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第44話 夜

 シーファの表情を見て、俺は開きかけた口を閉じた。その顔は恐ろしく、誰かを呪い殺すかのような気迫をしている。


「……」


 一体、シーファの身に何があったのか。それは俺もわからない。しかし、今聞かないとそのタイミングを失うような気がしてきて、俺は思い切って聞いた。


「その転生者に、何をされたんだ?」

「……」


 やっぱり何も言ってくれないか。深い過去があるんだな。


 部屋に戻る。俺がベッドに座ると、急にシーファは話を切り出した。


「私がサトルに会う前ーーううん。もっともっと前です。組織から逃げ出した直後だったかもしれません。幼かった私は、誰かに助けを求めようと歩き回っていました。やがて、組織から逃れるために森に入り、そこでその人と会いました」


 シーファはそこで息を継ぐ。


「その人は男の転生者でした。私に食料と水を与えてくれて、自分のことも話してくれました。そして、こんな姿の私を見ても少しも驚かなかった。嬉しかったです。しかし、2日目の時に彼は激変してしまいました」


 彼女が息を呑んだのがわかり、俺も顔が引き締まる。


「寝ていた私を引っ叩き、無理矢理起こすと暴力を加え始めました。何故かはわかりません。私は、何もやっていなかったはずなのに。迷惑をかけていなかったはずなのに。あの人は、最後には私を……奴隷にして売りさばこうとしました。だから、逃げてきたのです」

「……それで、シーファはそいつを恨んでいるのか?」

「はい」


 シーファは即答する。


「私とミライは同じ思いなのです」


 ミライ?スカイホースの名前だろうか。


「ミライは彼に両親を殺され、私も心に深い傷を負ってしまいました」

「成る程な。だから、目的は一緒だと」

「そうです。そして、ミライはその転生者を殺すまで私の力になってくれると」


 ーー転生者を殺した後はどうなるんだ?


 喉まで出かかった言葉を飲み込む。どうなるかは、スカイホースことミライ次第だ。身体を乗っ取るか、それとも力を貸し続けてくれるか。どちらか2択だろう。それはシーファもわかっているはずだ。


「ありがとう、シーファ。辛かっただろうな」

「サトルがいれば、今の私はなんともないのです」


 微笑むシーファ。うっ。天使だ。天使がいるぞここに。


「俺は図鑑を読んで寝るかな。シーファはどうするんだ?」


 シーファは少し考える。先ほどの重たい空気が嘘のようだ。


「私はもう寝ます。お休みなさい」


 そう言うと、シーファはベッドへ潜り込んでしまった。俺は図鑑を読み漁る。もう魔物図鑑は全て読み終わっていた。コツコツと読み進めた結果だ。今は魔法図鑑を読んでいる。何か覚えられるものがあるかもしれないからな。


 ん?これはなんだ?……生命魔法?どれどれ?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 生命魔法とは、遥か古代に存在したと言われる魔法であり、現在この魔法を使える者は見つかっていない。昔使えるものであっても、この大陸には2人しかいなかった。1人は世界を支配しようと目論んでいた死神。生命を司り、ありとあらゆるものに生命を与えたが、その反対に魂を奪うこともあったらしい。そして、もう1人が×××××××××で、×××に×××××××ーー。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 くっ。文字がかすれて読めない。気になるじゃないか。もう1人の生命魔法使い。ああ、誰なんだろうな。


 気にしててもしょうがない。今日はこの辺で寝るかな。


 そう思い、瞼を閉じるがまたもう1つの疑問が浮かぶ。


 ーー鑑定。変化の進化のことについて、何かわかるか?


『変化の進化は、その進化前の条件を達成することによってレベルが上がります。レベルが1上がると、進化先が表示されるのでその中から選んでください。進化先は、選んだものにより進化後が違ってきます。また、1つに2つの進化先があると、その進化前のレベルをもう一度上げることで取り逃がしたもう片方の進化先も手に入れることができます。以前進化した魔物の情報を表示しますか?NO/YES』


 おおう。なんか色々来たが。最後の問題だけ答えておこう。YESだ!


『ルーゲラベアー・解説

 ルーゲラリトルベアーの進化系。高い接近戦の戦闘力を誇り、その打撃技は楽々とCランク冒険者を吹っ飛ばす。しかし、遠距離戦が苦手。だが、その穴埋めのために素早さも早いこととして有名だ。もしルーゲラベアーが現れたとしたら、ギルドで何人かの冒険者をやとり、その上で出動する。こいつらが群れれば恐ろしいのだが、成体は基本的に群れない』


 中々強いですな。ルーゲラベアー。これは当たりだったかも。


 《鑑定の能力が向上しました》


 へ?スキルって能力が向上するの?


『日常的な会話も可能になりました。我が主人』


 す、すごい。もうあのメッセージが繰り返されることはないのか。心の中の話し相手ができるぞぉ〜。


『基本的に、敵対する相手の弱点などを教えていけたらなと思っております』


 普通にそれは嬉しいじゃんか。満足だわ。


 ……。


 スキルの能力が向上するって、変化はどうなのかな?進化するのかな?進化するなら早く進化させたいな。たくさん使わなきゃいけないの?


『それもありますが、条件も付いております』


 その条件とは?


『情報がありません』


 無理なんだ。残念。まあ、いいや。いつかわかるでしょ。今日は寝よ。お休み鑑定さん。


『いい夜を』


 ZZZ…………。

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