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第53話 ギルドの宿の中で

「全く雰囲気が違いましたね」

「そうだな」


 俺とシーファは、ミィトと別れを告げて今はギルドの宿にいる。明日、キュラサがここに迎えに来てくれるはずだから、そこで一緒にエルシャルト国に帰ればOKだ。……誕生日パーティーとかで酔いつぶれてないといいけど。


「そうだ、シーファってあんな魔法使えたっけか?」

「私は使えませんが、ミライが力を貸してくれたのですよ。ミライは鑑定と闇魔法を持っているので、私も共有しているのです。鑑定遮断も、そのうちの1つです」


 ミライって結構強いんだな。まあルーゲラビートルの角を一回の攻撃だけでへし折るぐらいだし。


「鑑定遮断ってどんな人が鑑定をしても防げるのか?」


 一瞬首を傾げたシーファだが、少し経って答えが返ってくる。


「基本的には、レベル差がかけ離れていると鑑定を使えないのですが、名前や種族、状態異常とレベルまでは見えるそうです。ですが、鑑定遮断を使うとどんなに相手が強い敵だろうと鑑定をさせないというメリットがあるんですよ」


 いいなあ、それ。俺も欲しい。


 ん?待てよ。何か引っかかるんだよなぁ。


「ですが、鑑定遮断をしている人にはデメリットがありまして……。それは、攻撃を受けた時に鑑定を防げなくなるのです。……と、ミライが言っていますね」


 あれあれ?攻撃?鑑定……?


 あ。


 わかった。ルーゲラバイガルだ。あいつのステータス、鑑定しても何も見れなかったんだよな。それに、攻撃を加えた後は少しだけ見れたし。これは決定的な証拠だ。あいつのスキルの1つを分かっただけでも嬉しいぞ。ルーゲラバイガルは、鑑定遮断を持っていたんだ。


「それにしても、私とサトルの合体魔法は良かったですね!あの龍を焦がしてしまいました」

「本当にそれは俺もすごいと思ってるぞ。聖柱の反対の邪柱を扱えるなんて、やるじゃないか、シーファ。鑑定にも正式スキル登録されたし、レベルも上がったし、今回はいい戦いだったな」

「もう、死にかけてたくせに何を言うのですか?」

「はは、俺はあの時シーファが助けてくれると信じていた」


 キラッと星が出る感じでウインクをすると、シーファはムッと頬を膨らませた。ああ、可愛い。


 しかし、その顔は急速にしぼみ、今度はしょんぼりとした表情でシーファは俯いた。


「カズキに、私の正体がバレてしまいました……。あの人が、他の人にこのことを言いふらさないか心配です」


 でも、シーファの姿は一度見ているんだよな?なんで気がつかなかったんだろ。幼少期と今の体じゃあ全く違うから?いや、でも特徴的なシーファのことを覚えていないなんておかしすぎるぞ。これは何か裏があるような……。って、深く読みすぎてもダメだし、心の中にこのことはしまっておこう。


「……ミィトさんは、本気なのでしょうか?」

「んん〜。あの目を見たら、本気だろうな。こっちにも殺意が伝わってきたし」


 それは確かだ。殺すという言葉を発した瞬間、ミィトからは膨大な殺意があふれ出た。俺でも身震いしてしまうほどだから、通常の人間がその殺意を食らったら倒れてしまうかもな。でも、シーファは大丈夫だった。一度ブルリトはしていたが、後は平気そうに立っていたのだ。俺も同じ感じだったが、ミライの力を借りただけでここまで成長するとはなぁ。俺は嬉しいぞ。


「シーファ。俺から提案がある」

「なんでしょう?」

「カズキを殺したら、ミライの未練はなくなる。そうしたら、シーファを乗っ取る仕事に移るだろ?」

『その通りだ』


 俺の言葉を後に、聞き覚える声が重なる。しかし、その言葉は前よりも上手く発音ができていた。……ミライだ。彼は、シーファの横に現れ、地面に着地する。床が抜けるかと心配したが、大丈夫だったようだ。ここの床は思ったより頑丈に出来ているらしい。


『その小娘が、カズキを殺す。そうすれば、オレは体を乗っ取る。いい交渉ダ』


 俺は何も言えない。なぜかというと、これはシーファの問題だから。シーファという当の本人もこの案で納得しているようだし、俺は何も言うことがないのだ。


「決めるのはシーファーーお前だ。まだまだ時間はたっぷりある。じっくり考えてくれ」

「はい。分かっています。でも、もう決めたのです」

「そうか……」


 シーファの意識が乗っ取られる。それは、シーファという人物がいなくなるということだ。姿形は一緒だが、中身は全く違う。それは、別人ととっていいだろう。もう、彼女には会えないということが分かってしまうことは、悲しみというものを生み出した。


「ミライ。お前は、そんなに和樹を殺したいか?」

『殺したい。俺の大切な人を奪っタッ!』


 彼の憎しみも深い。そして、シーファもだ。2人の意見は一致している。俺は1つ頷く。


「ああ。俺と一緒に、来てくれるか?もっとも、少しだけだと思うがな」

『しょうがないな。そこまで言うならついて行ってやる。だが、オレは小娘の言うこと以外は最低限聞かないからナ。そこがわかるのなら、ついていく』

「当たり前だ。もう、仲間だろ?」

『……そう、だナ』


 ミライの前足と、俺の拳を合わせる。ここに、世にも奇妙なパーティーが結成した。


「すいません……。私と、世界最強になると約束したのに、可笑しなことをしてしまって……」

「いいんだ。それがシーファの決断なら、俺はその意見についていく。困った時はお互い様だ。いつでも頼ってくれ」


 俺は本心でできた偽りのない笑みを浮かべた。


「サトル……。ありがとう、ございますっ!」


 本当に幸せそうな表情を浮かべ、シーファが抱きついてくる。


 …。いいんだ。シーファの、決断なんだ。


 俺は心の中のもやもやした気持ちを振り払うかわりに、シーファを優しく抱きしめ返した。

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