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第89話 明かされる真実 1

 俺たちの元へと、ミィトが歩いてくる。その顔には笑顔が生まれていた。


「す、すごい……。2人とも、強かった……」


 気弱な人格だ。しかし、ここまで言ってくれるんだから今の言葉は本心だろう。


「もう7時だけど、こっちに来てもらってもいい?」

「ああ」


 周囲の人たちは俺がミィトと軽々しく話していることに驚いていた。もう人前でミィトと普通に話しちゃいけないの?


 っていうか、シーファと手合わせしていたうちにもう1時間経ってたのか。まあ長期戦だったし、不思議なことでもないが。


「どこに行くんだ?」


 ミィトに連れられ、俺たちは街を歩いている。ここにはロット国の幸塔すらないし、会議とか大切な話をするときにはどこを使っているのか。


「取り敢えず僕の家まで来てもらおうかなって。……ダメ?」

「いや、大丈夫だ。ミィトの家に呼ばれるなんて光栄なことだよ」


 返事は返してもらえなかったが、表情は綻んでいた。単純って言っちゃあアレだけど……うん、単純だ。


 しばらく歩くと、豪邸が見えてきた。城ほどではないが、その次に並ぶほどの大きさだ。流石はギルドマスターの家。でも俺には合わないな。これだけ広いと逆に落ち着かなくなる。


「中に入ってほしいな」


 言われた通り、中に入る。


「わあぁぁぁ」

「わん!わんわん!」


 シーファが感嘆のため息をつき、シロはまるで庭のように駆け回る。


「おい、シロ」


 慌ててシロを取り押さえようとするが、シロは鬼ごっこと勘違いしたみたいで俺から逃げるべく奥へと消えていった。


「あいつめ……」

「いいよ、いいよ。僕の家は中に入った生物を観察できるようにカメラがたくさん仕掛けてあるんだ。盗難対策ってところだよ。だから、シロはいつでも見つけられる」


 へぇー。やっぱギルマスの家は盗難とかあるのか。見た目的に金持ってそうだし、俺が犯罪者だったら絶対この家入ってるな。そんですぐミィトに殺されるってわけだ。


「でもなぁ。あいつ1匹だとかわいそうだし……」

「なら、私が探してきます」

「……シーファ、いいのか?」

「はい。和樹のことは後で聞かせてください」


 シーファはぺこりと頭を下げ、シロを追っていった。


「えっと……。まだ、用件を聞いていなかったような……」

「そうだな。まだ、言っていない。でも、シーファが言ったように今回は和樹関連だ」

「……どうぞ」


 俺は口を開く。


「まず、魔物が大量発生したことは知ってるな?」

「う、うん。クリアナから教えてもらったけど……」


 クリアナ?誰のことだ?……説明してくれそうな雰囲気じゃないし、多分秘書みたいな役割の人だと認識しておこう。


「で、ラギ森林に魔人がいた」


 カゲマルのことだ。予想した通り、ミィトの顔は驚愕に染まる。


「ま、魔人!?あんなところに魔人なんて……この世はおしまいだ……」


 悪い方向に話盛りすぎやろ!


「ま、まあまあ。おわることはないと思うぞ。……多分」


 最後のは小声で付け足した。


「それで、魔人と戦うことになってな」

「……勝った?」


 少し躊躇ったが、俺は肯定する。カゲマルのプライドが傷つかなければいいが。


「勝ったんだが、その後に俺とついて行くって決めたんだよ。そこで重大な発表なんだけどな、魔物は魔王の命令で人間を殺しているだけで、自分たちの意思ではないらしい」

「ちょ、ちょっと待ってよ。ついて行くって……。それに、魔王の命令?」

「ああ。魔人から聞いたが、魔物は魔王から命令を受けているらしい。そして、逆らったやつは即死罪。これが今でも続いているからなんだよな。ま、ここからは本人の口で話してもらったほうがいいんじゃないか?」

「ほ、本人……?」

「出てこい。カゲマル」


 少し間があって、カゲマルが俺の影から飛び出した。


「まままま魔人!?」

「安心しろ。こいつは敵ではない。むしろ、味方だ」

「味方……」


 ミィトは恐る恐るといった感じでカゲマルに近づき、爪先から頭まで全てに目を通した。


「そんなに魔人が珍しいか、人よ」

「……!」


 言葉を発したカゲマルに、ミィトが体をのけぞらせる。いや戦って余裕に勝てるしビビる必要ないと思うんだけどなぁ……。


「ミィト、あまりビビるな。カゲマルはあまり驚かすな」

「ご、ごめん……」

「すまない」


 互いに謝罪をする。俺は話を切り出した。


「カゲマル。これから質問するけど、いいか?」

「もちろんだ。答えられるものなら、なんでも答える」

「らしいぞ」


 ミィトへ言う。彼女ーー彼(今の人格でいうと)にも疑問があればどんどん聞いてほしい。


「じゃぁ俺からの質問だ」


 カゲマルの視線が俺に動いた。


「魔物はどうやって生み出されるんだ?」


 いたって普通の質問なのかもしれない。しかし、このことに関しては図鑑にすら書いていなかった。だから、気になったのだ。もしかしたら解明されていないことなのかもしれないとーー。


「……口外は一切禁止だ。それはわかっているな?」


 ん?この質問ガチパターン?


 みると、ミィトの顔も真剣そのものになっていた。どうやら本当に解明されていなかった謎らしい。俺は自然と生まれるかと思ったがな。


「魔族ーー俺たちを含めての魔物だ。それが、どうやって生まれるか。これは魔族だけが知っている極秘情報だ。これが人間界に渡った場合、即座に口外した魔物は殺されることになっている。それも、呪いでだ」

「……の、呪い?」

「そう。俺たち魔族にはーー」


 カゲマルは話しながら服の裾をめくった。灰色の腕には不気味な魔法陣が描かれている。まるでシーファに昔あった核印のようだ。


「魔王によってこれがつけられ、口にした瞬間周り含めて爆発するという呪いが込められている」

「は?カゲマルが今話したら、死ぬってこと?俺たちも巻き込んでか?」

「いや。今は何故か魔法陣が作動してない。悟様に名前をつけてからずっとこうだ。もしかしたら、名付けに効果があるのかもしれない」


 成る程。


「では、本題に入ろうと思う」


 ついに話してくれるか。魔物ができるまでのメカニズムを……!


 辺りに盗聴している人間がいないか確認し、カゲマルはゆっくりと口を開いた。

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