第四話 トラテープを見ると、激熱って言いがち
勇者ライトがジンを殺す事に手を貸した女神と外線通話をするジン。
「女神、か。どういう風の吹き回しだ? 言っておくがお前も俺の復讐対象だぞ」
ジンの憎悪は外線越しの女神にも感じ取れた。
「あの時はああするしか――」
「黙れ、お前から得られる情報など信用できん」
「魔人王ジン・シュタイン・ベルフ様! お願いです、話を聞いてください!」
魔人王の言葉にジンは反応する。
人間界で呼ばれている名をなぜ女神が知っているのか、自分を呼ぶのに様と敬称をつけるのはなぜなのか。
謎は解かないと気が済まないジンは、女神に話の先を促す。
「話してみろ。信じるか信じないかは分からないがな」
「良かった……。単刀直入に言います。神界にあるもう一本の聖剣をあなたに託します。そして聖剣を扱えるようにあなたに勇者の神託を授けます」
「つまり?」
「本物の勇者となってこの世界を救うのです!」
「断る!」
ジンは女神の提案をバッサリと切ると、女神の声は大きくなる。
「なぜなのですか! もう闇に落ちたライトを倒せるのは、人間界、魔界、神界、三界であなたしかいないのです!」
「俺には関係ない。そんなこと言ってきても今さらもう遅い」
「そんな……」
外線の向こうで女神は泣いているが、ジンは冷酷に女神を否定する。
「言ったはずだ。お前も復讐対象だとな」
「復讐……。それは私の命を奪う、そういう事ですか?」
「そうだ。俺から全てを奪ったやつは死ぬか、生きながら死ぬかの二択だ」
「それなら都合がいいはずです。聖剣を託すと言いましたが、聖剣ではライトは倒せません。聖剣に私の魂を注ぐことで神聖剣となるのです」
「俺にそこまでする理由は?」
女神は外線の向こうで大きくため息をつく。
「本来なら勇者であるライトを導くのは、女神である私の使命です。しかし私はライトを導くどころか利用されつづけて、最後にはライトに捨てられてしまいました。このまま放っておくとこの世界ではなく、異世界にまでライトの狂気が蔓延するでしょう。私はそれを阻止したいのです!」
「自分の魂をなげうってでもか?」
「はい。その通りです」
クククと笑うジン。
「面白い、お前の魂とやらを込めた玩具をよこせ。お前の魂がこもった玩具を振り回すというのは悪くはない提案だ、高校野球児のバットより使い潰してやる。勇者になってしまうのは癪だがな」
「世界の時止めも命を消費して発動していますが、もう限界です。すぐに魂を聖剣に宿してそちらに転送します」
「ああ、早くしろ」
「……」
時間がないと言っている女神が急に口を閉ざす。
「どうした? 時間がないんじゃないのか?」
ジンの言葉にハッと我に返る女神。
「私は初めから選択を間違えていたのですね。あなたを待って勇者にしていれば良かった。あなたを倒すのではなく友好関係を築いておけば良かった。今さら言っても遅いですけどね」
「ああ、その通りだ。今さら言っても、もう遅い」
「ふふふ。真の勇者にふさわしい名前を、神聖剣、天地開闢の剣」
女神が笑いながら剣の名前を名付けると、ジンの目の前に光り輝く神聖剣が現れ、止まっていた世界の時が動き出す。
「天地開闢の剣、通っていたパチンコ屋の名前に似ているな。まぁあっちはビッグバンブレイズだが、設定はろくに入っていなかったな」
ジンは昔を思いだしながら目の前の神聖剣に手を伸ばすと、ライトが神聖剣を目にして素っ頓狂な声をだす。
「えええー! それ神聖剣じゃん! それにその銀眼の奥の瞳孔の色、勇者の証の紅蓮色だよね? なんで? え、なんでなんで?」
ライトは目の前の光景を疑う事しかできない。
魔王であるはずのジンの瞳孔の色が紅蓮色に変わって、神聖剣を手にしている。
神聖剣を携えたジンの姿は『勇者』そのものだった。
「そういえば剣の才がない体だったから、剣を振るうのは初めてだな。まぁ、能力をいじれる俺にはもう才なんて必要ないけどな。ヨシ! 神聖剣の力の確認といこうか」
ジンは鞘から神聖剣を抜き、軽く地面を切ると次元が切り裂かれる。
切り裂かれてできた次元の穴が元に戻ると、なにもない地面だった場所に草や花、ウサギや虫が出現していた。
「この化け物が! 神聖剣を手にしたところで俺には勝てない! 御方のお気に入りの俺は死ぬことはないのさ!」
「まだこの神聖剣の力を全て知っているわけではないが、恐らく死ぬとかそういう話では済まないと思うぞ」
「うるさい化け物! 俺は認めない、認めないぞ! 勇者は俺、この俺なんだ! 神聖剣を手にしたとしても剣帝の力も使える俺の方が有利だ!」
「もういい。ライト、全てを終わらせよう」
激高したライトがジンに切りかかる。
「死ねぇぇぇ! 化け物ぉぉぉ!」
剣帝の力でライトの剣技は全て特異能力になっているが、
「遅い!」
神速のライトの剣を、ジンは片手で受け止める。
「くそがぁぁ!」
ライトは後ろへ飛んで距離を取る。
「俺が英雄で、俺が勇者で、俺が神なんだよぉぉぉ! 超級特異能力! 世界の終焉!」
全てを食らいつくす深淵の闇の斬撃がジンに放たれる。
「お前を倒して復讐は終わりだ。 超級特異能力! 擬似連続予告!」
ライトの闇の斬撃に対してジンは虹色に光る斬撃を放つと、虹色の斬撃が闇の斬撃を丸ごと飲み込み、ライトは虹色の光に包まれた。




