第48話 調査
「……何かに恐れたって、誰かはわかるんですか?」
「そこまではわからない。だって、これは私の勝手な推測だもの」
シーファの言葉に、悲しげに首をふるキュラサ。だが、その説もあり得るかもしれない。死神よりも強いものがいたらの話だが。
「色々ありがとう。俺たちは、このままあたりを散歩するがキュラサも付いてくるか?」
「そうね……。私も、もうあっちに戻ったら何かと言われそうだし少しだけお供するわ」
来てくれるのか。俺たちにとっては強い人が来てくれれば大歓迎だぞ。きっとこの人もギルドマスターなんだろうな。鑑定してみよっと。
キュラサ
種族 人間種
状態異常 なし
レベル115
HP...1120/1120
MP...1400/1400
攻撃...520+10
防御...539+10
素早さ...621+10
魔法...852+10
《スキル》
・砂煙・風球・風刃・竜巻・雷球・雷刃・雷神風雲・火球・火刃・灼熱大陸・水球・水刃・神秘の嵐・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力遮断・クイック・パワー・ロークイック・ローパワー・MP自動回復
《ユニークスキル》
・超回復
《称号》
・英雄・勇者・四属性の使い手・ギルドマスター・魔物殺し・人間殺し・ドジ・陽気
やっぱりギルマス。この人は魔法型って感じかな。っていうか、俺のステータスのMPはかなり大きいんだな。だって、今の状態でMP1090あるぞ。HPは少ないがな。俺は魔力バカかもしれない。
「どこのギルドマスターなんだ?」
「私?私は、エルシャルト国のギルドマスターよ。会議があったから留守にしてるけど……。でも明日ぐらいには帰ろうと思ってるの」
「奇遇ですね。私たちも、エルシャルト国から来たんですよ」
シーファの言葉に、キュラサは微笑む。
「本当?じゃあ、明日一緒に帰りましょう。私が馬車のお金を払ってあげるわ」
「俺たちに情報をくれたのにか?気前がよさすぎるぞ」
「みんなから言われるわ。でも、ギルドマスターだから家には何でも揃ってる。だから、お金の払う場所が見つからないのよ。これくらいは払わせて頂戴」
ギルドマスターもある意味で大変なんだなぁ。でも何でも手に入るって幸せ者すぎるよ。少し羨ましい気もする。
「それで、散歩というのはどこへ行くの?」
「あまり決まってないな。ただ周辺をぶらりとして地形を把握しとこうと思って」
「林の方はいかないの?」
「そっちには果ての大地があるんだろ?門兵に注意されたから行ってないんだ」
少しキュラサは目を丸くする。
「果ての大地と言っても林を超えてからずっと奥にあるのよ。歩きでは3日くらい。馬車では1日。別に、林の方は行ってもいいのよ」
あの門兵、少しイラつかせるわ。なんだ、行ってもよかったんじゃないか。
「少し探索してみたい気もするし、俺は行きたいな。シーファはどうする?」
「私は全然オッケーです!」
キュラサも頷いている。じゃあ、森林へいくとするかぁ!
『正式な名前はラギ森林と言います』
情報ありがとね。鑑定さん。
そうして俺たちは、門兵の注意をガン無視してラギ森林に行くのだった。
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森林と言っても、そこまで木が生えているわけでもなく余裕であたりを見渡せる。まず不意打ちを受けることはないだろう。そして、ここにも魔物が生息しているらしい。
俺は歩きながらあることを考える。
鑑定さん。大気感知とは、主にどんな感じだ?
『大気感知とは風圧感知スキルの進化で、風圧感知よりも的確に、広範囲の空気の動きを感知できます』
成る程。つまり風圧感知の上位互換って感じだな。でも、広範囲ってどれくらいだ?
『半径25メートルで、直径でいうと50メートルとなります。因みに、前回の距離は直径30メートルでした』
すごい広がってるじゃないか。俺も風圧感知には助けられてばっかだし、この進化は嬉しいことだ。もっと進化先があるならバンバンしちゃってくれ。
「おかしいわ……」
ぽつりとキュラサが呟く。
「どうしたのですか?」
「いや、魔物が全然現れないから何かあったのかと思ってね」
眉をひそめるキュラサ。
「そんなに頻繁に魔物は現れるのか?」
実のところ出発してからまだ30分ほどしか経っていない。別に魔物が襲ってこなくてもおかしくない時間なのだが……。
「ここ、かなり頻繁に魔物が現れるって言われているのよ。でも、そのランクはEランク指定のものばっかりだから、上級者には向いていないんだけど……。ってそんなことよりこれは異常事態よ。何かあったに違いないわ」
そう言うキュラサは、ハッとした表情になった。
「そうだ!私、今日は友達の誕生日パーティーだったんだ!ごめんね!ちょっと時間をくらい過ぎたみたい。ばいばいっ!」
彼女はそう言い、去って行った。もし俺が気付かなくて、尾行している時に今日が誕生日パーティーだって思い出したらどうするんだろうな?まあ称号通り、あの人はドジだ。
「何か意味深なことを言って去って行きましたね」
「そうだな」
「何かあったって、とてつもなく強い魔物が現れたとかじゃないですか?」
「例えば?」
「そうですね……。あ、龍とかですかね?」
「龍?」
「はい。そうです。龍は強く、全てを焼き払うブレスとなんでも引き裂いてしまう爪を持っています。それに、その体についている鱗は鋼鉄のように固い。図体は大きいくせに、素早さはとてつもなく速いです。ですが、争いを好まず普段はおっとりとした性格なのですよ」
「よく知ってるな。シーファも1人だったんだろ?」
シーファは首を横に振った。
「昔、龍と一緒に暮らしたことがあります。私に食事をくれて、あの転生者よりもずっと信頼できました。人間は簡単に相手を裏切りますが、頭がいい魔物は絶対に人を裏切らないのです」
「龍かあ……」
「案外近くにいるかもしれませんね」
あ。
それフラグ。
「グオオォォォーーン!」
アァ、オワタ。




