第70話 またまた魔物退治 3 *\(^o^)/*
シーファを抱えて、ラギ森林から出る。その間、和樹が追ってくることはなかった。てっきり追っているかと思ったので、ここは拍子抜けしてしまう。すると、ユリガが俺たちを見てラギ森林から駆けてきた。
「ど、どうしたんだ!?とんでもないスピードだったよな、今の。俺でも追いつくのに苦労したぞ!?」
そんなに速かったかな?
俺はシーファを地面に降ろして事情を説明する。
「は?転生者?ムラヤマカズキ?そいつは一万年前に死んだって言われてるだろ。何寝ぼけたこと言ってるんだ?」
「……え?」
信じてくれるものだと思っていた。だが、その考えは甘いことを突きつけられる。
「本当だぞ?俺たちは確かにこの目で見た。それも2回だ」
「嘘いえ。まずここで人間が暮らしていることがおかしいだろ?魔物は弱いが、ずっと暮らしていくとなるとかなりキツイ。食料だってあるし、まず根本的からお前たちの見たものは間違ってる」
「じゃあ、私たちは何を見たというのですか?」
シーファが詰め寄る。
「きっと幻術を見せる魔法の類だろう。そいつが前の魔物の大群を指導していたに違いない。うん、きっとそうだ」
「あのな?勝手に納得してもらっては困る。俺たちはちゃんと見たって言ってるんだ。村山和樹は生きている。あいつは年をとらないスキルを持っているんだ」
「……子供の空想にはついていけねえや。取り敢えず、魔物討伐を頑張れよ」
ユリガは面倒くさくなってきたようで、白い歯を見せてキラっと笑うなり森林の中へ消えていった。
「これは……かなり難しい問題になりそうですね」
ぽつりとシーファが呟く。俺は頷いた。
「そうだな。国が軍を出して攻撃するかと思ったが、それ以前に信じるか信じないかの問題か……。あ、いや、1人だけ信じてくれそうな人がいるぞ」
「……!ミィトさんですね?」
「ああ。ミィトなら俺たちの話を聞いてくれるだろうな。この依頼が終わったらあの塔に行こう」
「わかりました」
次の目的地が決まったところで俺たちは躊躇しながらもラギ森林へと足を踏み入れる。いつ和樹が襲いかかってきてもいいよう、警戒レベルはマックスで進んでいく。すると、俺の大気感知に何かがひっかかった。
「動くな」
俺の言葉にシーファは動きを止める。この呼吸は聞いたことがない。俺たちの知らない魔物だろう。
「和樹ではない。だが、気を抜くなよ」
暫くして、俺とシーファ以外の呼吸が感知できなくなった。逃げて大気感知の範囲以外に行ったのか、それとも俺たちを見つけて奇襲を仕掛けるために一旦距離をとったのか。どちらにしろ襲いかかってくる危険性だってある。気を付けなくては。
「下です!」
俺は反射神経で前へとヘッドスライディングを決めた。肝心のシーファはと言うと……地面から生えた黒い手に足を掴まれている。しかも、手はシーファを地面に引きずり込もうとしていた。
咄嗟に剣を振るおうとしたが、一瞬止まる。シーファも切ってしまう可能性があったからだ。相手は俺の殺気を敏感に感知しシーファを俺の方へと投げつけた。しっかりと受け止めるが、勢いで3メートルほど吹っ飛ぶ。木にぶつかり、漸く体は止まった。
汚い手を使いやがって。
俺はあのとき剣を振るうのを止まらなかったら飛んできたシーファを切りつけていただろう。咄嗟に剣の軌道をずらしてもシーファの体当たりを食らうだけだ。かといって、彼女を受け止めなければならない。もう少しで俺は奴の完璧な作戦に殺されるところだったのだ。そう見ると、今回の魔物はかなり知能があると思える。
よろよろと立ち上がり、シーファの前に立つ。彼女は目を回して未だ起き上がれない状態だ。また、奴の思考にはまってしまうと危険だからシーファを囮にされないよう全力を尽くすのが最善だろう。
漆黒に染まった手は、地面へと吸い込まれていく。後ろに気配を感じ、振り向いた時にはもう遅い。シーファが心霊写真に映ったかのような何十本もある手に掴まれ、地面に引きずり込まれていく。
彼女の手を握ろうとしたが、伸ばした手先は硬い地面に当たった。すでにシーファの姿はない。
「くそ、シーファ!」
地面からの返事はない。完全にシーファを囚われてしまった。
大気感知で相手の場所を確定しようとするが、敵は呼吸1つしていない様子だ。今まで頼ってきた大気感知も使えない。それに、相手の正体もわからない、まずどこから襲ってくるのかも不明だ。それに囮だってとられている。戦況は不利に近いだろう。
「出てこいよウスノロが」
俺は挑発に出た。
「地面に引っ込んで囮をとって、その繰り返しか?チキンめ」
周りの情景は1つも変わらない。
「どうした?まだ出てこないのか?それとも挑発されたことが悲しくて地面でおいおいと泣いているのか?」
俺は嘲笑を浮かべる。
「なんだ、悔しいか?じゃあ出てこいよ。正々堂々と勝負をしやがれ、下等モンスターが。はっきり言ってな、魔王に比べりゃあ他の魔物なんてそこら辺に生えてる雑草みたいなもんだよ。分かったらさっさと出てこい。100回でも200回でも勝負してやる。まあ、俺の勝利は目に見えているけどーー」
そこまで言って俺は口をつぐんだ。前に伸びた俺の影から何かが出てくる。それは真っ黒な人だった。
そいつは姿形を整え、見事なイケメンになった。髪と目は黒く、肌は灰色に近い。きちんと服も着ているが、鎧のようなごついものはない。どちらかと言えば、ただの普段着のような感じだ。そして、顔は目しか見えない。口の部分は首に巻いたネックウォーマーで塞がれている。黒い目が、さらに黒く濁った気がした。
「人の子よ、聞け」
「うおわぁ、喋ったあ!」
「俺を下等魔物と同じにするな」
結構根に持っていたようだ。挑発の甲斐があった。
鑑定をすると、こいつは鑑定遮断も持っていなかったようで容易にできた。
カゲロウ
種族 魔人種
状態異常 なし
レベル95
HP...2800/2800
MP...1500/1500
攻撃...395+3
防御...293+4
素早さ...437
魔法...342
《スキル》
・闇球・闇刃・黒煙・黒渦・暗黒星雲・気配感知・気配遮断・クイック・パワー・シールド・MP自動回復
《ユニークスキル》
・影入り
《称号》
・影の術者・強者殺し・村山和樹の配下・魔王の配下
前の話で和樹とのフラグを立てたのでこれからはどんどん絡ませていきたいです。




