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平治物語 武士の体面

作者: こたつむり

 平治元年(1159年)12月のこと。


悪源太義平は、平氏の本拠六波羅ヘ攻め寄せた。


日はすでに中天に達している。


戦は大混戦となり、あちこちから地鳴りとともに人の怒号が響く。


砂煙と血が宙を舞い、真冬だというのに異様な熱気が辺りを覆い尽くしている。

そんな中を、金子十郎家忠は駆け回っていた。


朝から続いた戦で、今も手に持っている太刀は叩き折れてしまっている。


困った。もうひと暴れしたいのだが、と思っていると、前方に見知った人影を捉えた。


同じ武蔵国の住人足立遠元である。


馬をけしかけ、並走する。

「ああ、これは金子殿」

と、柔和な顔に子供のような笑顔を浮かべてこちらを見遣る。


戦の最中だというのに、こちらも釣られて顔が綻ぶ。

「足立殿、これをご覧下さいよ。太刀が折れてしまいました。代わりがありましたら、お情けにあずかりたいのですが」と言うと、


足立は

「そうですね。代わりはありませんが、あなた頼みなら。これをお使い下さい」と言って、自分の前を駆けさせていた郎党の太刀を取って渡す。


「おお、これは助かります。有り難く使わせていただきます。では」

と言って、敵中ヘと駆けて行った。味方から歓声があがる。


足立も続こうと、郎党の方を見ると、今にも腹を切ろうと、腰帯を押し切っていた。


足立は慌てて止めに入る。

「どうしてそんなことをしようとするのか」

と問うと、


郎党は

「私から太刀を取り上げ他人にお与えなさったのは、常日頃から役に立たない者だと思っていらっしゃったからなのでしょう。これが最後のお供と思っておりましたが、これほどまでに見限られてしまっては、もう死ぬより他にありません」と申し上げる。


足立はそれを聞くと、馬から飛び降りて

「すまなかった。お前がそう思うのも致し方ないことだな。だが、同じ主君のため命を懸けて戦う者の頼みとあっては、捨て置くわけにもいかないのだ」

とおっしゃる。


その時、敵が一騎現れた。

それを見ると、足立は

「しばらく待て」

と言って馬に飛び乗ると、弓を構えた。


キリキリと引き絞る。


音が消える。


視界が狭くなり、やがて一点に集まる。


当たる。


矢を放った。


矢はヒュッという音とともに、空を裂き、見事敵の眉間を捉えた。


敵は馬から落ちる。足立はそれを見届けると、馬を駆って、倒した敵兵の元ヘと近寄っていき、腰から太刀を奪い取って戻って来た。


郎党と馬を駆け並べると

「さぁ、太刀だ。存分に働いてくれ」

と言って郎党に与え、前を駆けさせた。


戦はまだ続いている。

楽しんでいただけたでしょうか?拙い文章で本当に申し訳ありません。この話にはモデルとなった原作があるので(だからちょっと心配)よかったらそっちも。正直完全創作の長編も考えていて、書きたいなぁと思っているのですが、いかんせん、筆力がないので。では、またお会いできること心から願って。さいなら。

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― 新着の感想 ―
[一言] 矢が放たれるときの描写、上手いです。 ストーリーの構成も上手だし、長編連載じゅうぶんイケますヨ。
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