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第43話 お決まり

 はい、テンプレー。まただよこれ。今度はどんな用件で?


「お前たち、Dランクのくせに生意気なんだよ。俺がクリアできなかった依頼を達成するって可笑しいだろ。何かズルをしてるに決まってる。だから、その謝りとしてさっきもらった金を全て俺に渡せ。あと、その女もな」


 ああ、もうどいつもこいつも女女!ふざけんな!


「ヤダ。お前が達成した依頼でもないし、これはお前らの金でもない。それと謝礼金なら女とか全く必要ないだろ。少しは考えろ、脳筋」


 そういう風に、思いつく限りの暴言を吐くとやはりそいつは脳筋だったらしく顔を真っ赤にして挑発に乗ってくれた。


「俺が脳筋ダァ?お前の方が脳筋だろ!」


 おっと謎の脳筋呼ばわり。もうギルド内困ってるからなあ。ここは素直に戦ってあげてほいほいっと倒しちゃうか。


「お前はこっちに来い。分からせてやるよ」

「シーファ、ついてきてくれるか?」

「もちろんです」

「おい!その男だけっつってるだろうが!」

「いやならお前をここで殺してもいいんだぜ?」


 多少の殺気を含めた視線で睨むと、その男は汗を流して黙ってしまった。これで諦めてくれればーー。


「ったく。よほどの女好きみたいだな。しょうがないから許してやる。早くついてこい」


 これには吹き出しそうになったけど、堪えた。あれをして完全に怯えないとはかなり肝が備わってるじゃないか〜。じゃあ、俺もわからせてやるかぁ。


 男のあとをついていくと、そこは広場だった。周りの人は剣を構える男を見てざわつき始める。


「キラだ!あいつと戦うのか!?」

「あんな貧弱そうなのが、勝てるとは思わんな」

「キラに銀貨3枚」

「俺もだ」

「いや、僕はあの子に銀貨5枚だね」


 なんか賭けが始まったんですけど。まあ、1番最後の人が儲かるとして……。っていうかあいつの名前キラっていうんだな。まあすぐに忘れるだろうけど。覚える必要なんてないしな。


「さて、やろうじゃないか」


 自信満々に、キラがいう。俺は頷いて、腰から剣を取り出した。


「はあぁ!」


 近づいてきて、大降りに俺へ切りかかってくる。それをやすやすと避け、俺は相手を翻弄した。その動きに、ますます怒りが増してきたのかキラの動作が乱雑になる。


「くっ!当たらない!?」


 お、もう息切れか?


 キラは肩で息をしていた。この人強いのかな?……一応鑑定してみたが、魔法も使えないしはっきり言ってステータスも弱い。ギルドランクはどれほどなんだろうな。でも、名前知られているぐらい有名なんだし、結構高いんじゃ?


「何故!俺がお前なんかに!」


 キラは怒鳴り散らし、辺りに唾を撒き散らした。それでも怒りが収まらなかったか、群衆にも手を出す。俺は、とっさのことで判断が遅れた。


「ふざけんじゃねえ、このクソ野郎!」


 野次馬の1人を殴りにかかるが、キラと胸ぐらの掴まれている人の中央を風刃が通り抜けた。あと少しでもずれていたら、キラの顔がなくなっていただろう。その風刃を放ったのは、シーファだった。


「何も戦い中に野次馬に向かわなくてもいいでしょう?自分が負けるからって逃げるつもりですか?ちゃんとこっちもお金と私の身を賭けてるんだから、戦ってくださいね」


 キラは、シーファに詰め寄る。


「謝礼金は口出しするんじゃねえ」

「謝礼金だから、口出しをしてもいいでしょう?」

「てめぇ!」


 拳をシーファに向けて放つが、ウォールバリアにあっさりと防がれた。土はかなり硬いらしくキラの手は真っ赤に腫れ上がっている。ウォールバリアは地面の中に入り、シーファが姿を現した。杖を構えて、その杖の先には風球が。今の間に詠唱していたらしい。やるじゃないか、シーファ。


「っち」


 キラは、一回舌打ちをして俺の方へ向き直る。


「もう、つまらないし本気出してやるよ」


 俺はそう言い放つ。一瞬でキラの懐へ迫った。


「っ!?」


 段違いのスピードに、キラはたじろぐ。その隙を狙って、腹に剣を突き出した。


 流石は冒険者なのか、ギリギリでその攻撃を防ぐが剣を弾かれてしまう。弾いた剣は空中をくるくると回りながら遠い地面に刺さった。これで、勝敗は決したな。


 その首に剣を突きつけると、参ったというように苦悩の表情をして手を挙げた。


「では、金を渡してもらおうか」


 俺は要求する。キラの目は丸くなった。


「お、おい。お前は何もーー」

「相手に金を要求するぐらいなら自分も取られることを承知でやってるんだろ?実際、お前も同じことをしていたじゃないか」

「だがーー」

「敗者に何かを言う権利はない。俺たちの依頼の報酬と同じ金だけ出してもらおうか。金貨一枚と銀貨一枚だ。流石に俺はもう女はいらないし、そこは許してやるよ」


 顔を歪め、渋々といった感じでキラは袋から金貨一枚と銀貨一枚を取り出した。そして、それを俺の手に握らせる。


「いつか、復讐してやる」


 そう言い残し、キラは走り去って行った。復讐って……。まあやられないとは思うがな。まずあいつから仕掛けてきたんだし単なる逆ギレだろ。あれ。


「お疲れ様です、サトル」


 キラとの入れ違いでシーファが駆け寄る。あまり疲れてはないけどね。


「ありがとう、シーファ。お金もゲットしたし、そろそろ帰るか」


 戦っている間に空はオレンジに染まっていた。もう少し経ったら完全に空は闇にのまれるだろう。


「はい。わかりました」


 帰路についている頃、俺は1つ聞く。


「そういえば、条件付きでスカイホースから自分を救ったんだよな?その条件ってなんなんだ?」


 シーファは少しだけ顔を暗くする。


「1人目の転生者を、殺すことです」


 彼女の目は、憎しみに満ちていた。

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