第47話 尾行されてた
さあ、仕切り直して外の探索だぁ〜。
「何かとんでもないことに巻き込まれたような気がして、少し怖いです」
俺もシーファに同感だな。まあ、俺の考え方にしてはとんでもないことではなくて面倒ごとに巻き込まれた感がやばい。ギルドマスターのサンカーさんがいたってことは、もしかしたらあそこにいた全員がギルドマスターっていうのもワンチャンある。なら、なにか面倒臭いことを押し付けられなければいいのだが……。おーがユニークスキル持ちだって相手も確信しただろうし。
門兵の横を通り過ぎて、外へ出る。右には森林、左には草原が広がっていた。俺たちは何もないよりかはマシだと思い、森林へと向かおうとする。しかし、背後にいた門兵がそれを止めた。
「お前たち、そっちへ行く気か?」
「え?そうですけど……」
シーファが答えると、門兵は呆れたように首を振る。
「いるんだよ。果ての大地にいく、好奇心をよそられた低ランクの冒険者たちが。君たちもそうなんだろう?もう、行方不明とかでこっちの仕事を増やさないでくれ。果ての大地に行って、帰ってきたやつは誰1人もいないんだぞ?それは、高ランク冒険者でも一緒だ。お前らが強いのかどうかはわからんが、俺は一応忠告したからな」
もうやめてくれというばかりにそうまくしたてると、門兵は元の位置に戻って行った。しかし、目はこちらを向いたままだ。これ、行ったら無理矢理でも止められるやつだよな。きっと。
仕方なく、俺たちは草原を歩き回ることにした。果ての大地について、シーファに聞いたが何も知らないらしい。生憎全国のマップも持っていないし、果ての大地の情報すらわからない。今度、誰かに聞いてみるかな。
「名前からして、何もないのでしょうか?」
「そうだと思うけどなー」
「高ランクの冒険者も帰ってこないとすると、かなり強い魔物がいるんでしょうね」
「ああ。きっとそうだ。そして、そいつらを倒さない限り俺たちは世界最強にはなれない」
シーファと会った時に約束した。世界最強になり、その名を世界に轟かせると。そうすれば、シーファに対しての差別もなくなるだろうし、英雄として扱われるだろう。そうなるのが、俺たちの夢だ。
「世界最強……。まだ私には程遠い言葉ですが、必ずなってみせます!」
いいぞ。その意気だ。俺も、頑張らなくちゃな。
緊張感を解いていたその時、鑑定さんが言葉を発した。
『尾行を確認』
な、なに!?
警戒の糸を張り巡らせ、シーファにも注意を促す。鑑定さん、他に情報はないのか?
『数は1名。性別は恐らく女性だと思われます。半径30メートル以内のどこかに潜んでいます』
げげっ。かなり近い。もうちょっと警戒しとけばよかった。
風圧感知もビンビンに起動し、少しでも風が揺れたらそこに突進をする方針でいこう。
俺とシーファは身動き1つもせずに、お互いの武器へと手をかけていた。
かなり離れたところに風圧!ここだ!
出せるだけの全速力で、その場所へと近づき空を切る。一見なにもないところを切っているように見えたが、悟が切ったところからは切断された布地がハラハラと落ちた。どうやら外したらしい。
「気付かれてたの」
さらに背中から風圧。しかし、その姿勢では攻撃する気配も感じられない。
《風圧感知の能力が向上しました。風圧感知は大気感知に進化しました》
うぇい!?
「ごめんね、驚かせちゃって」
女性は俺の目の前までやってきて、頭をさげる。敵対心はないようだ。しかし、俺の一撃をかわすとはなかなかやるな、こいつ。
女性が顔を上げたところで俺は息を飲む。その人は、塔の中にいた女性そっくりーーいや、その女性本人だった。
「私、キュラサよ。本当にごめんね。付け回したりしちゃって。私の意見もあるんだけど、他のみんなからも言われて、尾行することになったんだけど……。君、かなり強いね。正直、攻撃を食らうとは思わなかった……」
残念そうに言うキュラサに、俺は自己紹介をする。いつの間にか横に来ていたシーファも、自分の名前を名乗った。
「サトルくんと、シーファちゃんね」
君付けかぁ。マジで名前で君付けされるのっていつぶりだろう?小学校では呼ばれていたけど、中学校ではめっきり呼ばれなくなって……。あ、嫌なわけじゃないからね?って、いかんいかん。話が逸れてしまった。
「私たちは、転生者に悪い思いがあるから……」
俺が転生者だっていうことを知っているのか。流石だな。多分この人もギルドマスター(?)なのだろう。
「そんなに、1人目の転生者はマズイことでもしたのか?シーファからも話は聞いていたが……」
「サトルくん、知らないの?ああ、異世界から来たんだっけ?じゃあ、教えてあげる」
そうしてキュラサは最初の転生者について話してくれた。
1つ目は、彼の名前がカズキ・ムラヤマだということ。……村山和樹だな。漢字は知らんがこう書こう。
2つ目が、彼のしたこと。和樹は自分の力をもっと強大にするべく、自らの手で魔王を復活させて魔王を自分の支配下に置いた。そして、和樹のユニークスキルを手するべく死神が動き始め、魔王と死神の戦争が始まったという。この時、人間界もその戦争の巻き添えをくらい、和樹軍と死神、人間軍で戦いを起こした。そして、魔王は深手を負い再び眠りにつき、死神はこの世に自分にかなうものはいないだろうとまたこれも永い眠りにつき、人間軍は一度失った活気を戻すため、町の復興に手を尽くした。そして、今こうなっているわけだ。
そこまで聞いた俺は、疑問を頭に浮かべる。キュラサはその表情を敏感に読み取った。
「何か引っかかるでしょ?」
「ああ。死神は、和樹の力を欲しがったのに何故眠りについたか、辻褄が合わないぞ」
「それもそう。だけど、もっとよく考えてみて」
俺は必死に思考を巡らせる。しかし、これといったものは出てこない。最後にはシーファに目で助けを求めた。
「スキルが欲しくなかったのではないでしょうか?」
シーファはいう。
「そうかもしれない。いや、今の私たちの解明力じゃ、そうしかないとしか言えないわ」
「和樹に聞けばいいんじゃないか?」
「彼の能力は不老不死で、年齢をずっと保っていけるらしいけど……。あの戦争以来姿を見たものは誰もいないらしいの」
「話は戻るんだが、死神がこの世に自分にかなう相手がいないと眠りにつくのと、和樹のスキルがいらないのは理由が合わないんじゃないか?不老不死のスキルを持っている和樹を野放しにしとけば、いつまでもレベルを上げ続ける。なら、後々自分の脅威にならないためにその時殺しとけばよかったんじゃないか?」
俺だったらそうするぞ。
「そうなの。そこが、1番の問題なのって、私いろいろ情報をバンバン流しちゃってるじゃない。話は終わり。ここで話したことは、誰にも言わないでね」
秘密の情報だったのか。
「あ、でも君は強いから少しだけ教えてあげるね」
ん?この人口が軽い感じなのかな?
「これは有力な説ではなくて、私が考えたものなんだけど……」
少し自信なさげに、彼女は言う。
「死神は、何かに恐れて眠ったんじゃないかって」
不穏な風が、あたりを吹き付けた。




