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第八話 インフルエンザでも、構わず強制出勤

 

 危険予知で奇襲の存在に気づいていたジンは、絶対無敵シールドでライトの剣を防いだ。


「仲間ごとか、相変わらず腐っているな」


 ジンは不快感をあらわにしながらライトに話しかける。


「化け物を倒すためのただの小さな犠牲さ。なんて言ったって、大を救うために、小を犠牲にするのは女神さまのお墨付きだしねぇ」


 腹に穴を空けた鬼は血を吹き出しながら倒れ、人間状態のアルト・ウォルターに戻った。


「あは、あはは、あはははははは!」


 元の姿に戻ったアルトは、血が噴き出して倒れているのにも関わらず、狂った様に笑っている。


「あーあ、壊れちゃったよ。あの魔剤は未完成品だから仕方がないよね。『超越者』になれるだなんて、普通信じるかなぁ? やっぱり脳筋は脳筋なのさ。アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 アルトの壊れた笑い声と、ライトの狂った笑い声が辺りに響き渡る。


「なぁ脳筋」


 倒れて笑っているアルトの顔を、真顔になったライトは蟻を踏みつぶす様にグリグリと踏みにじる。


「なぁんの役にも立たずに、ただ化け物になって、ただ化け物の為に死んで。それでも元勇者パーティーか! おい! 聞いてんのか役立たず! お前がそんな不甲斐ないと知れたら、勇者である俺の名前に傷がつくだろうが!」


 何度も顔を踏みつけられるが、アルトはただ笑っている。


「お前から手紙が届いた時は、もしかしたら魔王が復活してるかもって焦ったけど、あの時にこのビジョンが思い浮かんだんだぁ。まぁお前がカスだから聖剣での攻撃は失敗に終わったけどね」


 ライトは目線をジンに移す。


「化け物、どうせ他のやつはもう殺したんだろ? このゴミから手紙を受け取った時に、他のやつに連絡したけど一切返事がないんだ」

「さぁな、生きているか死んでいるかは知らん」


 ジンの返答にライトの顔が狂気に歪む。


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! もしかして、もしかして殺してないの? どうしたのさ化け物! まだ友達だとか思って情けをかけたとでも言うのかい? 化け物のくせに、化け物のくせにさぁ!」

「ライト、どうしてこうなった? 本当に初めから俺を殺す気だったのか?」


 今までずっとジンは疑問に思っていたが、何でも知っている作業基準書には聞いていなかった。

 全てはライトの口から聞きたいと思っていたのだ。


「初めから? なにを言ってるのかな? 勇者は魔王を倒す、赤子から老まで知っている当たり前の事じゃないか」

「それは知っているが」


 ジンの言葉にライトの顔から狂気が姿を隠し、代わりに迸る殺気と共にライトの怒りが爆発する。


「お前の、お前のせいだろうが! そうさ、勇者は魔王を倒すんだよ! でも、お前の様な化け物を誰が相手にできるって言うんだ!」

「倒す必要があったのか? 和平を申し入れた時点で、魔界は人間界を襲わないんだぞ?」

「だからお前は化け物なんだよ! 俺が勇者であり続ける為には、お前の存在は邪魔なんだ! 俺は労働と家族を持つことが幸せだと思っている矮小な人間たちとは違う! 俺は、特別な勇者、光の勇者、ライト・エル・ブリアントなんだよ!」


 光り輝く聖剣をライトはジンへと向ける。


「ここでお前を倒し、俺は勇者をも超える存在となるんだ。そうさ、お前ほどの化け物を倒した俺は神界へと導かれ、人間界では神話の勇者として未来永劫語り継がれるのさ」


 聖剣を構えるライトが禍々しいオーラを纏う。


「おいおい、光の勇者様がそんな禍々しいオーラを放ってていいのか? 出世するために友達も仲間も切る様なやつがいかにも放ちそうな黒いオーラだ。ライト、本当はお前も友達なんていた事がないんじゃないのか?」


 ジンの言葉に怒髪天を抜いたライトは上級特異能力ハイスキルの構えを取る。


「俺以外の人間は、ただ俺を崇拝して崇めていればいいんだよ! 上級特異能力ハイスキル! 氾濫する(メイル)光の(シュト)渦潮(ローム)!」


 聖剣から放たれる光の奔流がジンに襲い掛かる


「もう言葉はいらない、か。2S! 安全(Safe)エリア(area)


 絶対無敵シールドでライトの上級特異能力スキルを防ぐ。


「やっぱりその特異能力スキルはうざいな。こんな事なら他の聖帝七騎士も連れてきたら良かったかな? 女神様の信仰も今じゃ薄れて加護も弱まっているし、ここはあの力を使ってみるしかないかな」


 ライトの体をさらにどす黒い邪悪なオーラが包み、辺り一帯がその邪気に包まれる。


超級特異能力エキスパートスキル黒い会社(Ruler)(of)支配者(black)


  特異能力スキルを発動したライトは、人の闇を凝縮した様な、周りの光を食らい尽くすブラックホールの様な黒い光に包まれる。


「こ、このプレッシャーは……」


 ジンはこのプレッシャーをどこかで感じた事があった。

 それはアキオの時、前の世界の工場でインフルエンザが流行して、当日欠勤が日に二十人以上もでている中、生産計画数が未達との事で社長室に謝りに行かされた時に感じた、ブラック工場の社長が放つプレッシャーと同じものだった。




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