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第三話 生産管理部はいつでも、行き当たりばったり

 

 王国軍は開戦の合図もなく、軍を動かし始めた。

 最前列に配置された五百人一組の部隊、一列で二千五百人の部隊が六甲門向けて突撃を開始する。


「たわけ、そんな突撃が通じるものか。グレン! そのまま中央で蹴散らせ!」

「御意」


 ラミア含む大将達は通信魔法、内線を使用して情報を共有する。

 中央には共和国一万弱の兵士の中の五千を配置している。

 層の厚さでいえば大した事はないが、ジンが認める戦士長、グレン・マーク・サーベインがいるので話は違った。


「前方、私が出る」


 グレンは何も無い空間から二振りの剣を取り出した。

 一つは刀身が雪の様に白い剣、もう一つは刀身が新月の様に黒い剣だ。

 グレンは手にした剣で、地面に横線を描く。


特異能力スキル、魔剣二刀流、陰陽の型。その線よりこちらは死地と知れ」


 王国軍は気にする事なく、全速力で突撃してくる。


「愚かな……」


 迫りくる敵の集団をグレンは二刀で次々と斬りつけていく。

 白い剣で斬られた王国兵は傷口から白い光を発して消滅する。

 黒い剣で斬りつけられた王国兵は傷口から黒い瘴気が溢れ出し、体全体を瘴気が包むと影だけとなり、グレンの命令に忠実に従う影となる。


 王国兵は次々と消滅、次々と影となり、さっきまで仲間だった王国兵に襲い掛かる。


「これ、俺たち必要あったのか?」


 後方でグレンの戦いぶりを見ている、ホーク率いる遊撃隊は目の前の光景に、自分たちの必要性が感じられなくなっていた。


 あっという間に二千五百の王国兵を失いかける王国軍は、続けて次の列に突撃指令を出す。

 今回の突撃は先ほどの倍の数、五千もの兵士が中央に向けて突撃するが、共和国中央軍には全くプレッシャーを与えられないでいた。


「ホーク、遊撃隊も前に出せ。今なら私の影が千以上もいる。数ですり潰す」

「了解だ。あんたみたいに強い亜人を見るのは、生まれて二回目だぜ。遊撃隊! 前へ出るぞ! 続けぇぇぇ!」


 ホーク達が合流した戦線は勢いを増し、破竹の勢いで王国軍を屠ってゆく。

 焦る王国軍はさらに追加で五千の兵士を前に出す。


「ふんっ! こんな尚早に一万以上を動かす馬鹿がおるとは。だが好機! 両翼を伸ばせ!」


 ラミアの号令で両翼に配置された軍が、一気に前方へと押しあがり奥へ奥へと突き進む。

 両翼が伸びてくるのを確認した王国軍は、片翼三千の共和国の兵士に対して各五千の兵士をぶつけ、王国本陣へと向かってくる両翼の行進を止めた。


 王国軍の動きをみたラミアは次の指示を出す。


「後方軍残り一万以下、ナタリー嬢。妾の策の仕上げを行う栄誉を与えてやるぞ」

「――ん、転移魔法、空間転移ディメンションワープ


 ナタリーは王国軍七千強の兵士の前へ転移する。


「――僕は、五千人? やれば、いいんだよ、ね?」

「どうしたナタリー嬢? まさかできぬなどとは言わぬな?」

「――ん、問題ない。爆裂魔法『極』、爆発的星形成スターバースト


 爆弾が数千個同時に爆発した様な荒々しい爆風と、激しく鼓膜を振動させる爆音の後、王国兵がいた爆心地には、誰一人として生存していなかった。


「――あ、失敗、しちゃった。転移魔法、空間転移ディメンションワープ


 ナタリーは任務を終え、ラミアの元に戻り、頭を撫でられる。


「さすがはナタリー嬢。さっきの爆裂魔法は妾の上級特異能力ハイスキルと似ておる」

「――似てる? いい事、かな?」


 王国本陣まで敵兵の姿はもう一つもない。

 慌てた王国軍は急ぎで、両翼にぶつけた一万の兵を本陣前へ戻す。


 しかしそれこそがラミアの狙いであった。


「両翼はそのまま中央王国軍の後ろへ回り込め。会敵次第、長耳の族長は上級特異能力ハイスキルを使って敵の数を減らすのだ!」


 後ろを取られた中央の王国軍は、ミーシャの暴虐(ハイドロ)()テンペストをまともに受け、総崩れとなった。


 グレン率いる中央軍、四千とグレンの影二千、後方に回ったエポナ、ミーシャの部隊六千によって中央の王国軍は挟み撃ちされる形となり、次々に王国軍の兵士は倒れていく。


「――おかしい、なんで、狂乱の戦士、前に出ない?」


 王国軍はグレンの桁外れの戦闘力と、ラミアの策により圧倒的に劣勢であるのにも関わらず、戦略級の力を持つ戦士アルト・ウォルターが姿を表さない事に疑問を感じるナタリー。


「それだけがさっきから気にはなってい――」


 その時、西と東から同時に、角笛の大きな音が戦場へ響き渡る。


「――ん、あの旗、聖王国?」

「いかん! 総員陣形を立て直せ!」


 共和国軍が陣形を立て直す前に、西と東から大きな声が上がる。

 その声と同時に、聖王国軍は地響きを立てながら一斉に中央へと突撃していく。


「――左右、合計十万、あれに、挟まれたら、無理」

「ナタリー嬢! さっきの魔法はまだ使えるのか?」

「――無理、僕のMP、全回復、してない」


 ラミアは必死で思考を巡らせる。

 さっきの戦いでミーシャの上級特異能力ハイスキルを使ってしまったので、もう今日は上級特異能力スキルは使用できない。

 グレン、エポナは戦闘力は高いが範囲攻撃を持たず、ナタリーは聖女に捕まった時に奪われたMPが完全には戻っていない。

 ラミアの上級特異能力ハイスキルを使えば、片方の五万の聖王国軍は消し飛ばせるが、ラミアも上級特異能力ハイスキルは一度しか使えないし、ジンの命令で本陣から動く事は許されていない。


「――妾が負ける? ジン様の妻候補第一位の妾が……」


 詰んでいる状況にラミアは膝を折り、思考を停止する。

 ラミアの状況を悟ったグレンは、日ごろ絶対に出さない大きな声で指示を出す。


「姫様……。総員密集陣形! このまま門前まで引き、徹底抗戦だ! 門さえ守りきれば我らの勝ちだ!」


 門前まで引いた共和国軍は左右から各五万の聖王国軍、前方からは聖王国軍が合流した王国軍の計三万に囲まれる形となり、十三万もの敵軍に囲まれた共和国軍は徐々に門前へと押し込まれる。


「ちょっとラミア姫! 指示、指示を出して!」

「ラミア姫! このままでは……」

「姫様……」

「――ん、また、角笛? 太鼓も?」


 今度は左右の聖王国軍の後方から、角笛の音と太鼓の音が戦場に響き渡る。


「ミーシャ……あの旗って」

「ええ、エポナ。間違いないですね」

「「あれは、帝国の旗!」」


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