もしもし警察ですか!? 全裸の勇者が聖剣を振り回しているのですが求婚してもいいですか!?
──ガシャーン!!
窓ガラスを突き破り、全裸の男が美しい聖剣を携え受け身を取った。
「ココで会ったが100年目! 邪悪なる魔道士め観念しろ!!」
全裸で聖剣を振り回し激しく興奮している男。彼こそがこの世界における勇者であった。
「キャー!!!!」
突如現れた全裸の勇者に、町の住民は驚き騒然となる。
「ククク……勇者よ。我の姿は聖剣を持つ者にしか見えぬ。故に今のお前は唯の変態にしか見えぬぞ?」
勇者の眼前に邪悪な笑みを浮かべた魔道士が1人身構えている。魔道士の魔法によりその姿は周りから見えず、聖剣を持つ勇者にしかその姿は見ることが出来ない。
「構わぬ!! 貴様を滅する事が我が使命!」
「ククク……ならばこれでどうだ!?」
魔道士が杖を振るうと、近くの民家に干してあった可愛らしいキャラクターがプリントされた白いパンツが動き出し、物干しから飛び出して勇者の頭に被せられた!!
「と、取れないぞ!!」
「キャー!!!!」
町は更に騒然となり、いくらイケメンな勇者と言えども、パンツを頭から被らされてはその評判は落ちてしまう。
「何とも残念な姿ではないか!!」
満足そうな顔で嘲笑う魔道士。彼はイケメンでモテモテの勇者に嫉妬する悲しき男であったが、魔道士としての実力は本物であった。
「フンッ!」
魔道士が更に杖を振るうと、近くの民家に干してあったセクシーなブラが飛び出し、勇者の胸に装備された。
「な、何をする!?」
「キャー!!!! 勇者様最低!!!!」
傍から見れば全裸で聖剣を振り回し、頭に可愛らしいパンツを被り、セクシーなブラを着けた変態勇者が暴れているようにしか見えない。
「ハッハッハ!! 最高に滑稽ではないか!! 俺はお前に復讐を果たすためずっと影から機会を覗っていたのだ!!」
イケメンで常に女性を侍らせている勇者にとって、女性に嫌われる事はまあまあそこそこ辛い屈辱であった。
「ぐぬぬ……! しかし貴様をココで倒せば良いことだ! 喰らえぇ!!」
──ブオン!
──ヒョイ
「おっと!」
華麗な身のこなしで聖剣を躱す魔道士。彼の体術は魔法で底上げされており、100m8秒台も朝飯前である。
「勇者様……なんとお労しいお姿! けど……周りに誰も居ない今がチャンスなのかしら!?」
そして物陰から全裸の勇者を見ていた1人の若い女性【マリア】は勇者を慕う女性の1人であり、控えめな性格故に面と向かって想いを伝える事が出来ずに居たが、周りに誰も居ない(魔道士が居るが見えていない)事を好機と思い、告白することを決意した。
──ザッ
決意現れが大きな足音となり、マリアは勇者へと歩み寄った。
「そこの君! コッチに来ては危ない!!」
「む? なんだこの小娘は!?」
マリアは勇者の警告にも拘わらず、更に勇者へと近付いた。
そして程良い距離で歩みを止めた。勇者とマリア、その間には魔道士が居る。
「貴方の事がずっと好きでした!!!!」
「!?」
「!?」
意を決して勇者に想いを伝えるマリア。周りの住民は既に避難済みでその場には三人しか居ない。マリアにとっては絶好の機会であるが、二人にとってははた迷惑である。
「き、君今はそれどころでは―――」
「貴方は誰よりも影で努力を欠かさず常に向上心に溢れてます! お願いですから乱暴はお止め下さい!!」
魔道士は、突如現れ告白をしたマリアに戸惑ったが、冷静に考えた。
(今の変態全裸パンツブラ勇者に告白する女が居るとは到底思えん…………まさか!!)
「き、貴様俺の姿が見えているのか!?」
「私はずっと貴方の事を影ながら見ておりました!! 誰よりも愛しております!!」
マリアには当然魔道士の姿は見えてはいないし声も聞こえない。マリアの目は勇者しか捉えていない。
(ずっと俺を……見ていた……だと!?)
呆気に取られている魔道士を見て、勇者は好機と思い聖剣を静かに振りかざす……
「危ない!!」
──ドンッ!
「おわっ!」
魔道士をはね除けるように勇者の前へと立ち塞がるマリア。両手を広げその身を委ねる。
「乱暴は止めて下さい! どうしてもと言うのなら私からお斬り下さいませ!!」
マリアは勇者が酒の勢いで奇行に走ったと勘違いをしているが、傍から見れば当然であろう。全裸にパンツを被りブラまで着けて聖剣を振り回しているのだから…………。
一方、魔道士はマリアが自分を庇ったと勘違いをし、マリアには魔道士の姿が見えているものだと思い込み始めた。
「お前……そこまで俺のことを……!!」
「危ないじゃないか!? 君、今は危ないから何処かへ避難してなさい!!」
魔道士との戦闘中である勇者にとってマリアは唯の邪魔者である。
「私は貴方様が雨に濡れた子犬をお助けした時から、貴方様のお優しい心に触れ、ずっと心の支えになりたくお慕いしておりました……貴方様と結婚したく存じ上げます!!」
「頼むから今は何処かへ……!!」
勇者は困り果てどうして良いの分からず、振りかざした聖剣を降ろした……。
一方魔道士は……過去に偶然にも雨に濡れた子犬を助けた事があり、完全に自分の事だと思い込んでしまった!!
「こんな、俺で良いのか……!?」
スーッと魔道士が魔法を止めて姿を現す。邪悪な笑みはもう無くなり、そこに居るのは改心した魔道士であった。
「こんな俺で良いなら……結婚しよう!!」
魔道士は涙を流し声を大にした。
マリアは突如聞こえた声に驚き振り向くと、そこにはいつの間にか涙する魔道士がいる事に気が付く…………。
「なんだこのオッサン!! 誰がお前なんかと結婚するかバーカ!!!!」
魔道士は邪悪な笑みを取り戻した……その目から零れ落ちる涙を押さえて…………
読んで頂きましてありがとうございました!
(ゝω・)