第6話 渾身の一突きぃ!
俺はルーゲラリトルベアーに変化し、ステータスを確認する。
サトル・カムラ
種族 人間種
状態異常 変化
レベル6
HP...120/120
MP...259/260
攻撃...52
防御...48
素早さ...60
魔法...73
《スキル》
・成長 ・鑑定・火魔法
《ユニークスキル》
・変化
《変化時スキル》
・渾身の一突き・遠吠え
《称号》
・神に気に入られた者・感知ができないただの馬鹿
おおお! かなりステータスが上がってるな! これならスライム相手にも苦戦しないだろう。
それにしても変化したばっかなのにもうMPが減ってる。大きさとかで消費MPが変わるのだろうか。
さて、スキルを確認していこう。
渾身の一突き
手に魔力をためることによって渾身の一突きを食らわせる。このスキルを使うと、使い手の得意属性を手に宿すことができる。
強いな。俺が前やったみたいなことか。これ変化しないで生身で繰り返してたら覚えられるんじゃないか?今度から練習してみよう。
遠吠え
自分よりも低級モンスターを怯ませることができる。だが、この声によって強力なモンスターや冒険者がおびき寄せられる可能性もある。
これは外れスキルと見ていいだろう。でも、レベル上げには使えるかもしれない。しかし、多少のリスクを負って経験値を稼ぐか、ゆっくり気ままに経験値を稼ぐかといったら俺は後者を選ぶ。これはあまり使わないかな。
「っ!」
変化を解こうとした時、首をあたりに風圧を感じ、咄嗟にしゃがんだ。すぐ頭上を何かがかすめていく。
『スキル風圧感知を獲得しました』
なんかゲットしたぜ。でも今はそれどころじゃないぜ。
すぐ前に落ちた、地面に刺さったものを見つめる。矢だ。それも人工的な。
「+++++++」
声が聞こえる。英語でも日本語でもない。
『スキル言語理解を獲得しました』
おお、来た。なんか最近イージーモードだね。あのルーゲラバイガルに襲われてから言える言葉じゃないけど。
「こっ...だ!こっちにいたぞ!」
ん?誰がいたの?
すぐ真横に矢が突き刺さる。
俺ですねー。分かってましたよー。そんなに美味しそうに見えるかー。って、まだ変化解いてなかったんだ。
今度こそ変化を解こうとすると、草むらから人間が現れた。
「ルーゲラリトルベアーだ!しかも親はついてない。ラッキーだな!」
男は弓を持っている。こいつが矢を打ってきたのだろう。ってなんやかんや人間と会うのは初めてだな。緊張する。まあ、相手に敵意があるのならこっちもこっちだが。
まずいことになった。ここで変化を解いても変に誤解されかねない。面倒ごとは嫌だ。なら1つしか選択肢はないだろう。
N・I・G・E・R・U
だっと走り出した俺に向かって矢が飛んで来る。
それを新しく手に入った風圧感知で易々と避け、目の前の草むらにダイブしようと足に力を入れる。だが、その草むらから新たな人が出現した。
その人は剣で横切りを放ち、すると剣の軌道と全く同じ形の発光する刃が出てきて、俺を襲う。なんとかギリギリで避けるが、2人の男はじりじりと距離を詰めてくる。
「久しぶりの食料だ。大人しく捕まってくれや」
1人が弓を、1人が剣を構える。もうこの際殺しちゃっていいかな? さっきステータスみたけど全部の平均30ぐらいだったぞ。人を殺すのには抵抗があるが、身を守るためなら仕方が、ない。渾身の一突きの実験台になってもらおうか。
こちらも態勢を整えると、相手はニヤリと微笑んだ。ルーゲラリトルベアー1匹ごときで勝てるとは思ってもいないのだろう。
「はああああ!」
剣を持った男が気合いの雄叫びを出す。その時、他の声が被さった。
「もう、止めてください!」
ん……? 女性の声……?
「あ? なんだ嬢ちゃん。俺たちの食料はやらねえぞ?」
「違います。もうモンスターを殺すのはやめてって言ってるの、わからないんですか? またそうやってモンスターを解剖して実験に失敗したらポイ。さっきから勝手な嘘ついて、私、わかってるんですから!」
男たちに食ってかかったのは俺と同じぐらいの年齢の美女だった。
「チッ。それを他言したら……わかってるだろうな?」
剣の男がヅカヅカと近づいてその喉に剣の先端を押し当てる。
一筋の血が美女から垂れた。
「…………」
この人は、俺を守ってくれた。だが、俺一人でもこの事件は解決できた。ぶっちゃけ、来なくてもよかった存在だ。
しかし。
単純に、自分を守ってくれた人を襲った奴らが許せなかった。彼女の心に悪意はない。だが、女性の言葉を信じるのであればこの男どもはその対極にある。
そして、女性には嘘をつく理由がない。俺は今魔物だし、風圧感知で他に聞き耳を立てている人がいないのも確認済みだ。つまり、真実。
それに、モンスターを解剖するって? それを捨てるだと? 生き物を殺す時はそれなりの覚悟がいる。この男どもにはその覚悟がないってことだ。つまり、命を軽く見ている。
前に出た俺を見て、弓の使い手は矢をつがえて素早く弓を引き絞った。
「まずはこいつを殺す。お前については後だ」
矢が放たれるが、神経を集中させた俺には遅い。ジャンプをし、軽々と避けると遠吠えを上げた。
完全な格下ではないため、スキルの効果は発動しなかったが、単に怯ませることはできた。急に反撃したからビビっているのだろう。弓を持ったまま唖然としている男の顔を前まで一気に移動し、小さく囁く。
「小物にやられる気持ちはどうだ?」
「しゃべっーーがあ!」
男の顔面を足で蹴る。爪が皮膚の中にめり込み、男は派手に倒れた。
男の顔を踏み台にし、もう1人の方へと迫る。
「ひぃ!」
男の剣を持つ手に力がこもるのが分かった。その先端は、相変わらず美女の首につけたままだ。
「させるか!」
拳を後ろに引き、魔力をためる。
渾身の一突きッ!!
拳は剣を粉砕させ、それだけには止まらず男の顔面にめり込んだ。
属性付与! 炎!
拳が燃え上がる。男は悶え、顔を黒くしながら先ほど倒れた男の上にかぶさった。
さて、どうするか……。
怒りに体を任せていたせいか、不思議と躊躇は感じなかった。罪悪感もない。人殴っちゃったなー、って感じだ。
俺が女性の方へと目を向けると、彼女はビクンと体を痙攣させた。
まあそうだよな。こんな1匹の低級モンスターが……人を殺し……あれ? 眠く……なって……。
そこで俺の意識はブラックアウトした。
少し長め




