第62話 依頼を受けよう!
「……ル!サトル!」
シーファの叫び声で目を覚ました。俺は丸まった体を伸ばす。胸の中で何かが動いた。
「くぅ〜ん」
それは布団から顔を出し、健気に鳴いた。
「か……可愛い!」
シーファがキラキラと目を輝かせ、シロを見つめた。そのまま放置しておいたらすぐに抱きついてしまいそうだったので、俺は一度確認ををしておく。
「シロ、シーファは仲間だ。これから仲良くしてやってくれ」
「わう」
了承の声を貰ったところで、シロはシーファの場所までジャンプして飛んで行った。シーファはシロをキャッチして、頬をスリスリする。シロの方も甘えた声を出していた。もう懐いちゃったのかな?俺に懐くにはかなり時間がかかったのに。
そうだ、シロのステータスって見れるのかな?
シロ
種族 犬種
状態異常 なし
レベル1
HP...2/20
MP...3/3
攻撃...6
防御...1
素早さ...5
魔法...2
《スキル》
・噛み付く・追跡・嗅覚・言語理解
《ユニークスキル》
・雷獣化
《称号》
・サトルのペット・頭がいい・雷獣の力を秘めた者
「シーファ、回復してやってくれ」
最初にステータスを見たときは、俺はシーファに回復を求めた。だって、HP2だよ?すごいギリギリだね。
淡い光に包まれ、シロは全回復した。これで安心……できるかあっ!
雷獣ってなんだ、雷獣って。なんかヤバげなユニークスキルちゃっかり持ってるじゃないか。
鑑定さん、雷獣ってなんだ?
『雷獣とは大陸ごとに一体ずついる神獣のようなもので、いずれ雷獣が死ぬと、その大陸にいる犬種の誰かがユニークスキル持ちで受け継ぐことになります。それがシロの例でしょう』
ええ!?ならシロ超凄いじゃん。運やばいんじゃ……。
「なあ、雷獣化ってどんなやつなんだ?見せてくれ」
「わぐ!」
完全に俺の言葉を理解することができるようになったことで、会話が楽になった。シロはシーファから離れて華麗に床へと着地する。そして、シロが力を込める動作をすると、黒い煙が出て彼を包んだ。煙が晴れるとそこにいたのは身を屈めて天井に頭をぶつけないようにするシロ(?)だった。
体には黄色の模様が浮かび上がっていて、頭には鋭い角一本。それに鉄でも食いちぎりそうな牙。身長は俺よりもはるかに高く、圧倒的威圧感を出していた。
「こ、これがシロ……?」
シーファが呟く。まあ無理もないか。
「か、かっこいい!」
今度はそっち!?俺だったらシロが味方じゃなかったら完全に怖い方に移ってたけどな。
「くう〜ん」
すると、また今度は白い煙に包まれて元の姿に戻った。シロはぐったりしている。ステータスを見ると、魔力が切れていた。これは魔力を消費するらしい。俺の変化と一緒だ。
俺はシロを抱きかかえると、そっとベッドに寝かせた。寝息をすぐ立てて眠り始めるシロ。このままそっとしておいたほうがいいと俺は判断する。
「さあてと。これから何するかな」
予定など何も考えていない。シーファに視線を送ると、パッとひらめいた顔になった。
「どこか簡単な依頼にでもいきませんか?ちゃちゃっと終わらせて少しでもお金を稼いだほうがいいと思います」
「ああ、そうするか」
俺とシーファは部屋を出て、下の依頼ボードの場所まで歩いて行った。
「あ、サトルさん」
受付嬢に呼ばれ、俺はカウンターまで行く。
「ランクアップおめでとうございます。今日からCランクですよ」
水色に変わったギルドカードを受け取り、俺はお礼をする。そして、また依頼ボードの前に並んだ。今ではBランクの依頼も受けることができる。
Bランクは・・・うん。強い魔物ばっかりだな。俺は魔物図鑑をほぼ読み終わるところまできたから魔物の情報は片っ端から記録している。はず。
「これはどうでしょう?」
シーファが持ってきたのはDランクの依頼で、マッハトカゲを討伐というものだった。依頼は1匹の討伐だけだったのでちょうどいいだろう。
そうして俺たちは、マッハトカゲを狩るべく外へ出た。つい先ほどまでいたギルドの中で、何が起こっているのかも知らずに。
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「おい!ここにあったマッハトカゲの依頼紙どこへ行った?」
1人の男が声をはりあげる。すぐさま受付嬢が答えた。
「男女ペアのチームが持って行きましたよ。どうされたんですか?」
「あれ、俺の印刷ミスでよ。間違えてDランクにしちゃったんだ」
「本当は何ランクの討伐依頼なのですか?」
「・・・Aランクだ」
その場が静まり返る。Aランクの依頼で、1匹だけの討伐ということは相手はかなり強い。Aランクの冒険者でも苦戦をするのに、今日Cランクになりたての人たちに倒せるだろうか。
「馬車は用意できているか?」
「すいません。全部冒険者たちに貸していて……」
「くっ、くそおおおおお!俺の給料が減らされるじゃないかあああああ!もし死んだとしたらクビになるかもしれねぇ!あああああああ!」
叫び声をあげたところで、男は落胆する。花が萎れたようにゆっくりと椅子に座り、そのまま突っ伏せてしまった。
「……どうしましょう?」
ただ1人、受付嬢はサトルたちの無事の帰還を望んでいた。
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「ええっと……あ、ここからだな。チノ大草原」
名前から物騒なのだが、気にしないでおく。
チノ大草原の入り口は見ただけでわかる。大きな鉄格子で囲まれていて、その鉄格子には電流が走っている。しかも強力な結界まではられていた。入り口は小さな穴があり、そこから入れた。
目の前に広がるのは、ただの草原だった。何もない平和な感じ。しかし、ここに強力な魔物がいるとは今の悟たちは思いもしなかった。
こっちの世界でも言語理解があるのでお手とかは伝わります。




