プロローグI
はるか、はるか昔。まだ地上が一面の荒地であったころ。
地上には、十一の神々だけが暮らしていた。
あるとき、彼らの間にこんな提案が持ち上がった。
この広い世界に、我々だけではつまらない。
我々の力で、ここを賑やかな楽園にしようではないか。
神々はこの提案に賛成した。
どちらを向いても同じ風景なんて、飽き飽きしていたのだ。
退屈しのぎくらいにはなるかもしれないし、皆で何かを創るというのも、楽しそうだ。
そう言って何やらわいわいと相談を始めた。
ただ一柱、死の神を除いて。
死の神はこれに反対した。
たかが退屈しのぎごときに神の力を使うなど、言語道断だ。
楽しいだけの楽園など存在しない。
そんなのは時間の無駄だ・・・
そうして呪いの言葉を吐き、十の神々によってうまれた全てのモノに終焉を与えた。
水の神が創った潤いには、渇きを。
土の神の恵みには、枯渇を。
火の神の炎には、灰を。
光の神の光には、闇を。
誠の神の忠誠には、裏切りを。
愛の神の愛情には、憎しみを。
戦いの神の勇気には、恐怖を。
平和の神の静寂には、混沌を。
智の神の理には、破滅を。
そして、生の神の創った命には、死を──
心血を注いだ発明品を悉く破壊され、神々は激怒した。
そして、団結して彼女に戦いを挑んだ。
しかし、死の神はあまりに強大だった。
十の神々は苦戦を強いられ、仇のもつ神の力を二つに裂いて、二度と地上に姿を現せぬよう地下に封じ込めたものの、終焉の呪いを受けてしまった。
彼らは最期に、人間を創った。
自らの分身たる人間と、その子孫たちにこの世を任せ、秩序を保とうと考えたのだ。
その目論見は成功した。人間は神々がこの世にもたらしたモノを守り受け継ぎ、この世を神々が目指した楽園に変えていった。
こうして、神々は世を去った。
引き裂かれ封じられ、憎しみに侵された殺戮と混沌の二神を残して──