責任を痛感する男
あるところに重大な責務を担っている人がいました。
彼は難しい決断を毎日毎日迫られ、さらにそれが少しでも失敗すると、大して賢くもない民衆に非難されました。
彼は自分のせいで救えなかった人を想い、責任を痛感し、二度と失敗しないよう深く深く反省しました。
在任期間が長くなるにつれ失敗の数は増えていき、そのたびに彼は責任を痛感し深く反省しました。
しかし彼の心はだんだん麻痺していき、自分が責任を痛感しているのかわからなくなっていきました。
そこで彼は責任を痛感するたびに自分の爪を剥ぐようになりました。彼は文字通り痛感することで反省を実感することができました。
しかし、それにも慣れてしまい自分が責任を痛感しているのかどうか不安になってきてしまいました。
彼は責任を痛感する為に自分の1番大切な人を傷つけました。
大切な人の絶叫に大いに心を痛め、痛感することができ安心しました。
しかし、それでも実感できなくなった彼はとうとう民衆を痛めつけることにしました。
彼にとって民衆の苦しむ姿は最も見たくないものでした。
彼らの泣き叫ぶ声は彼の心を大いに痛めつけました。
それ以来、彼は失敗するたびに民衆を痛めつけ、責任を痛感し深く深く反省しました。
彼は失敗するたびに責任を痛感できる立派な統治者になりましたとさ。