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僕は純粋にあなたに好かれていると思いたい

 激しく咳き込む僕に楊は心配したのか席を立って僕のそばに来ると、軽く背中を叩いてくれ、それから、なぜか彼は僕に謝った。


「どうし、けほ。けほ。どうして、ですか?どうし、て、ご、けほ。ごめん、なの?」


「うん?お前は俺をこんなに信用しているのに、俺はお前に嘘ばっかりでしょう。」


 楊に渡された水を飲んで落ち着いた僕は、やるせなさそうな楊を元気付けたいと、良純和尚にも話した事の無い僕の真実を告白しようと考えた。まぁ、おそらく良純和尚に話しても「そうか。」で済んでしまう事は想像に難くないが。


 良純和尚は僕がヒキガエルだと言っても「そうか。」って受け入れてくれる気がする。

 では、楊は?僕は暗い表情になっている楊をじっと見上げた。


「僕は嘘をつけませんが、本当の事もあまり話さないです。僕は成人男性でいようと思うけれど、思うだけで体は全然成長しないし、きっと、男性としては一生不能です。」


 楊は僕に笑うどころか僕をぎゅうっと抱きしめた。違う、楊は僕を抱きしめながら喉を鳴らして笑っており、僕は彼を元気に出来たと少し嬉しくなった。


「馬鹿ちび。お前見えたな。俺と梨々子の事を。俺は抱かなかったんじゃなくて抱けなくて、適当に梨々子をごまかして逃げたって事をさ。」


 僕は楊の言葉に彼が僕の事を知っていたのではなく、梨々子の事で悩んで支離滅裂だったのかと、自分の先走りに呆れながらも彼を笑わす事が出来た事にほっとしていた。


「でも、抱ける状態でも、かわちゃんはしなかったはずです。」


「そうかな。梨々子の体は俺の理想の体型だったぞ。」


「絶対にしませんよ。」


 僕は抱きしめる楊から解放され、額をぶちゅっと楊にキスされた。額が気持ちが悪いと変な顔になったからか、楊は大きな笑いを弾けさせた。やけっぱちにも聞こえる笑い声でもあったが、そんな大笑いを散々あげた後に、彼は僕を再び抱きしめたのである。


「お前は本当に可愛いよ。お前のように梨々子も可愛いんだよ。可愛いだけで、俺には女に見えないのに、俺の恋人になるのがあいつの幸せらしくてさ。どうして俺以外に目を向けないんだろうね。あいつの考える俺は実の俺じゃないのに。まぁ、あいつの考える男の振りを止めれない俺が一番最低なんだけどね。学校の友人の前で恥をかかせないようにって、指輪を買って与えて婚約者になったりさ。最低だろ。英雄視されて面倒だと言いながら、英雄ぶるのを止められないなんてね。」


「僕も止められません。僕を、記憶を失う前の玄人を愛してくれる人に、今の僕とあの時の僕が違う人間だと告白できません。」


 ぎゅうっと、楊の腕に力が篭った。


「馬鹿ちび。お前は同じだよ、一緒だって。俺が言うのだから間違いない。お前はお前のまま、このまま、ここにいればいい。男になれなくても、女のような姿でも、お前でいればいいんだよ。」


 僕は楊の言葉にクスクス笑いが迸ってしまった。クスクス笑いは次第に泣き笑いになってしまったが。やはり楊は気付いていたのだ。そして、僕自身も気がついたのだ。楊が純粋に僕を気に入ってくれたわけではなかったと。


「ちび?」


「かわちゃんは本当に嘘つきだ。知っていましたね、僕がXXYだって。かわちゃんは僕が可哀相だと、それでやさしくしてくれたのですね。梨々子の話題だってそれをごまかすためだったんだ。かわちゃんのごめんって、そ、それ、それをごまかす――。」


「シー、黙って。そんなのは俺がお前を好きになった要素の一つじゃない。俺はお前の馬鹿な所が好きなんだから、それはどうでもいいことなんだよ。でもさ、お前は辛いか?その体でいることが辛いか?俺はそこが心配なんだよ。」


 僕は何も答えられず、ただ僕を抱きしめる楊を初めて腕を回して抱き返した。


「ちび。」


 すると、僕の顎を彼は掴むと深刻な顔つきで僕の顔を覗き込み、そして僕に何かを言おうとしたのだ。結局その行為は起こせなかったので、彼が何を言おうとしたのかは不明のままだ。彼のスマートフォンが振動し、それを振動させた発信先が彼が傷つけたと悩む少女からのものであったから、僕が彼の腕を振りほどいたのである。


「かわちゃん。僕は大丈夫だから。だから、梨々子のために行って。」


「でも、ちび。」


「可哀相な僕だから好きになったんじゃないのなら、行って。」


 楊は僕のためにスマートフォンを持って自室に戻った。真剣に僕を心配する楊の姿よりも、僕をからかって喜ぶ楊の姿の方がいい。それならば僕は純粋に彼に好かれているのだと実感できる。そんな卑怯で独りよがりな僕の気持ちを大切にするために、彼は僕を置いて行ったのだ。


「それなのに一人になって寂しいなんて。」


「ぷいぷいぷいぷいぷい。」


 僕を慰めるように鳴き始めた愛情深いモルモットのケージへと僕は向かい、彼女をケージから出して抱き上げた。

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