構成員が気づいて捜索したところで、どっちに行ったかなんて分かったものじゃない。
もっと言えば彼女自身、そんなの全く分かっていない。
こうなると、残された構成員達にとっては、野良猫だらけの知らない土地で飼い猫探しを強いられているようなものである。
今度こそ彼らは捜索を始めた。
アリス以外の全員が揃っている事を確認して。
目の良いアークを連絡役とし、町中に散った仲間の合図に目を光らせつつ、捜索に当たる。
リネラは秘密裏に警察のような仕事もこなす。
単独でも行方不明者の捜索、発見を幾度となくこなして来た彼らだ。
その上、探知探索を得意とするイノスやアークもいる。四半刻も掛からないはずである。
だが。ここで問題が起きた。
高所で待機するアークに合図を送り、別の仲間と連携を取る作戦だった。
何故なら、全員で本気出さないとアリスの方向音痴ぶりには到底勝てないから。
しかし、その肝心のアークが消えたのである。
──何かあったの?敵襲?だとしたら、想定される敵は『五本槍』か、『五柱』の別の勢力か・・・
とまあ、こう考えるのが普通だ。
とても普通なマイは、往来に怪しまれないよう注意しつつも戦闘態勢を取る。
だがルイは分かっていた。
この状況で、アークが大人しくしているはずがない事を。
「あんの馬鹿野郎逃げやがったな」
シュヤも分かっていたようだ。
かくして、居もしないミイラを取りに行った輩が立て続けにミイラになる事態が発生。
「ったくどこ行ったあいつ!」
吐き捨てると、身軽な動きでひょいと屋根に上がり周囲を見渡す。
「おいコラ!待てアーク!」
不満顔で連行されるアークをルイが引き取る。
そこで終わっていれば良かったのだが。
「馬鹿と煙は高い所に登りたがる」
「はあ⁈じゃなきゃ見つからねぇだろうが‼︎」
再び喧嘩勃発。
ここまで来ればもはや、この二人を組ませた奴が悪いと言える。
マイの言に従い、全く進歩の無い喧嘩は割愛しよう。
一方その頃、事の発端であるアリスはと言えば、大喧嘩しながら捜索を続ける彼等とは逆方向に爆走していた。
特に明確な目的地も探す人物もなく(元々居ないから当たり前だが)、ただただ走り続けているのである。
端的に言えばアホなのだ。
類まれなる整った容姿や、戦闘時における格好良い系のキャラを見事に叩き壊す残念っぷりなのだ。
十七年もの間親友をやっているジュノには脱帽するしかない。
やはり今回も、誰にも居場所が分からなくなった彼女を見つけたのはジュノである。
彼によれば、どこぞの方向音痴は、ひたすら直進するのだそうだ。
或いは細い道があればそちらへ進む。
故に、阿弥陀籤を辿るように歩けば誰かさんの場所まで行き着くらしい。
「おーい、アリス見つけたぞー・・・ってお前らまたかよ」
「良い加減にしやがれチビ野郎!」
「黙れ弩阿呆!俺の身長など貴様には関係無い!」
「うっせぇいつまでキレてんだチビ!小っせぇのは縦寸だけにしやがれ!」
「貴様こそ人の事言えんだろう!器が小さいのは俺よりも貴様だ!」
「・・・さっきから何やってるんだよお前ら」
助け舟を求めて周囲を見渡す。
が、頼みの綱のビオラは頭を抱え、イノスに至っては我関せずを決め込み茶を啜っている。
折角捕まえたアークもまた逃げた。
ヴァキアは端の方でひたすらニコニコしている。
なかなかに冷たい組織である。
「──ってことは俺?俺が止めるのか?これを?」
「アリス居たんだ!良かった」
「結局誰が居なかったのか分かんない仕舞いじゃん。ちゃんと揃ってる?」
「揃ってるよ。居なかったのアリスだもん」
女二人が唐突に始めた会話は拒否の意思表示だろう。
手伝いたく無いのは分かる。そして心底共感する。
──頼む誰か俺にも拒否権をくれ。
気が遠くなるせいで、もう弓とか短剣とか出しちゃってる二人がなんかぼんやりして見える。
──いや、これって色々拙いだろ。
・・・リネラには、真剣を見ると凶暴化する猛獣が居る。
「・・・良いじゃん」
にやりと笑うグレイブ使い。
払われる鞘。
ノる短剣使い。
・・・いっぱい居る。
猛獣達の輪の中心に、無言で突き出される十文字槍。
既に鞘は払ってある。
常軌を逸した口下手で発言のタイミングを逃しまくる男は、要するに、俺も混ぜろと言いたいのである。
しかもその槍、毒入りじゃなかったか?
ちゃんと抜いてるのか?
大丈夫なのか⁈
──冥土の果てが見える事態。多分俺もう星になる。
「頭領ー、あたしと手合わせして下さい!」
放心の脳内に入り込む元気な声。
二つ返事で応じる頭領。
何でこいつらは全員剣を抜くのか。アホなのか。
ゴンッ。
無気力に振り返ると、槍を片手に気まずそうな顔のヴァキアと目が合った。
足元には、鞭を握り締めたまま気絶したマイ。
これを手合わせと呼べるのか。
大体、ヴァキアと勝負になると思ったのか。
アホなのか。
「マイー、起きて下さいー」
「起きろーちびすけー」
果てのないツッコミは止めて、ぶっ倒れたマイを起こそうと頬をつつくヴァキアに従う事にした。
こっちの方が平和そう。
「んん〜っ・・・」
ドカッ
バキッ
ゴスッ
ヒュンヒュンッ
ズバッ
薄目を開け、頭をはっきりさせるべくぶんぶん振るマイ。
ブンッ
ヒュガガガッ
ドゴォッ
ヒュヒュンッ
ズバババババッ
ガッシャアアァァァ
──て言うか背景めっちゃ物騒。
「うぅ、一瞬でやられた・・・。道のりは長い」
「頑張って下さい。ジュノに一、二発入れられれば立派に一人前ですよ」
「何で基準が俺なんだ」
「僕では基準が高過ぎるかと」
「殴るぞ」
「まあまあ。僕は戦闘員ではありませんから。小手先の小技は反則でしょうし、下手に暗殺屋など相手にして変な癖がつくと困ります」
殺意を増長されている気もするのだが、正論と言えば正論である。
ツッコミどころは結構あるが。
「戦闘員ならシュヤもじゃないの?」
「ええ。ですがよくフライングするので。試験には向きません」
「それって(人として)どうなの?」
「悪気は無いのですよ。単に規則を理解していない(アホな)だけですから」
──言外に失礼な事言うな、お前ら。今にもシュヤの鉄拳が飛んで──
ブンッ
「危なかった・・・ほら言わんこっちゃない、ってそうじゃなくて!何で俺に来るんだよ!」
ドガガガガガガッ
ブンッヒュンッ
「おらぁァっ!」
ズバッ
「人の話を聞けぇ!」
──効果音が手合わせじゃないだろ、それ!
良い加減に止めないと死人が出る。だが相手は主戦力三人に狙撃手一人。
乱入した瞬間に集中豪雨のような猛攻撃を喰らって終わる。
ではこちらの数を増やせばどうだろうか。
マイは当てにならない。
ビオラは諦めて建物に引っ込んだ。
頭領を出したら更地になりかねない(多分)。
──孤立無援。嗚呼、詰んだ。
頭を抱えていた時だ。
屋根からぴょーんっと飛び降りる人影。
着地点は四人の真ん中。
わざわざそこを選ぶ理由は二つ。
よほど強いのか、よほどアホなのか。
「ただい・・・ッウワァァァァ」
──アークが巻き込まれ事故!(色々と)可哀想‼︎
──いやそれより。
「お前どこ行ってたんだよ」
「ンァ?緑翔草探してたンだよ。どーせこンなンなッてると思ッてな」
緑翔草は、傷の治りを格段に早める薬草だ。
つけるのとつけないのとでは、回復速度が三倍も五倍も違うと言われている。
「探してたって・・・、簡単に入るものじゃないわ。樹齢二百年を超える木の洞にたまに寄生してるくらいの代物よ?」
「知り合いの薬問屋に交渉してな。やァッと一株買ッたンだよ」
自由奔放な年長者が初めて立派に見えた瞬間だった。
前言撤回。これからはアーク様と呼ぼう(翌日には撤回)。
アークはちゃんと読み書きできます。
悪ノリしただけです。
・・・多分。




