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地獄へ堕ちろ


「この糞が、糞が、クソがァァ!!」


 神父の黒い革靴が、幾度も踏み付けた死骸の血液に染まっている。


「神父様……もう、そろそろ」

「この大クズがあ!! テメェの世界で生きられねぇからとノコノコ入って来やがって、蛆虫。こぉの蛆虫がぁあらぁ!」


 ようやくと気の済んだ様子の神父は、逆立った髪を撫で付けてから足を下ろしていった。

 そしてそこにある、もう原型もないただの肉塊を眺めて、忌々しそうにツバを吐き付ける。


 そして煤だらけになったスータンを叩き、深い鼻息を落とした。


 神父の狂行を黙して見守っていた民達は、安堵した息を漏らしていく。


「おい、煙草を寄越せ、誰か煙草を持ってねぇのか!」


 酷く乱暴な物言いで神父が言うと、一人の男が前に出て煙草を一本とマッチを差し出した。


「これで災いの元は消えた……俺達は今まで通りに暮せば良いんですよね、神父様」


 神父は男の差し出した掌を荒々しく払い退けると、彼の胸元を探って煙草とマッチを箱毎頂戴する。

 そしてその内の一本を咥えて火を灯した。

 神父が深く息を吸い込むのに合わせて、チリチリとオレンジ色の光が根本にまで迫っていく。


 そして夕暮れの空に紫煙が昇る。


「え……神父様、何を?」


 神父は血に濡れた巨大な銀の十字架を逆さまにすると、地に突き立てた。そして銀製のロープを取り出す。


「……この罪人の墓標に」


 逆十字になった墓標に、神父は肉塊を括り付ける。

 そして早くも吸い終わった煙草を、その十字架に押し付けた。


「聖職者様が、神聖なる十字架にそんな……」


 誰かがそう声を漏らした。

 神父は新たな煙草に火を灯しながら、眉を吊り上げる。


「知らねぇよ」


 そして逆さまになった肉塊を見下ろしながら、ニヒルな笑みと共に、ぶっきらぼうに言い残す。




Amen(エイィメン)































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↑の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると意欲が湧きます。 続々とスピンオフ、続編展開中。 シリーズ化していますのでチェック宜しくお願い致します。 ブクマ、評価、レビュー、感想等お気軽に
― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろかったです! 容赦ないですな! [一言] できれば殺された側にももう少し明確な過ちがあってもよかったかなぁーと。 その世界に入り込んだことがすでに大罪ってのはどうしようもないですよ…
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