山田拓郎
*
俺は一瞬だけ、何かの反動で目を覚ました。
仰向けになった体は重くて、冷たくて、うんともすんとも動かない。
ただ頭上に見えるのは、俺を見下ろして蹴り回していく、村人達の見知った顔だけ。
俺は山田拓郎に戻っていた。
百貫デブのニキビ面。ズレた眼鏡は踏みつけられて割れている。
嫌なことを思い出すなぁ……。
なんか学生の頃にもこうやって……ボコボコに虐められて……
でもなんでか今はアニメのキャラクターみたいな人達に蹴り回されてる。
ははっ……最後の最後にこんな夢を見るなんて……俺も大概オタクをこじらせてるみたいだなぁ。
あっ、エリーちゃん。
お、パンツ見えたほひョww
「死ね!」
一際強く顔面を踏み潰されて、俺の視界はブラックアウトする。
あぁ夢だ。全部悪夢だったんだ。
ひどい悪夢。アニメの世界で見たオタクの悪夢だ。
まぁ、少しは良い事もあったけど。
エリーちゃんのパンツ……ピンクだったぁ…………
「お願いだから、お母さんを置いていかないで!」
「拓郎! 拓郎! お父さんの声がきこえるか!! 拓郎!!」
――ピーという電子音が……
最期に…………
耳に残っ………………――――――