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第72話 またまた魔物退治 5 (*^◯^*)

今回も魔物と戦いません。

「か、カゲロウさん宜しくお願いします…?」


 突然のことで何が何だかわかっていないシーファだが、きちんと挨拶はできた。最後少し疑問形だったけど。まあ気にしないようにしよう。


「シーファ殿。これからよろしく頼む。俺は悟様につくことに決めた身の上、全力で守ってみせる」

「はい、有難うございます……?」


 やっぱりよくわかっていいようだ。でも説明するのも面倒だしいいや。きっといつかわかってくれるだろ。


「悟様。今回はどういったご用件でこちらへ来たのか教えてくれないか」

「あのな。様をつけるのをやめて欲しいんだけど」

「主に対して無礼な真似はできない」

「でもーー」

「主に対して無礼な真似はできない」

「………」


 完全に押し負けされてしまった俺は、最後に1つだけ聞く。


「本当に俺なんかについてきていいのか?さっきお前が言った通り俺たち人間は魔物をこれでもかというぐらい殺したんだぞ?それに意味深な言葉も呟いてたし、その言葉からすると人間は何もしていないことになる。そうなれば俺たちが完全に悪いんじゃないか?」

「そう思っているのは山々だ。しかし、主に捨てられるということでその夢は実現できないものとなる。なら、次の主の夢を聞くまでだ」

「そうか……」

「じゃあ、カゲロウさんは味方になってくれるというわけですね?」


 漸く状況を吞み込めたシーファが聞く。カゲロウはゆっくりと頷いた。


「まだ心残りはあるだろ?」

「……ああ」

「前も言ったが嫌になれば好きな時に逃げろ。俺を殺してもいい。そこは自由だ」

「わかった」


 シーファが不機嫌そうな表情になったが、空気を読んでくれたため何も言わない。これは成長したんじゃないか?


「それで、魔物たちは何もしていないとはどういう意味なんだ?」

「一万年前の対戦は知ってるだろう。魔物たちは平和に暮らしていたところを戦争に巻き込まれた。いや、魔王が命令を下したのだ。そして魔王の命令に無理矢理でも逆らおうとしたやつは殺された。この流れで魔物は平和というものを失った」

「その命令の効果は今も……」

「残っている。だから、魔物は人間を襲う。大人しく従っているように見えるが魔物は魔王を憎たらしく思っているんだ。これは魔物たちを代表しての俺の一言。別に聞かなくてもいい。しかし、ここで言わせてもらう」


 カゲロウは息を継いだ。俺の顔も非常に引き締まっているところだろう。


「魔王を殺してくれ」


 ……やっぱそうきたか。


「そのことも頭に入れておく。だが、今の俺たちの敵は和樹だ。早速戦うことになるかもしれないがいいか?」

「承知した。なら、新しい主人という印で名前を新たにつけて欲しい」


 ………そうきたかぁ!


 うーん、どうしよ。俺名前のセンス全然ないんだよ。ダーク……シャドゥ……。シャドゥの上部分をとってさらにダークの下部分をとって結合させたらってこれシャークじゃねえか!ダメだダメだ。


「じゃ、じゃぁシャドゥはどうだ?」

「ありがたき幸せ」


 いいのか。やっぱシンプルイズベストだな。


 すると、シャドゥの体が淡く光った。いつの間にか目に輝きが戻っている。


「……っ!俺は何を……。そうか、魔王に操られていて……」


 ん?んんん?


「名前を……つけてくれたのか」

「いまいち状況がつかめないのだが……」


 名前をつけたって意味深に言われても俺には何も言えない。演技にも見えないし、彼は本当に操られていたようだった。


『魔王の支配下から逃れるには名前をつける必要があります。そうすると、前の記憶を取り戻し正常に行動することができます。しかし、名付けには膨大な魔力が必要です』


 鑑定さんが言った直後に俺の頭がぐわんぐわんと痛んだ。視界が暗転する。


「サトル!?大丈夫ですか?サトルーー」


 そして俺の世界は闇に包まれた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「村山和樹……か。随分親しいものだな」


 和樹は果ての大地にいた。地面は乾きはて、ところどころひび割れが入っている。いつ崩れるかわからない崖のような谷は森と果ての大地の境界線となっていた。まるで、天国と地獄の境目だ。ぐるりと一回転してあたりを眺めただけで、全く違う光景が見られるだろう。


 和樹の前にいるのは全身黒いローブを纏い狐の仮面をした女性だった。その人は大きな鎌を背中にかけている。


「こちらこそ会えて嬉しいよ、()()()()


 語尾を強調し、和樹はくすくすと笑う。余裕げに見えるが、どこか緊張感の漂う表情もあった。


「死神さんが直々に来るなんて珍しいじゃないか。長い眠りで頭がおかしくなっちゃった?」


 相手の拠点にのこのことやってくる者はそうそういない。いたとしても馬鹿だけだ。いざとなれば、相手は大量の群生を出せるのだから。


「挨拶ときてな。それにしても図書館で本を読んでいたら余たちの戦争が歴史に残っていたではないか。こちらもやっただけの甲斐はあった」

「面白いこと言うね。でも、僕も死神さんに同感かな」

「ふむ。其方の言いたいことは大方わかる」

「それを声に出して言うってことは返答も準備してるんだよね?」

「余は嫌だ、と言いたいところだ」


 和樹は心の中を読まれた上、それを否定されたことも気にしない。


「そっか。ま、今も狙っているんでしょ?」

「然り。そのスキルが発動するときを待っているのはわかっているであろう」

「おお、怖い怖い。でもスキルが発動されるのはこれから20年後。100年に1回でしかも発動時間が短いっていいよねー。それまでに死神さんに殺されることもないしさ」


 死神は鼻で笑う。そして、話を変えた。


「魔王が再び動き出したのか」

「そうだね。優秀な手下が復活してくれて嬉しいよ」


 和樹が魔王の封印を解いたことで、魔王は和樹の手下としている。しかし、人間と魔王なので勇者の持っている聖なる武器がなければ和樹は魔王に対抗することもできないだろう。実質には和樹より魔王の方が格段に強いのだ。その状態でも魔王は裏切りもせず和樹について行っている。堅実だ。


「魔物を活発にさせて、今回は何をする気なのだ?」

「奴が考えることといえば人間を滅ぼして世界を魔物たちにすることだろう。これだから脳筋は困るんだ。僕のお楽しみタイムで使うおもちゃがなくなる」


 和樹は人を殺すことが大好きだ。たまに道で歩いている冒険者を捕まえて爪を剥ぎ取ったり、皮を剥いだりとかなり黒いことをして殺す。そのおもちゃがなくなることを悲しんでいるのだろう。


「止めることはしないけどさ」

「………」

「死神さんはどうするの?」

「スキルが欲しいな」

「また目当てでも見つかった?」

「どうだろうな?」

「成る程。教えないということ」


 死神のテズは和樹に背中を向け、谷をひとっ飛びに超えた。


「あれ?いいの?今のうちに僕を殺しとかなきゃ大変じゃないの?」


 向こう側へと着地したテズはその質問には答えずに去って行った。

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