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第65話 決着

 俺が剣を構えるが、マッハトカゲは動揺した様子もなくあの動きを繰り返していた。右、左、右、左。いつ来るのかがわからない。攻撃する時に動作が大振りになるとかそういうのもないため、俺では見極められないのだ。


 ヒュッと風を切る音がして、風刃が飛んできた。マッハトカゲはギリギリまで風刃を引きつけておいて手でそれを跡形もなく切断する。シーファは息を飲んだだろう。


 しかし、今を攻撃しなければチャンスは訪れないと思った俺は、仕掛けにいった。


 斜め下から切り上げるように剣を出す。それに気がついたマッハトカゲは後ろへ大きく飛びのいた。だが、そこを狙う。空中にいるなら身動きができないと踏んだ俺は突きの形へと構えを変換させた。鱗に剣が当たるが、とてつもない衝撃で俺の手は痺れてしまう。肝心のダメージは与えられてなかった。鱗1つ怪我していない。


「ギュイイイイ!」


 攻撃を受けたことが悔しいのか、怒りの声を上げるマッハトカゲ。俺はミストバードに変化した。


 そして、マッハトカゲが見たのはーーシーファだった。


「ーーまずい!」


 そう思ったのもつかの間。マッハトカゲは跳脚し、一瞬のうちで空にいるシーファの目の前までくる。


「かかりましたね!」


 シーファが笑う。俺は彼女に何か作戦があるのだと悟る。



「これをくらエ!

 これを受けてみなさい!」


 シーファとミライの声がかぶる。彼女の片方の目は黄金に、片方はシーファの元の色の黒で光っている。


 シーファは詠唱なしに魔法を放った。漆黒に染まった光線がマッハトカゲの腹にあたる。貫通こそしなかったが、かなりのダメージを与えられただろう。


「シーファ、ナイスだ!」

「お安い御用です」


 マッハトカゲは地面に落ちる。しかし、空中で態勢を整えて普通に着地した。


「ギュルア!」


 奴が俺の方向を振り向くと同時に、襲いかかってくる。姿が消えたと思えば、大気感知で後ろから爪が迫っていると感知できた。相手のスピードは異常なので、剣を後ろにやることもできない。俺は翼をはためかせて上昇した。


 ジュウウ・・・。


 今の音は・・・?


 下を見ると、地面がわずかながら溶けている。マッハトカゲの爪から液体が流れ出していた。


 なんだ、あれ?毒か?


『強力な酸です。触れれば溶けてしまうでしょう』


 げっ。まじか。ついに相手も本気を出し始めたな。


 マッハトカゲにシーファの追撃が入った。黒い光線が襲うが、華麗に避けていく。俺の方までくるとシーファは打つのをやめてしまった。俺に当たるのを恐れたからだろう。


 マッハトカゲが爪を振るう。悟は右に避けたが、先ほどまでいた場所の地面が溶けて陥没してしまった。


 必死の攻防。だが、俺は押されていた。酸に当たれば体が溶けてしまう。ミストバードの姿だったらどうなるかわからないが、当たらないほうがいいだろう。


 そしてーー俺はマッハトカゲの攻撃した後の一瞬の隙を突いた。


 水刃で攻撃をする。そして、変化を解いて剣を振るった。


 変化を解いたのがいけなかった。マッハトカゲは俺よりも速く一回転をし、その尾を鞭のようにしならせた。


「・・・ぐっ!?」


 速さについていけなかった俺は、腹に衝撃を覚えて後ろに吹っ飛ぶ。5メートルほどゴロゴロと転がったところで顔を上げると、マッハトカゲは大口を開けて俺をかみ砕こうとしていた。


 すぐにルーゲラフラワーに変化し、毒の煙を口の中に放出する。案の定、マッハトカゲはむせた。口の中に毒の煙を入れられたのだから仕方がないだろう。


 そこから俺は目潰しに積極的に向かった。目を潰せば俺たちのことが見えなくなり、その速さも無意味と化すだろう、と推測したからだ。


 マッハトカゲはそれを嫌がった。今度は守りを固めてすきあらば俺に攻撃してくる。ここで俺の放った火球がまっすぐマッハトカゲの目に行った。しかし、爪で切り裂こうとする。そこで火球の軌道が変わり、片方の目に直撃した。


 爪がからぶった挙句、目まで潰されてしまったマッハトカゲは一度咆哮を上げる。これが王者の咆哮だろうが俺にはなんともない。シーファはどうだか知らんが。


「シーファ、やるぞ!」

「わかりました!」


 俺たちはマッハトカゲの視界から消え、詠唱を始める。マッハトカゲは急にいなくなった俺たちに困惑し、誰もいないところをキョロキョロと眺めていた。チャンスは今しかない。


「《偉大なる光の精霊よ、闇を退け世界をその光で満たせ》」

「《偉大なる闇の精霊よ、光を退け世界をその闇で満たせ》」


 準備は完了する。俺たちの声に気がついたマッハトカゲはこちらへ向かってきたが、もう遅い。


「聖柱」

「邪柱」


 2人の放った魔法は地面に魔法陣を描き、一瞬にしてマッハトカゲを呑み込んだ。白と黒が合わさり、閃光を散らしながら竜巻を造る。マッハトカゲはもがき、断末魔のような悲鳴をあげてその命を終えた。


「よし、討伐成功だな」

「今下記は骨が折れましたね〜。あ、ヒールかけますよ」


 俺の体力が治っていく。そして、マッハトカゲの素材をとった。幸いなことに全ては焦げなかったので討伐部位は回収できる。よし、これで違約金を取られずに済む。


 討伐部位をアイテムボックスにしまうと、尋常ではない殺気を感じた。それは後ろからだ。振り向くと、大草原に一本ポツンと生えた大きな木の上に何かが立っている。そいつは赤く目を光らせていた。


 グガアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!!


 地も揺るがすような大きな雄叫びに、俺は地震が起きたのかと勘違いをしてしまった。


 木の上にいた奴は飛ぶ。いや、飛んではいない。()()()()()()()


 そして、その魔物は翼と思える拳を前に突き出す。俺たちが危険を感じ、下がったところで10メートルほど先にそいつが拳を打ち付けた。ドンっと地面が大きく陥没し、小石が宙を舞う。


 なんなんだ、こいつは。


 感じただけでわかる。こいつは、マッハトカゲよりもワイバーンよりも強い何か。


 バチィ!


 鑑定をしたところで弾かれてしまった。鑑定遮断を持っているらしい。


『ハカイ。昔、すべてを破壊したことでその名が授けられました。しかし、1人の術者がこの地に封印したといいます。そのお陰で、人を恨んでいるという噂が立っています。戦闘へ挑む人のおすすめランクはSランクが20人ほどです。この世界にはSランク3人しかいませんけど』


 ムリクネ?なんでここそんな強い奴がいるの!?


『チノ大草原は強い魔物がたくさんいるとのことで、この大陸の三大ヤバイ場所とも言われています』


 あ、おわた。ちょ、逃げるか。


「ガァアアァァァァァァァ!!!!」


 ですよねー。許してくれませんよねー。


 そうしてハカイは襲いかかってきた。

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