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服の買い方

作者: 星野紗奈

どうも、星野紗奈です。

今回は、「再会」というテーマで書いたエッセーを落としていきたいと思います。

とっても短いので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです(笑)


それでは、どうぞ↓

 その日は、一人で駅の服屋にいた。私にとって自分で服を買うというのは、非常に難しいことだった。親や友人からは「女の子なのに」「おしゃれすればいいのに」とよく言われるが、私が服を買っていないのは、別に私にかわいいという概念がないからではない。そういうものが自分の身につくことで、そのかわいさが失われるのがひどく怖くて、とてもじゃないがそんなひどいことはできない、と思ってしまうのだ。加えて、私はいくつかの経験を通して、男性から女性として見られることを恐れていた。ここではその内容については割愛させてもらうが、男性が恐怖の対象となったのは些細な出来事の積み重ねによるものだったとだけ言及しておく。いつもそういう考えばかり頭の中を巡っているから、私は自分で服が買えないのだ。何時間も店内をうろつくばかりで、今日もあきらめてもう帰ろうかと思っていた、その時だった。

 ふと、ブラウンのショートブーツが、私のうつむいた目に入った。なんというか、顔は見ていないのだけれど、その人の雰囲気によく合っていると思った。少し目線を上げると、今度はニットの赤いワンピースが映る。これがまた良かった。それなりに派手な色のはずなのに下品さがなくて、その女性が着ているとむしろ落ち着いた印象を醸し出していた。私はそれを見て、思わず彼女に惚れたと思った。こんな女性が彼女だったらよかったのに、とすら考えた。

 しかし、次の瞬間、流れるように目線を上げてしまったことでその女性と目が合い、私はひゅっと息を詰まらせることになった。なんと彼女は、昨年まで同じ学校で過ごしていた同級生だったのだ。しかも、すぐ隣には見覚えのある元同級生の男性もいた。どうやらデート中らしいと察し、わたしは余計に憂鬱な気分になった。

「ああ、久しぶり」

「え、あ、うん、久しぶり」

「元気だった?」

「うん、元気」

「今日はどうしたの? 服見てた?」

「えと、うん、まあ、ぐるぐる回ってた。一人で。ハハ」

 だいたいこんな会話を交わしたような気がする。正直に言えば、気まずさと緊張とで、何を言ったかほとんど覚えていない。ただ、ぎこちない対応をしてしまったことだけは確かだろうから、それについては申し訳ないと思っている。まあ、そのおかげで彼女と早く別れることができたのかもしれないけれど。

 その時私が何を考えていたかというと、正直、友人の彼女に対して恋愛感情に近いものを抱いてしまったことがとにかく申し訳なかった。それと同時に、自分の性に関する感覚は周りとずれているかもしれないとはうすうす気づいていたが、まさか漫画みたいに一目ぼれするなんて、こんなこともあるのだなと一人感嘆していた。しかし、時間がたつにつれて、それは次第に別の感情に変わっていった。元同級生に目を奪われるなんて、恥ずかしいと思った。そんな彼女に会ったとき、安っぽいパーカーとジーンズという服装でそれに不釣り合いな綺麗めのリュックを背負っていた自分を、ひどくみじめだと思った。こんなんじゃ彼女の隣には立っていられないと、悔しいと思った。変わりたい、変わらなければと、そう強く思ったのだ。

 その日私は、五千円相当の服を買って、家に向かって歩いて行ったのだった。今でも服を買ったり、おしゃれな着こなしをするのはまだ慣れないけれど、二度とあんな後悔はしたくないという思いが、今の私に勇気をくれている。

ありがとうございました(*'ω'*)

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