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第45話 迷ったった

 俺はちょうど朝日が昇ってきた頃に目覚めた。シーファは……いないな。逃げたとは到底考えられないし、どこかでお茶でもしてるのかな?


 こんな朝っぱらから1人でお茶してるとは考えられないが。


 俺はベッドから出て、シーファを探し始めた。もちろん部屋の中にはいない。そこで、外に出て階段を降りた。ギルドに来ると、俺はシーファの姿をを見つけた。テーブルでお茶を飲んでいる。いや本当にお茶だったんだ。


 俺がシーファの近くへ行くと、彼女は顔を上げた。俺に気がついたようだ。


「サトル。おはようございます」

「おはよう。どうしてここに?」

「少し、昔のことを思い出してしまったので気晴らしにと……。ダメでしたか?」

「いや。全然いいと思うぞ」


 すると、シーファはホッとしたような表情をした。どうやら、勝手に出て行ってしまって怒られないか心配になっていたらしい。まあ俺はそうそう怒らないからな。でも、その代わりぶちぎれる時はマジでぶちぎれるタイプの人だ。


「それで、エルシャルト国にはいつ戻るつもりですか?」

「そうだな……。俺はもう少しだけ滞在したい。それでもいいか?」

「サトルがそう言うなら、私も付き合いますけどどうしてです?」

「ここ周辺をまだ探索してないしな。依頼じゃなくて、普通にぶらりと散歩したいからな」


 シーファは了承したかのように頷く。俺は1つ伸びをした。


「さぁて、朝食を食べるとするかな」


 シーファはもうすでに食事を済ませていたため、俺1人で食べた。途中羨ましそうな目で見つめられた俺は仕方なくパンを半分にしてあげる。シーファは食べたはずなのに、嬉しそうにパンを平らげた。俺はまた飯を奪われる前に全て食べた。悲しそうな目でシーファが見ていたが、きっと気のせいだろう。


「よし、そろそろ行くか」

「……そうですね」


 拗ねてた。


 まずは国の外ではなく中の特徴的な塔だ。あの中には一度でもいいから入ってみたいと思っていた。あの上から景色を眺めたら絶景だろう。この世界を、大空から見てみたいという衝動に駆られていた。


「……どこから入るのかな?」


 塔の周りを約5分ほどかけて回るが、入口らしきところはない。よし、ここはやけくそで鑑定さんいけるか?


『隠し魔法陣を検知。表示しますか?NO/YES』


 鑑定さん万能すぎ。YESだ。


 すると、塔の前の地面に魔法陣が薄く見え始めた。ぼんやりと光っていて、俺はその場所に近づく。これが魔力なのかはわからないが、魔法か何かで隠しているのだろう。


 その場所に触れてみるが、触り心地はただの地面だ。さらに魔力を加えると、魔法陣は光り俺とシーファを飲み込んだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 立っていたのは全部がレンガで出来ている床だった。後ろは行き止まりで、奥に道が続いている。壁につけられた灯がこの暗闇の中を照らす唯一の明かりとなっていた。


「ここは……?」


 シーファが目を開ける。クラッと倒れこんだので、俺が瞬時に支えた。


「す、すいません。有難うございます」


 なぜか顔が赤くなっているが、俺は気にしない。手を離すと、シーファが「あっ」っと残念そうな声を上げた。


 なんでだろ?俺なんもしてないよね?なんか悪いことでもやった?


 まあ、いいや。それは置いといて。ここは塔の中なんだろうか?


『魔法陣の転移能力により、塔の最上階層へと転移させられました。この会にいる人は総勢5名ほどになっております』


 え?ん?へ?いろいろ情報有難うしか言えないんだけども。


「シーファ。人がいるみたいだから、気をつけてくれ」


 気をつけようはないんけどね。っていうか、なんか面倒ごとに巻き込まれる気がする。俺面倒ごと嫌いだから、もう帰りたいんだが。この魔法陣で帰れるかな?


『一般的な魔法陣は一方通行であり、魔法陣を設置するとその魔法陣を作った人の魔力に比例して転移できる距離が増えたり、設置できる距離が縮んだりします。また、魔法陣は設置する際に念じるだけで転移先に魔法陣が現れます』


 なんかだんだん豆知識になってきたぞ。今の説明の中で俺が聞きたいのは、設置できる距離についてだ。


『魔法陣は1つ設置すると、その人の魔力に比例して他人の魔法陣でも、自分の魔法陣でも一定の距離置けなくなります。今目の前にある魔法陣の周りは約500メートルほど魔法陣が置けなくなっております。奥に魔力の反応があるのでもう1つの魔法陣だと思われます』


 ええ。これ、進まなきゃダメパターン?ああ、魔法陣なんて入らなければよかった。好奇心で近づいたのがダメだったな。


「先に帰るようの魔法陣があると思うから、そっちに行こう」

「わかりました」


 俺は誓う。もう興味津々で魔法陣に近づかない、と。


「……で、……が……する」


 何か聞こえてきたぞ。見つかる前にささっと行っちゃお。


 さらに進むと声はだんだん大きくなってきた。悟はなるべく音を立てないように進む。すると、大きな扉が姿を現した。ここ以外に進む方向はなく、この中から声が聞こえる。鑑定によれば魔法陣の反応もここにあるらしい。面倒ごと避けられないパターンキタコレ。


 でも何か話し合ってるのに中に入るのは申し訳ないよなぁ。待つのもアレだし、そうだ。スライムになって隙間から忍び込もう。まずは部屋の状況を確認してシーファに伝える。その作戦でいこう。


 シーファに伝えると、彼女も真剣に頷いてくれた。俺はスライムになる。なるべく小さくなるために、4つに分裂した。1番大きいのが俺で2番目に大きいのがプイ。他は知らん。


 スライムたちは俺の意思疎通のスキルで事情を知っているため、そのまま扉の隙間から潜り込む。その中はかなり広く、大きなテーブルに5人の人が座って話している。そして、彼らの向こうにあるのが魔法陣だな。ちゃんとあったけど、シーファを連れてきちゃいけないやつ。これはどうすれば……。


 よし、変化を解いて素直にここに入ったことを謝ろう。そうすれば帰してくれるはずだ。


 俺は変化を解き、突如目の前に人間が現れたことに目を丸くしている人たちに近づいた。


「僕、お姉ちゃんと一緒に迷っちゃった。どこかに、帰れる場所はない?」


 出来るだけ子供口調で言ってみた。

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