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第77話 ロット国よ、さよなら

「悟様……聞き難いんだが、転生者とはどういう意味だ?」


あ。


「な、何かの聞き間違いではないでしょうか?」


シーファが必死に援護。しかし、カゲマルの顔は確信に変わっていた。


「シーファ殿の顔……何か知っているな」

「っ……」

「改めて聞こう……転生者とはどういう意味だ?」


もう少し後から話したかったが、しょうがない。話すしかないのか。


「わかった。話す。シーファもそれでいいか?」

「まだ抵抗がありますがサトルがいうなら私は何も言いません」

「そうか……ありがとう」


俺はカゲマルに全てを話した。自分が転生者だということ、変化を使って姿を変えられること、シーファが鳥獣人だということ、魔物が中に取り憑いていること。その他にも今までの旅をすべて漏らさずに話した。


カゲマルは俺の旅路を聞き終わり、一回だけ頷いた。


「全てを話されて俺の心は変わった」


やっぱりな。俺の元を去っていくのか。


「短い間だったが、何度も悟様の元を去ろうと思った。その方が自分のためになると思った。だが、こうして話してくれて悟様は鳥獣人という見たこともない種族ーーシーファ殿とも差別せず一緒に旅をしている。俺は悟様の差別に対する思いがよくわかった」


え?これってもしや……。


カゲマルはわかりやすいようにひざまづいた。


「魔人である俺でもよければ、これから共に旅をしていきたい。これは俺の願望だ」

「いや、そこまでやらなくてもいいんだけど……」


ひざまづくことまでしなくてもいいんだけどね。


答えを待っているカゲマルに、俺は大きく頷いてみせた。


「来たいのなら一緒に来い。俺はお前を突き放したりはしないし奴隷にすることもない。だが、俺から1つ条件がある」

「なんでもいえ」

「絶対に死ぬな。これだけだ」

「……ああ。約束する」


俺は微笑んだ。カゲマルの表情もほころぶ。


「ついてこい。カゲマル」

「承知した。悟様に一生ついていく」


ひと段落ついたところでシーファが横から入ってきた。


「では、サトルはこれからエルシャルト国に帰るのですか?」

「そうだな。やることもなくなったし、エルシャルト国に通って色々やってからチカ大国に向かう」


エルシャルト国の受付嬢のミーノにも挨拶しなきゃいけないし、王様にもアイテムボックスを返さなければいけない。全ての図鑑を読み終わったから用はないしな。中に入ってるものは……。まあその時考えよう。


「よし、帰るぞ」

「馬車で帰りますか?」

「いや、徒歩だ」


シーファが嫌そうに唸る。俺は小声で話しかけた。


「カゲマルと一緒に歩いて友好関係を築くのが最初だ。まあ、もう逃げないと思うがこういうこともいいだろ」


納得した様子でシーファは「はい」と、返事をした。


一度カゲマルに影の中へ入ってもらい、俺は大通りに出る。街をぶらりとして、食べ歩きをしたところでロット国を出た。因みに影の中に食べ物を放り込むとスッと消える。カゲマルも中で食べているのだろう。


シロを宿から連れてきて、ギルドに礼を言う。そして、俺は一度も振り向くこともなくロット国を去った。歩いていると、ゴブリンが現れて襲いかかってきたがすぐに対処しカゲマルの出る幕もなく全員殺した。


「そろそろ出てきてもいいぞ」


国から離れ、人の気配も感じられなくなったところで俺は影の中に呼びかけた。


カゲマルが俺の影から出てきて、着地した。


「よし、これでみんな揃ったって感じだな」

「最初からカゲマルは側にいましたけどね」

「いや、全員で行動しないと旅って感じはないだろ。やっぱりこういう雰囲気がいいんだよな」

「……俺にはよくわからないが自分の足で歩くこともいいと思う」


カゲマルは言う。


「って、その言い方じゃカゲマルは影の中を移動することができるのか?」

「影と影が接触していれば、どこへでもいける。森では殆どが俺の庭みたいなものだ」

「こんな平原に出るのは初めてって感じか」

「一回だけきたことがあるが速く移動することができなかったから、すぐに撤退した」


これはカゲマルの戦術の向上も考えないといけないな。平原でも自由に影移動ができるような、そんな戦術も考えとくか。


「ん?あれって……」


かなり遠くだが崖が見える。来た時には馬車の中であまり外も見ていなかったし気がつかなかったのかな。


「私、見てましたけどあの崖の下の洞窟を降りてここまで来ていましたよ。あの時は下りだったのですが、今度は上りですね」


シーファは自分で言っておいてげんなりしていた。だから馬車で行きたい感を出していたのか。言ってくれればいいのに。まあ、いい運動になるから俺はいいけどね。


「俺は影移動で一瞬で上れるぞ?」


確かに洞窟の中は暗いし太陽みたいな星の光りの向きでも崖をそのまま上ることもできるだろうな。


『大きい方がテルミーで、小さい方がルミーです』


あ、そうなんだ。


太陽もといテルミーとルミーという発光体は2つある。地球で想像してほしい。大きい太陽と小さい太陽が並んでいる風景だ。でも地球の太陽よりかはどちらもかなり小さくそこまで大地が暑いことはない。むしろ地球と同じぐらいだ。


……俺洞窟入ったところも何も覚えてないのか。寝てたのかな?それともボーっとしてた?……うん。多分後者かな。寝てた記憶ないし。


なんやかんやで雑談をしながら歩き続けて約4時間。もともと運動不足だった俺の足はくたくただったし、まず月らしいものも出てきた。これは1つだ。


『テミーです』


あ、はい。ありがとう鑑定さん。


『もう少し感謝してください。こちらも情報を与えているのですから』


説教された。たまに毒舌だよね、鑑定さんって。


俺たちは崖の前についた。すでに空は星に包まれている。……ここにも星座があるのだろうか。ふとそんなことを考えてしまう。


……星座って初見だとどんなものにも見えるし逆に見えない時もある。ま、今の俺には不必要な情報だな。


「ここで野宿にして明日に備えましょう」

「わかった。カゲマル、戻ってこい」


周りに魔物がいないか偵察に行っていたカゲマルが帰ってくる。それも俺の影の中から。


「うわっ!びびった!!」

「心外だ。悟様。今のが実戦だったら一突きで死んでいるぞ」

「す、すまん」


何故かカゲマルにも説教され気持ちが萎える。


そうして俺たちはロット国で買いだめしておいた食材を食べ、寝た。

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