第8話 スライムじゃん
シーファが仲間になってから数時間。彼女の料理の木の実のシチューを食べたのだが、すごく美味しい。俺の食べたルーゲラリトルベアーよりも格段に美味しい。そこでシーファの鑑定をしてみると……。
シーファ
種族...鳥獣人
状態異常...実験台の核印(レベル以外の全てのステータスが2分の1になる)
レベル...4
HP...25/25
MP...50/50
攻撃...16
防御...12
素早さ...35
魔法...34
《スキル》
・風刃・風圧変化・MP自動回復・火球・水球・ウォールバリア・ヒール・エリアヒール・料理・飛行
《ユニークスキル》
・羽変化
《称号》
・風使い・実験台・融合された者・寂しがりや
核印……?融合された者……?何があったんだ?
俺が鑑定していることにも知らず、シーファはにこやかに笑いながら食器の片付けをしてくれた。おおう……なんか罪悪感……。
「終わりましたよ。サトル、目的地は決まっているのですか?」
「い、いや。俺はこの森以外のことは知らないからな」
「ええ⁉︎民族か何かですか?この森でそんなこと聞いたことはないと思うんですけど……。ましてやルーゲラ大森林ですよ?こんな危険な森に民族って……」
「まあ、そんな感じだ。民族の仲間がいたが、みんなルーゲラベアーに殺された。俺だけが生き残ったんだ」
実際にはルーゲラベアーには会ったことがないが、どうやら信じてくれたらしい。ふむふむといった感じで頷いている。
「で、森から出られなくて困ってるんだが……。ここの森、強いといってもスライムぐらいしか出てこないよな?俺の感覚が狂ってるのか?」
そう言うと、シーファはまたまた目を丸くした。忙しい奴だな。
「スライム?ま、まあ今は繁殖期で沢山いますけど……ですけど、おかしいですよ。だって、ルーゲラ大森林はAランクのモンスターがうじゃうじゃいることで有名なんです。スライムだけにしかあってないというのはさすがに……」
そうだったのか。じゃあ、俺が倒したスライムは一体……?
その時、ガサガサと草むらが揺れ水色のスライムが姿を現した。シーファは驚く。
「ほ、本当にスライム……」
俺はいつでも動けるように準備をするが、スライムはこちらに目もくれず、反対側の草むらへのかけていく。姿が見えなくなったところで俺には疑問がうかがえた。
「なんで襲わなかったんだ?」
鑑定で前見た結果、スライムは見た者全てに攻撃を与えると書いていたが……。俺に気がつかなかった?いや、スライムは360度どこでもいつでもみれる。気づかれないことなど、ないに等しい。
「怪しいですね……。どこかの本で見たことがあるんですけど、スライムがこんな感じで素通りする時は……ああ、思い出せません。何でしたっけ?……」
シーファが記憶と奮闘しているが、俺の心の中ではスライムを追うと決定してしまっていた。
「よし、行くぞ」
「え?ちょっと、待ってください!」
慌てて付いてくるシーファの手首を掴み、さらに走る走る。ようやくゆっくりと移動しているスライムを見つけ、気がつかれないようにしゃがんで後を追う。その時、シーファの怒った顔が見えた。
「あ、ごめん……」
「やめてくださいね、もぅ」
掴んでいた手首を話すと、彼女は頬を膨らませた。定番っちゃあ定番だ。
スライムの移動速度が上がり、木々の間から開けた場所が見つかる。シーファが小さな声で呟いた。
「えっと……スライム?集合体?ドラゴン?」
ん?なんか今危険なワードが出た気がするぞ?止めてくれよ、ドラゴンとかそんなの出てこないでよ。
俺たちが追っていたスライムが開けた場所に行く。同時に、何匹ものスライムがいろいろな方向から出てきた。50……100……ざっと数えると100ぐらいか?いや多すぎだろ。俺でもこの数は負けるかもしれねえ。いっそのこと、スライムに変化してあそこに混ざろうかな。
300ほどのスライムはひしめき合い、中央で山積みになっていく。最後には全部がくっつき集合体になった。
シーファのいうことあってる気がする。ということは……。
スライムたちは姿を変え、ドラゴンへと変身した。
「グオオオォォォォォン!」
ドラゴンが雄叫びをあげる。
「思い出しました!あいつ、スライムの集合体の、ドラゴンスライムで……す……よ」
大声を出したことに気がついたのか、慌てて口を押さえるシーファだが時すでに遅し。ドラゴンスライムはこちらに目を向けていた。
完全にばれたな。勝てるかどうかは分からないが、ルーゲラバイガルという強敵を見たせいかあまり恐怖は感じない。俺の体力的に逃げることはできないだろうし、戦うしかないようだな。
こうして俺は草むらから勢いよく出た。
評価ありがとうございます!これからも精進出来るよう頑張ります!