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第66話 ハカイの破壊

 ハカイは高く雄叫びをあげた後、俺に向かって走る。その特徴は、手のかわりにある大きな翼。翼の先端に爪がついてある。そして、一番目につくのは本当に長い尻尾!こいつは縦で俺と同じ身長くらいなのだが、尾は邪魔なくらい長い。目測だと5メートル。しかも引きずらないで歩いている。


「ガアアァァ!」


 高くジャンプをして、くるっと縦に一回転。あ、それヤバイ。


 右に飛び退くと、先ほどまで俺がいた場所に大きい尻尾が当たった。地面が揺れ、大きく陥没する。さらにその衝撃から地面にヒビが入り、ボロボロと崩れた。下は奈落の底となっている。あそこに落ちれば、命はないだろう。ま、俺たちは飛べるが。


「流石ハカイという名だけあるな……」


 冷や汗をかきながら呟く。


 ハカイは着地する前に羽ばたき、空へ舞い上がった。


 俺は火球を放つが、難なくかわされてしまう。シーファが風圧変化で軌道を変えてもダメだった。いや、むしろ火球で攻撃が通るのかわからない。


「グオオォォォォンッッッッ!!!」


 俺は火球を放つ。上手くハカイの身に当たったが、全く動じていなかった。奴の体に当たった瞬間、火球が吸収されていくかのように消える。何が起こっているのか、俺にはわからない。


「グオオォォォォンッッッ!」


 ハカイが鳴くと、その頭上に丸い赤い球体が現れた。直径は50メートルほど。燃えているわけでもなくただただ赤い球体だ。いやでかすぎんだよ。


 てっきり投げてくるかと思ったが、違った。一本の赤い光線が丸い球体から出てくる。俺たちの方を向いてはいなかったが、地面から遠い水平線まで焦がして行った。あれに当たったら俺でも死ぬだろう。だが、命中率がなかったのは幸いだ。これで安心してーー。


 顔が引きつる。今度は、4本同時に光線が出た。無差別に当たりを焼いていく。俺が一番嫌っているのは無差別攻撃だ。どこから襲ってくるのかわからないし、急激に動きを変換するため攻撃の推測が難しい。これが、その例だ。


 さらに、4本の光線はまた違う場所を焦がして終わりかと俺たちは悟ったが、また違った。光線は遠くまで焼き尽くし、右に移動した。そして、違う光線は左に、といった感じで全てを焼いていく。その回転速度はミラーボールのようだ。ミラーボールの光が別々の方向に動いている、みたいな感じ。


 遠くで立て続けに爆発が起こり、その衝撃が大地を揺るがした。これが、ハカイだ。全てを破壊し、この世を壊す。


 赤い球体から光線がまた10本追加される。ついには俺たちの方まで来て、悟の右すれすれをかすめていった。それだけでも身体中が熱い。


 一瞬の間に炎の地獄と化したチノ大草原。ハカイは赤い球体を俺たちに投げた。結局投げるんかい!


「小僧、あれはやばイ。逃げたとしても爆風でやられるゾ」


 ミライに気を任せたのか、シーファの口が動いた。


「オレの力を貸してもわからなイ。これじゃあ、全員お陀仏だぞ、小僧!」

「そう言われたって、俺には何も考えが浮かばないんだよ!」


 赤い球体は迫る。とつつもない熱さが体を襲った。思わず身をよじる。


「くっ……」


 もう、ダメだ。


 全てを諦めた時、澄み渡った声が響いた。


「《氷結結界アイス・バリア》」


 俺たちの前に小柄な人影が滑り込む。


「・・・ミィトさん!?」


 元に戻ったシーファが叫ぶ。彼女はローブを羽織ってなかった。だから、ミィトには翼と獣耳が丸見えだろう。しかし、今はそれを気にしている場合ではない。


「よし、急ぐぞ」


 ミィトが言う。どうやら今の人格は強気の男性のようだ。俺は礼を言う。


「そういうのはいらないから早くしろ。あの結界もいつ壊れるかわかんねーんだよ」


 ツインテールの髪の毛をいじりながらいうミィト。その割には、緊張感が感じられない。


「ああ、わかった」

「話が早くて助かる」


 氷結結界のおかげか、辺りの気温が下がっているような気がする。熱さもずいぶん和らいでいた。


「わん!」

「シロ……?なんでシロが?」

「だからそれは後でだ。無駄な話はいい」


 俺たちはなるべく離れるために走る、走る。俺とシーファが走っている間にミィトは舌打ちをしながら俺たちのペースに合わせてくれていた。


 シーファはシロに小さく囁く。その声はシロ以外誰にも聞こえない。


「助けに来てくれたのですね?」

「わう」


 シーファは微笑む。と、後ろから轟音が響いた。結界が破られたのだろう。


「ゴガアアアアアアァァァァァァ!!!」


 怒りの混じった咆哮が響く。大気感知ですぐそこまで迫っているのは感じ取れた。かなり距離を取ってあったのに、ここまで速く追いつかれるとなんだか拍子抜けする。


「しゃがめ、お前ら!」


 ミィトの声に従い、俺たちはしゃがむ。頭上をハカイが通り過ぎて行った。


 後ろから音が聞こえるので振り返ってみると、ハカイの長い尾が地面を削りながら向かってきていた。前面には棘が生えていて、刺さると致命傷を追うことは明確だ。


 右にはシーファがいる。俺は左に飛びのいた。しかし、その先で待っていたのはハカイの爪。逃げようとしたが、ハカイは長い尾を利用して、俺を囲んだ。


「ぐっ……」


 腕をかする爪。ジュッと音がして俺の肉が露わになった。


「酸・・・か」


 マズイ。非常にマズイぞ。こいつ、マッハトカゲと同じスキルを持っていやがる。


「わう!ぐわあ!」


 シロがムクムクと大きくなる。あっという間に雷獣へと姿を変化させた。そして、ハカイに雷を落とす。今のシロではダメージこそ与えられないが、予想外の攻撃にハカイは一瞬だけ気を緩めてしまった。そこでシーファの闇球がハカイの尾にあたる。俺はその隙をついてジャンプをし、靴の効果で宙をかけた。


 ハカイが作った円から離れ、また走る。奴は追いかけてきたが、スライディングで小さな入り口から出るともう追いかけてこなくなった。

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