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第5話 美味い肉は旅につきもの

「はあ、はあ、はあ」


 その場に尻餅をつく。


 目の前に広がるのは鬱蒼と茂った森ーールーゲラ大森林だ。


 その中には大きな遺跡があり、ルーゲラバイガルという魔物に見つかって殺されかけた。ルーゲラフラワーの根っこの能力がなければ死んでいただろう。


 外に出てわかったことだが、一回遺跡に触れただけでこの遺跡は強力な魔力を帯びていることに気がついた。


 その魔力を吸った俺は、一時的に身体能力が向上され、蛇馬の攻撃を食らってもなんともなかったのだ。なぜ、入った時に魔力に気がつかなかったのかは分からない。


 ……ただ、称号に《感知ができないただの馬鹿》が追加されていた。本当、なんで気がつかなかったんだろーなー。ワカラナイナー。


 俺は立ち上がり、その場を去ろうとしたがおもむろに遺跡を振り返った。


「今度来た時には俺はもっと格段に強くなっている。その時まで、覚悟してろよ」


 毒も食らわせてやる。げへへ。


 俺は心に決め、立ち去った。


 ーーーーーーーーーー


 後ろの草むらが揺れた音を聞き、即座に振り返る。スライムかと思ったが、今度は違った。


「クルゥゥ」


 熊だね。俺の最初の予言当たっちゃったよ。リスキルじゃないけど、俺疲れてるんだよ。


 そいつは熊の中でもかなり小柄な熊だ。せいぜい俺の身長の3分の2ぐらいだ。日本規模で言ったらそれでも死にかねない大きさだが、今の俺にはスキルがある。負けることはない。はず。たぶん。


 それと日本の熊と違うところは手に赤黒い線が入っているところだ。数秒ごとに小さく発光し、この熊が『危険』だということを辺りに知らせている。


「クルァ!」


 俺の視線が手にいったところで、そいつは襲いかかってきた。


 身を翻して嚙みつき攻撃を避けると、その背中に渾身のパンチをお見舞いした。


「クル!」


 よほどパンチが効いたのか、苦しそうな顔で熊は振り向く。おっと、鑑定鑑定。






 ルーゲラリトルベアー

 種族...ベアー種

 状態異常...なし

 レベル15

 HP...12/30

 MP...0/0

 攻撃...32

 防御...5

 素早さ...10

 魔法...0

 《スキル》

 ・渾身の一突き・遠吠え

 《称号》

 ・地獄の一突き

 解説

 ルーゲラ大森林に生息するベアー種。そのひとつきは強力で、商人たちから怖がられている。過去に30匹ほどの群れをなして襲いかかってきたとあるが、その近くにあった国は滅ぼされたという。また、ルーゲラベアーはさらに強力。ルーゲラ大森林に住むベアー種は多彩な魔力を浴びているため、非常に美味で食料としても使える。また、ベアー種を食べられるのはルーゲラ大森林のみ。






 なるほど、おいしいのか。これは調理して食べてみたいな。日本にも熊鍋とかあったよね。


 いつまでもにらめっこをすることに飽きたのか、最初に飛びかかってきたのはリトルベアーだった。俺はその瞬間を見逃さない。一瞬でルーゲラフラワーに変化し、身長を縮めた。


 リトルベアーはいなくなった俺に動揺し、飛びかかる体勢のまま地面に激突した。俺はその背中に毒の煙を浴びせようとしたが、1つ思った。


 ーーあれ?これ、毒浴びせたらダメじゃね?食えないじゃん。


 素手で殴るしかないか。魔力を込めて一発殴っただけで18ダメージ入ったから大丈夫でしょ。


 リトルベアーが振り返る前に俺は変化を解いてその背中を殴った。頭の中に女性の機械音が流れる。


『ルーゲルリトルベアーを倒しました。経験値を16獲得しました。レベルが6に上がりました。ルーゲラリトルベアーに変化することが可能になりました』


 いや上がりすぎ。経験値16だけなのに4も上がるのか。流石成長補正チート様様だ。


 リトルベアーの死体を引きずり、木や草むらがなさそうなところに来る。


 近くに落ちていた石で皮を剥ごうとしたが、思っていた異常にグロテスクになってしまった。まあ、尖ってないからところどころ傷つけながらやったから当然だな。


 内臓を出してそこらへんに捨て……埋めてと。草木の栄養になってくれ。さて、この肉どうやって焼こう。


 焼かない限りは食べれない。食中毒になるかもしれないし、もしなった場合こんな森の中じゃ誰も助けてくれないだろう。これはあれか? 自分でつけるしかないか? サバイバル始めちゃうか?


 と、そういえば魔法とかこの世界にあるんだよね。火魔法とかできないかな?


「出でよ、ファイヤー」


 手を突き出して適当に唱えてみたけど、やっぱり無理だな。


 でも、どこかの小説で読んだ限りでは魔力が体を駆け巡る感覚が大事とか言ってたぞ? ここで通用するかは分からんが……やってみよう。じゃあ魔力を感じて……。


 おお、体の中に何か熱いのがある。血がほんのり温かくなって、全身で感じられるようになった感覚だ。


 これが魔力か。こんなのどれだけ踏ん張っても前世では感じられなかったけどなあ。と、嫌な過去が。


 気を取り直して、これを火に変換させれば……。


 手のひらに魔力を集め、火、火、火、と念じながら魔力を放出する。すると、か細いロウソクのような火が手から出て、集めていた木の枝に燃え移った。


「うひょーっ! できたー!」


 やったー! と、両手をバンザイする。すげえ。俺、手から火出しちゃったよ。


 それから少し待つと、火は面白いようにどんどん広がっていく。あたりいっぺんに肉の美味しそうな匂いが広がり、思わず生唾を飲み込んだ。


 丁度いいと思ったところで肉にかぶりつく。皮には脂がのっていて、中は熱々。これでもかというぐらいの肉汁が溢れ出て来る。熊、うめぇ……!


 そんな肉も数分で食べ終わり、俺は満足したかのように腹を叩いた。


「さて、美味いもの食ったし、ルーゲラリトルベアーのスキルを確認するとしますか」

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