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第49話 龍

 何かが高く雄叫びをあげた後、一瞬にして俺の視界は暗くなった。いや、違う。俺の前に立ちはだかっているのは龍だ。


 体は真紅のように赤く、目は黄色に光っている。頭には角が二本。そして、大きな翼がここら一帯に影を作っていた。シーファが息を飲んだのがわかる。


「グオオォォォォーーーーーーン!」


 もう一度、先ほどよりも大きく咆哮をあげると俺たちに襲いかかってきた。そのスピードはとんでもなく速い。きっと、俺よりも速いだろう。


「くっ……」


 完全には避けきれず、ガードを作った右腕がえぐられる。そこから痛みが広がった。龍の爪から紫色の液体が出る。それがシーファを襲ったが、彼女は上手くウォールバリアで防いだ。


「今度は私です!」


 ウォールバリアが砕け、シーファが気合の声を出すと、彼女の周りから黒い光が現れた。その光はシーファの手に集い、黒い球体を作る。


「闇球!」


 詠唱なしで発射された黒い球は、龍の体にあたって鱗に傷をつけた。そこから衝撃波と熱風がくる。攻撃力はかなり強いみたいだ。やるじゃないか、シーファ。


「私とミライの合体技です!」

「よし、よくやった。次は俺がやる」

「一応回復しておきます」


 俺の腕をほのかな光が包み、腕の傷は塞がった。完全ではないが、問題なく右腕を動かせるようになる。ナイスだ。


 悟は地面をかけ、龍の繰り出す爪攻撃を避けて空中へと舞い上がった。空中だと身動きができないと踏んだのか、龍は爪を振るう。俺は靴の効果で宙を踏み、さらに上まで上がった。攻撃がから打った龍に隙ができる。ここだ。


 変化をし、ルーゲラベアーになる。そこからの地獄突き!


 落下速度に加え、とんでもない破壊力を誇る地獄突きは今の俺に出せる最強の技だ。これが一番簡単で、すぐにできる。


 俺の拳が龍の鱗に迫る。これで当たったら、かなりの大ダメージを与えられるだろう。しかし、攻撃を与えれればの話だが。


 龍は尾を振るわせ、その尻尾についた棘を飛ばしてきた。もちろん、空中では身動きをできないし、ルーゲラベアーに変化している状況だと靴が使えない。要するに裸なのだが……。そこは気にしないでくれ。


 棘が俺に刺さると思ったが、棘は俺を避けて背後の木に突き刺さった。大気感知のおかげで、シーファが作り出した人工的な風が棘の軌道を変えたとわかる。


 俺はそのまま龍に突っ込み、鱗に地獄の一突きを食らわせた。龍の鱗から血が吹き出る。かなりダメージを食らっただろ。


 龍に拳をぶつけた反動で後ろへ飛び、シーファの場所まで戻った。


「サトル、大丈夫ですか?」


 気がつくと、俺の手からも血が出ている。俺は変化を解き、シーファに治療をしてもらった。ヒールは、基本的に魔物には効かないため俺も変化を解かないといけないらしい。これは欠点だな。


「グルルゥゥゥゥ」


 龍は唸る。そいつからは、今まで以上の殺気が溢れ出ていた。俺はまた相手から攻撃されないうちに鑑定をする。


 リンゴ

 種族...龍種

 状態異常...なし

『ステータスがかけ離れているため、他の情報は取得できませんでした』


 ……は?リンゴ?リンゴってあれ?日本にあった赤い果物。え?じゃあ、名付け親は……。


「サトル!」


 あ。


 我に返ったときには、目の前にリンゴの赤い爪が迫っていた。俺はルーゲラフラワーになり、身長が縮んだことによってその攻撃を回避する。そのまま地面に根を這わせ、その中の魔力を吸い取った。地面の中にも多少は魔力があるらしいのだ。


 吸い取った魔力と俺の魔力をあわせた。


「シーファ!隙間がないように、自分をウォールバリアで囲め!」

「は、はい!」

「俺がいいっていうまで、絶対に外に出るなよ」


 シーファがウォールバリアで身を包んだことを確認すると、俺は息を吸い込んだ。龍はいなくなった俺のことは気にもとめず、シーファを狙っている。そこに、俺が毒の煙を吐き出した。


「グアッ!」


 龍は危険が迫っていることに気がついたが、時すでに遅し。毒の煙は龍を包み込んだ。煙の中でじたばたと暴れる龍。しかし、目の前の煙は中々移動しない。それも俺が、ミストバードに変化して風を送っているからな。あいつの移動に合わせて煙を移動させればいい。


 ついにしびれを切らしたのか、龍は大きな翼で煙を大空へと散らした。その強風に、俺は体勢を崩してシーファのウォールバリアはボロボロと崩れる。土属性は風に弱い。


「グアアアッ!」


 地も揺るがす咆哮をあげると、龍は空を飛んだ。翼をはためかすたびにでる風に煽られながら、俺も続く。さらに、シーファはローブを脱いで、翼を広げた。これで全員が空中戦だな。


 流石に、俺たちみんなが付いてきたことに驚いたのか、龍の瞳が揺らいだ。


「こっちなのです!」


 シーファが龍を翻弄し、ジグザグに動き回る。しかし、龍も龍だ。その動きを完璧に目で追い、棘を飛ばしたり接近戦をするべく速度を上げたりしていた。俺は、準備を整える。


「《偉大なる光の精霊よ》」

「《偉大なる闇の精霊よ》」


 飛んでいるシーファと声がかぶる。彼女は高度を下げ、地面すれすれを飛んだ。そのあとを龍が続く。俺もあとを追いかけた。


「《闇を退け世界を光で満たせ》」

「《光を退け世界を闇で満たせ》」


 シーファが地面に着地する。龍も、シーファの正面へと着地した。これで準備は整った。


 俺は変化を解き、龍の後ろへ回る。挟み撃ちになったことに気がついた龍は、一瞬だけたじろいだ。


「聖柱!」

「邪柱!」


 龍の足元に描かれる魔法陣。そこから黒と白の光が溢れ、龍を包み込んだ。


「ゴガアァァ!グアァァ!」


 喉をかきむしる龍。ふふ、この世界の生物は魔法攻撃に弱いからどれだけ防御があっても防げないのだよ。


 黒と白が渦巻き、竜巻のようになった。かなり幻想的だが熱によって地味に肌が痛い。


『スキル融合魔術を獲得しました』

「ガァ……ガ……」


 鑑定さんとかぶるようにして声を発すリンゴ。あの攻撃を受けて、まだ生きているのが不思議なくらいだ。


「ゴ……ア……」


 流石にもう動けないだろ。


 黒焦げになり、自慢の鱗も焼けただれた状態じゃ、何もできないはずだ。早いところ、決着をつけなければ。


 俺は苦しむリンゴの額に、剣を突きたてようと振りかぶった。だが、その時。リンゴが大きく口を開く。突然のことに判断が遅れ、俺は龍の吐くブレスに巻き込まれた。


 熱っち!熱い熱い!やめろ!


 喉がやられて声が出ない。口からは嗚咽が漏れた。顔の前でガードするためにクロスしていた手も、焼かれる。皮膚が焼け、剥がれ落ちる前に灰になった。


「……っ」


 意識が朦朧とする。俺の人生は、ここまでだったか。


 固く目をつぶり、何もかも諦めた時シーファの気合の声が響いた。


 龍のブレスが止む。リンゴは、目を潰されたようで苦しみながらも息絶えた。


『ドラゴンを倒しました。経験値1502獲得。止めをさせなかったため、経験値が半減しました。レベルが43に上がりました』


 その途端、体の傷が癒える。ああ、レベルアップ時に回復って本当にいいな。


「大丈夫ですか?サトル」

「ああ。ありがとな。今回はシーファのおかげで助かった」

「ふふ、サトルはおっちょこちょいなのです」


 意外とと痛いところつくな。実は俺もそう思っていたんだぜ☆


「あれぇ〜。僕のリンゴ、倒されちゃったの?」


 俺でもシーファでもない、声が聞こえて剣を構える。すると、目の前の木の裏からスラリとした人が姿を現した。服装は、うすい鎧に両腰につけられた剣。外見は、黒髪の男で身長は俺よりも少しだけ上。そいつは、木に腰をかけた。


「リンゴ、結構いい逸材だったのになぁ」


 殺気帯びた視線で、そう彼は言い放った。

編集しました。レベルアップの幅が大きすぎると思いまして・・・。


初期

40→63


編集後

40→43


経験値約600ほど貰うと1レベ上がるくらいになっていましたのに、なぜこんなにも上がったのかがわかりません。現在も成長チートがかかっているかもしれませんね笑


ご迷惑をおかけしてすいませんでした。

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