第7話 差別は許さん!
……ここは?
ガバッと起き上がると、まずは現状確認をした。今悟が居る場所はひんやりとした横洞穴の中だった。地面には柔らかい葉が敷かれており、自分自身に怪我はない。一応、ステータスを確認しておこう。
サトル・カムラ
種族 人間種
状態異常 なし
レベル7
HP...125/125
MP...48/270
攻撃...56
防御...52
素早さ...63
魔法...81
《スキル》
・成長 ・鑑定・火魔法・風圧感知・言語理解
《ユニークスキル》
・変化
《称号》
・神に気に入られた者・感知ができないただの馬鹿・怒ると怖い
レベルが1上がっている。人間殺しても上がるのか。あの後すぐに気を失ったから女性の声を聞き逃したな。後MPが少ない。きっと、魔力切れを起こして倒れてしまったのだろう。称号も変なのが増えてるが気にしない気にしない。
ん?魔力切れ?
慌てて体を確認するが、熊の手はなくそこにあったのは人間の手だ。身長も元に戻っている。変化が解けてしまっていた。
ここにいるってことは、誰かが運んでくれたはず。そいつに見られたのか?よく殺さずにいたな。俺だったら悲鳴を上げて逃げてるか殺してるかの二択だぞ。
運ぶか……あの美女しか考えられんな。それに、意識を失う際に見たが、あの子獣耳だった気が……。
風圧感知でかすかな空気の揺れを感じ取り、その方向へと顔を向けると思った通りの獣耳の女の子が籠の中にたくさんの木の実を入れたままこちらに顔を向けた。数秒間目があう。最初に口を開けたのは、少女だった。
「よかった!目を覚ましたのですね?あの時はありがとうございます!私がうっかり口を滑らせてしまったせいで……」
「ああ、大丈夫だ。俺は自分がしたかったことをしただけだからな」
モンスターのことには触れなかった。その方が悟にとってもありがたい。
「も、申し遅れました。私、シーファと言います」
「俺はサトル・カムラだ」
「ええ⁉︎名字持ちですか?どこかの貴族なのでは……」
「ごめん間違った。サトルだ。サトル」
「ビックリしましたよ〜。冗談はよしてくださいよ。もぅ!」
頬を膨らませている。可愛い。シーファはアッと声を上げて籠の中のいっぱいに入った木の実を見せた。
「ここら辺で取ってきたのです。元気をつけてもらうためにも私が腕を振るいますよ!」
シーファは鼻歌交じりに洞穴から出て行った。
「あ……」
サトルはシーファの背中に生えている翼の存在に気がついてしまった。普段はたたんでいるのか、正面からは見えないのだが後ろを向いた時にはその純白の翼が丸見えだ。ただの獣人種ではない?
「ああ!私ったら……。すいません……。私、これのせいでみんなから異端って言われて……。こんな見たことのない生き物、信用できないですよね……。わ、私を助けていただきありがとうございました!このご恩は一生忘れませんから!」
そのまま立ち去ろうとした彼女の後ろから呼びかける。
「俺は変とは思わないけどなー」
「……え?」
よほど驚いたのか、口を開けて唖然とするシーファ。俺は苦笑しながら言う。
「それもそれでお前の魅力だ。1つも変じゃない。逆に、俺は好きだな」
「……」
シーファの動きが完全に止まる。まるで、息もしていないかのようだ。
「獣人であり、翼もある。それって結構かっこいいだろ?俺的にはアリだと思うぞ?」
俺はシーファに近づく。
「もっと自分に自信を持て。俺は、差別が嫌いだ。例えそれが自分自身に向けられていたとしてもな」
「……ありがとうございます……私を救った挙句、心まで励ましてくれるなんて……嬉しいです。すごく嬉しいです。しかしーー」
そこでシーファは言葉を詰まらせた。目を潤ませている。
「差別を無くそうとサトルがどれだけ叫んでも、人間にも届くかどうかわかりませんし完全に人間たちを敵対視している獣人たちにも届きません。私はあなたから助けてもらったので、サトルを殺したりはしませんが……」
「そんなものーー」
シーファが顔を上げる。俺はその肩に優しく触れた。
「そんなもの、俺が覆してやる」
「…………」
俺は優しく笑った。
「自分を嫌いになるな。それは人として終わっている。いや、獣人か?ま、どっちでもいい。変わりたいなら俺と一緒に来い。人生をーー未来を変えてやる」
「うっ……サトル……」
その日、俺の仲間にシーファが加わったのは言うまでもないことである。
いいところなんだけどこれチョロいって言っていいですかね?