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悪戯?それとも?

 俺の耳に囁かれた言葉、「成年後見人」の単語で俺は頭を抱えた。


「忘れていた。」


 なんたること。

 玄人を精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者だと、つまり行為能力のないものとして、四親等内の親族には家庭裁判所に成年後見の開始の審判を請求することができるのである。


 隼に玄人の成年後見人に納まられたら、現在は任意代理人であろうと、ただの他人である俺には覆す事など不可能であり、その後は俺が一切彼に手出しができなくなるのだ。


「かわちゃん。お前の調べたクロの抜かれた金の動きや隼達の虐待行為について――。」


 楊はいつの間にかキッチンで冷蔵庫から追加の飲み物を取り出しており、俺は数秒前に囁かれた右耳を無意識に右手で抑えていた。

 楊の白く整った横顔を見つめながら、たった今俺に囁かれた声が楊のものではないと気が付いたからだ。


「俊明、さん?」


「百目鬼さん、どうしました?」


 俺の振る舞いを訝しんだ髙が俺に声をかけると同時に電気がふっと消え、部屋は急に真っ暗になった。突然の事に部屋に集まっている者達が一斉に口を閉じ、部屋が完全に重苦しい沈黙で支配された時、ぷつっとテレビが点いた。


 テレビモニターはザーとノイズを数秒光らせて、ブチンと画面が切り替わり、切り替わったニュース画面には、最近人気上昇中の美人キャスターの大映りだ。


 彼女の右斜め後ろには口コミで人気だと聞いたことのあるカフェがあり、大通りを前に立っている彼女は右斜め後ろのカフェを指し示した。


「おはようございます。月よう――」


 画面は消え、再びブツンと明りが灯った。

 数秒前の画像そのままが映っている。

 美人キャスターが数秒前と同じ笑顔を作った。


「おはようございます。月曜日朝のニュース神奈川です。今日は」


 ぶつん。

 真っ暗な画面。

 ぶつん。

 数秒前の彼女が同じ笑顔でこちらを見ている。


「おはようございます。月曜日朝のニュース神奈川です。今日は相模原市のここ、ぎゃああああああああああああああああああああ。」


 美人だった面影はない。

 両目を飛び出させた白目となり、口を大きく開けて彼女はただ叫んでいる。


 ぶつん。

 テレビは再びノイズ画面になり、ザーと音を立てた数秒後に、点いた時と同じようにぶつんと切れた。


「えーと。まぁ、いい悪戯だな。タイマーで録画を流すように誰か悪戯したんだろ。」


 暗闇の中、間抜けな楊の声を合図にパッと世界が明るくなった。


「電気を消したのはお前かよ。何をやってんの。」


 結局は楊の悪戯かと、先程の空耳に関しても楊の仕業だろうと、気が緩んでの俺の言葉であったが、俺の言葉を受けた楊は豆鉄砲を食らった鳩の顔だ。


「違うって。ライトのリモコンがココにあったから点けた――。やめよう。さぁ、飲むぞ。辛気臭いのやめやめ。お前ら今日は帰さないからな。葉山姉弟も泊まっていけ。無礼講だ、無礼講!」


 楊がしらけた場を盛り上げる声を出す中、玄人に目線を動かしたが、玄人と山口の姿が消えていた。

真砂子は今の事象に吃驚した顔で佇み、葉山は両手にモルモットを抱えたまま、思案顔で廊下に続くリビングのドアを眺めていた。


「葉山君、あいつらはどこに行った?」


 モルモットを大事に抱えている葉山は、不可解だという風に顔を歪めてから俺に答えた。


「ダイダイがおかしいって。外に行っちゃいました。」


「ダイダイって、ここの住宅街のシンボルツリーの?」


 俺と楊は顔を合わせて、不可解君達を連れ帰りに外に向かった。

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