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第74話 またまた魔物退治 7 (^ν^)

 剣をキラープラントの体に突き立てるが、鑑定さんの解説通りに皮膚は固かった。俺の剣の金属音がこだまし、呆気なく弾き返されてしまう。それに剣が体に当たった時にジュワッと変な音がした。多分刀身が溶けている。物理攻撃は効かないか。


 ……いや、待てよ。物理攻撃が効かないって言ったら俺不利だよね?あんまり魔法覚えてないしこれはシーファとカゲマル専門になりそう。


「俺の攻撃は効きそうにない。今回はシーファとカゲマルメインでやってくれ」

「分かりました!」

「承知」


 いつの間にか戻っていたカゲマルが俺の隣で頷く。2人とも闇魔法得意だし、いいコンボでやっつけてくれるだろう。……俺後ろで詠唱してよ。ここなら相手の目につかず聖柱がうてる。


 シーファとカゲマルの攻撃は中々のものだった。カゲマルが前衛に出て闇属性で攻撃。キラープラントの酸飛ばしを避け後ろに控えていたシーファが闇球で援護をする。俺が出たら足手まといになると思う。これ絶対。


 俺の聖柱の詠唱が完了する。あとは技名を言うだけだ。


 足手まといとか言ったが今は別。前に出て技を出す。


「シーファ、カゲマルどけ!」


 2人がすぐに事情を察し左右に飛び退く。俺はキラープラントの真っ向に立った。


「聖柱!」


 キラープラントの足元に魔法陣が広がる。やがて光が溢れ出しキラープラントを包んだ。と、思われた。


 聖柱が天をも焦がす勢いで発動する。俺は右に迫る風圧に思わず身を翻した。大きな酸の塊がすれすれを通過する。それを発射したやつは……キラープラントだった。見事聖柱の攻撃を避けたのだろう。やはり弱った魔物にしかこれは通用しない。もう少し後に発動するべきだった。


「サトル、ここは私たちに任せてください」


 俺を守るかのようにシーファとカゲマルがキラープラントの前に立ちはだかる。お礼しか言えないが、なんか罪悪感。


 キラープラントに攻撃をするシーファたち。しかし、一度キラープラントは悟に狙いをつけたみたいで魔法攻撃を物ともせずに俺の方へと突き進んでいく。


「サトル!」

「悟様!」


 ついにシーファとカゲロウの魔法が突破されキラープラントが俺の方へとくる。上の葉を立たせ、大きな口を露わにした。


「そこだっ!」


 火球を口の中にぶちこみ俺はバックステップで後ろに下がる。俺を喰おうとしていたキラープラントの口が空振りで閉じた。爆発と念じると、やつの体が増幅する。そして──。


「ギュガアアァァ………」


 苦しむ声を最期に体が四方八方に飛んで行った。ちなみに酸は飛んでこない。最大火力の火球をぶち込んだため、全て蒸発してしまったからだ。これも計算内といっていい。


『キラープラントを倒しました。経験値568獲得。レベルが50になりました。火刃を習得しました。雷球を習得しました。斬撃波を習得しました。必中5%(未完全)を習得しました。レベル50ボーナスでHPが上昇しました。部位変化が使えるようになりました』


 成長期きたーーー!!!


 サトル・カムラ

 種族 人間種

 状態異常 なし

 レベル50

 HP...1200/1200

 MP...1650/1650

 攻撃...290+10

 防御...272+10

 素早さ...278+10

 魔法...429 +10

 《スキル》

 ・状態異常無効・鑑定・火魔法・火刃・雷球・斬撃波・必中5%(未完全)・聖柱・融合魔法・渾身の一突き・大気感知・意思疎通・言語理解

 《ユニークスキル》

 ・変化・部位変化(一箇所)・変化呪

 《称号》

 ・神に気に入られた者・感知ができないただの馬鹿・怒ると怖い・仲間思い・馬鹿買い・詐欺師・ドジ・料理への執念・強者殺し・絡みやすい・魔人の主


 おお、結構不安だったHP問題が解消されてる!前のレベルじゃ700だったのに、これだけ上がるとは感激だ。


 で、部位変化って……。


『自分の体の一部を倒した魔物に変化させることができます。選択部位は、腕から手、太ももから足、首から頭、それ以外の胴です。それと、普通の変化よりも制御を抑えるのに難しくなりますので激しくMPを消費します』


 名前通りの効果だな。それと負担が大きいらしい。だけど使い道は良さそうだ。


「流石です。あんなに呆気なく倒してしまうとは。私の出る幕などなかったですね」

「いや、今回は運が良かっただけだ」

「と、いいますと?」

「あいつの弱点は口の中の花だった。口の中にあったことが幸いで、火球をうって楽に倒せることができた。もしも弱点が口以外の場所だったら逆に、楽に倒すことはできなかっただろ」

「確かに、火球と爆発で敵を討伐するとはいいアイディアだ。ここは悟様が前衛で攻撃しても良かったと思うが……」

「俺にはいい立ち回りはない。そこまでいい魔法を持っていなかったしな」


 カゲマルは小首を傾げる。


「ということは、いい魔法が手に入ったのか?」

「……ああ。レベルがちょうど50になってな」

「50!?」


 カゲマルの目が開かれる。今度は俺が首を傾げる番だった。


「レベル50で俺に勝ったというのか!?俺よりも遥かにレベルが下なのに?」


 あ、そこらへんの記憶は残ってるんだ。


「まあこっちにも色々と事情があるしな……」

「そういうことです」


 シーファがフォローを入れる。カゲマルには俺のスキルのことも話していないし転生者だということも告げていない。完全に逃げたりしないとわかった時に伝えるつもりだ。


「承知した。……話は変わるがあいつらどうするんだ?」


 カゲマルが視線を向けた方向にあるのは2人の冒険者の姿。1人の魔導師が受けた傷をヒールで癒している。


「お前ら、大丈夫か?」

「あっ、たたた助けてくれてありがとうございますっ!」


 二人組の女性だった。魔導師がかみかみでお礼を言う。剣士の方はまだ腰が抜けているようで口をパクパクと動かしていた。もちろん言葉は発せていない。


「大丈夫ですよ。もう魔物はサトルが退治しました」

「悟様の力は圧巻だった。もう生きていることはないだろう」


 剣士をなだめているシーファとカゲマルを横目に、俺は魔導師にあることを聞いた。


「一応聞いておくが、ラギ森林でキラープラントが出るのは日常茶飯事なのか?」

「いいいいえ、でででへらいれしゅけど……」


 なんだこの人めっちゃ噛むな。


「あの、話ならあたしがするから……」


 そこに、剣士の女性が来た。シーファたちも俺の元へと戻ってくる。説得は成功したらしい。


「ムミィは人見知りで、あたし以外はまともに喋れないんだ。だから、代わりにあたしが喋るよ」

「ああ。よろしく頼む」

「で、どういう質問だったかな?」

「この辺りにキラープラントは現れるかどうかってことだ」


 さっきの全然聞き取れなかったし……。


「いや、出ない。逆に初心者用の森にキラープラントが出るのがおかしい」

「成る程。じゃあ、どうしてここにキラープラントがいるか……推測でいいから何か話してくれないか?」

「そうだね、あたしはきっと魔王が関係してると思うね」

「そうか……ありがとう」

「こちらこそ、命を助けてもらったんだ。このかしはいつか返さなきゃ」

「俺は別にかしかりなんて気にしてないぞ。返すなら返すで好きにしろ。シーファ、カゲマルいくぞ」


 そうして俺たちはその場から立ち去った。

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