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「なんなんだよ……全部上手くいってたのに……なんで、なんで……ナンデ、なんでなんで、ナンデナンデナンデナンデッッ!!!!」


「神の名を語る不届き者めがぁ!! この鉄槌でぇ……キィサマのドタマをかち割ってくれるぅ!!」


 真っ黒い影にギラギラとした目だけを光らせて、神父は俺に近付いて来る。


「待ってよみんな、一体なんなんだよ!!」

「……」

「エリーちゃん教えてよ!」

「消えろ!! このサタンめ!!」

「え……っ」


 なにが起こってるの? ……天使みたいだったエリーちゃんが……まるでドブネズミを見るみたいな目で俺を見て……


 なんか昔も良く、みんなからこんな目で――


 ――――待てよ!!



 俺が何したって言うんだ?

 おい、おいおいおい、話しが違うぞ、訳が分からない!


 ただ言える事は、今ここに俺の味方をする者はいないという事だ。

 突然にこいつら全員! 掌返しやがったんだ!


 俺は今、山田拓郎だったあの時に戻ったみたいな錯覚を覚える。


 村人達が俺を恐ろしく睨む。


「……消えろよ!」

「消えろ!」

「ひっ」


 ちょっと待て!

 俺は君達の危機を何度も救ったよねぇ! 今だって世界の危機を!! なのになんで!

 なんでなんでなんで!? 話しがちがう、違うぞ!


 俺は異世界で、なんの努力もせずに最強で、女の子に囲まれて、世界の平和とか守ってみんなに尊敬されて……え、それで……!


 神父の激しい声が俺を責める。


「貴様の楽園はここじゃあねぇ!!」


 口元から煙を上げて親指を地に向ける神父。青ざめた俺は頭上を見上げていった。


「ご主人!」

「ミィ子!」


 良かった、ミィ子だけは俺の味方の様だ!

 俺はとにかくここから逃げ出したい一心だったが、その前にある思いが浮かび上がる。


 ――こいつら恩を仇で返しやがって……さっきまで俺にへつらってた癖に! ムカつく! 俺は地上最強の存在なんだぞ! その気になれば魔王に成り代わって世界を支配する事だって出来るんだ!


 俺は変わったんだ、あの時みたいな山田拓郎のままじゃない。今の俺は何だって持ってるんだ!


 下手に出てればこいつら……!

 お前らのせいだからな……お前らの

 俺に逆らった……俺にとって都合の悪い態度をとったお前らが!

 俺を侮辱しやがって!! 山田拓郎だった、あの時の様な目で俺を見やがって!!


「ミィ子!! デスヒートだ!」

「え、でもご主人……」

「いいからやるんだよぉ! こいつらが悪いんだ! こいつらが全部! 俺はお前らに良くしてやってたのに! こんな奴等! 死んで当然なんだ!!」

「やれぇ!!」

「うん……」


 俺の言いつけ通りにミィ子は再び口に炎の塊を溜めていく。

 怯えた村人が声を上げて逃げていく。


「無駄だ……逃げ場なんて、どこにも無いんだ!! バーカがぁあww乙ぅぅう!!!」


 そしてミィ子の準備が完了すると同時に、俺はこう叫んだ。


「デスヒートォオオオ!!」



 ――ズォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


 ミィ子の口に炎が溜まっていく。


 直ぐにカス共を焼き払ってやる!

 俺は悪くない!!

 こんなにしてやったのに簡単に寝返ったお前らが悪いんだ!

 異世界から来たから何だってんだ! 俺がお前らを助けてやったのも忘れたのかよ!


 ――俺をあの時みたいな目で見やがって!!


 お前らが悪いんだ! お前らが全部!!

 俺を認めず迫害しようとする、お前らが!!

 俺は悪くない!!!


「死ねぇゴミが!!」


 今まさにゴミを焼却しようとする直前に、神父がボソリとつぶやいた。


「俺の頭上をちょろちょろ飛びやがって……」


 ミィ子がブレスを吐く前に、神父はその巨大な十字架を前被りに地に振り下ろし、その衝撃で空高くまで飛んでいた。


「グォオオオオオ!!」

「うるせぇんだよ! この醜い鳥ガァアッ!!」


 もの凄い衝撃が空で起こり、雲をかき分けた。

 そして次の瞬間に、脳天をその十字架(鉄槌)で撃ち抜かれたミィ子が、幼女の姿に戻って墜落して来た。


「は……え、ぁ、み、ミィ子!?」

「ギィ…………ィ……ィ」


 こ、この野郎……使えねぇ!!


 使えねぇ使えねぇ使えねぇ使えねぇ使えねぇ!! クソが!!


 か弱い声で鳴くミィ子に俺は叫びつけた。


「何やってんだお前!! 使えないんだよ!!」

「ミィ………………ィ……」

「馬鹿野郎が!! このッ雑魚ッ雑魚がぁ!!」

「……ミ…………ィ」


 まだ息のあるミィ子に、神父は近寄っていく。

 そしてしゃがみ込んでその頭を引き起こした。


「君は異世界から来た訳じゃ無い……うん、悪かったね。殺す事はしないから……うん。慈悲を君に。神はきっと君を赦してくれるよ」


 細い瞳で笑い、優しい声で話す神父は、胸の前で十字を切り、ソっと支える様にしてミィ子の頭を下ろしていく。


「だが…………」


 そして神父は、真っ赤な瞳で俺に振り返った。


「キィィサマは赦さねぇぞ!! こぉおのゲスがぁあ!!!」

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↑の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると意欲が湧きます。 続々とスピンオフ、続編展開中。 シリーズ化していますのでチェック宜しくお願い致します。 ブクマ、評価、レビュー、感想等お気軽に
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