第42話 もはや化け物
「……へ?君が?いや、俺達と言っていたような」
「ああ。俺達だ。もう1人仲間がいるんだが、その人と一緒に倒した。まだギルドには報告していないが、1匹残らず殺してきたぞ」
おじいちゃんは目を丸くして、ほっほっ、と笑う。
「中々やるものだな。お主も。儂も、若ければ動けたものを」
「じいちゃん有名だったのか?」
「じい……ちゃん?」
おじいちゃんの顔が驚いたようになる。俺は何をしでかしたのかわからなかった。
「ええっと……俺変なこと言ったか?」
すると、またおじいちゃんは陽気に笑う。よかった。これで儂はまだピチピチの青年じゃぞとか言われたらどうリアクションすればいいのかわからなかった。
「儂をじいちゃんというとはなあ」
あれ?やっぱりその方向?
「どうやら随分の田舎者らしい。儂は、ここのギルドマスターだ」
ええええええ!?このおじいちゃんが?ありえん。だって、おじいちゃんだぞ?まあ理由としたらおじいちゃんしか見つからないけどステータスをみたらまたよくわかるはず。
サンカー
種族 人間種
状態異常 なし
レベル124
HP...1250/1250
MP...1000/1000
攻撃...635
防御...511
素早さ...683
魔法...509
《スキル》
・砂煙・風球・風刃・竜巻・雷球・雷刃・雷神風雲・火球・火刃・灼熱大陸・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力遮断・クイック・パワー・ロークイック・ローパワー・MP自動回復・HP自動回復・必中50%(未完全)
《ユニークスキル》
・鬼人化
《称号》
・英雄・勇者・ど根性・三属性の使い手・ギルドマスター・魔物殺し・人間殺し・元好戦的
強いしか言えねえ。俺の何倍だ?ひい、ふう……約3倍!絶対勝てないしレベル124とか上がりすぎだろ。でも、逆に言えばこれだけレベルが上がってもこれしかステータスは上がらないのか。俺なんか今38レベだし、これから3倍だとしたら大体114レベで追いつく。10レベも違うんだぞ?10レベも。この差は大きい。それにこれから成長期みたいに上がる時があるかもしれないしな。
「どうしたんだ?本当に知らなかったのか?」
じいさーーサンカーが俺の顔を覗き込む。こんなに強けりゃおじいちゃんなんて呼べないよ。しかもちゃっかりやばそうなユニークスキル持ってるし。うわあ、さっきまでの俺めっちゃはずい。
「大丈夫だ。ちょっと、驚いただけでな」
「ほっほ。よほどの田舎者みたいだな」
うわ、よく見ると筋肉バキバキなんですけど!
マッスルサンカーだわ!
マッスルじいちゃんだわ!
それからサンカーと談笑していると、俺はのぼせてきた。先に上がると浴槽から上がり、服を着る。その間もサンカーは来なかった。いやどれだけ入るんだよ。そういうところもレベルが上がれば俺も耐えられるようになるのかな?
そんなことを考えながら部屋に戻るが、まだシーファはいなかった。くそ、俺は女にも負けるのか。情けね。
数分経つと、しっとりとした髪の毛のシーファが戻ってくる。風呂は最高だと話してくれた。
「そ、それと」
急にシーファの声のトーンが変わる。
「先ほどは、少し反抗的な態度を取ってしまいすいませんでした。私は、サトルに助けられたというのに愚かな行動に出てしまって……」
「あのことか」
めっちゃ引きずられたもんな、俺。痛くはなかったからいいけど。
「いいぞ。別に、気にしていないからな」
シーファの顔が明るく輝く。俺もつられて微笑を浮かべた。
「あ、ギルドに報告しなきゃマズイのではないのですか?ほら、時間」
壁にかかっている時計を指差すシーファ。えっと、残りの時間は……。10分!危な!シーファが言ってくれなきゃ完全に忘れて金取られるところだった。
「ちょっと急ぐぞ」
俺は急いで部屋から出てギルドへ向かう。シーファも慌ててフードを被り、後をついてきた。
「……サトル様とシーファ様。どうされましたか?」
俺を見つけた男性が来る。さっきの態度を謝るのはあとだ。
「依頼を達成したのだが、いいか?」
すると、男性は驚いたように目を見開く。周りの冒険者たちもざわついた。しかし、すぐに冷静になると討伐部位を求める。俺は図鑑が入っているアイテムボックスからホーンビートルの討伐部位の角を取り出した。途中で1匹だけ炎から免れて生きたやつを殺しておいた。その討伐部位を持ってきてよかったぁ。
ん?もちろん触ってないぞ。折角風呂に入ったんだからな。
「あいつ、アイテムボックス持ちか!?」
「どこかの貴族かもしれないぜ。見てみろよ、フードの奥に見えるあの美少女の顔!きっと大金を出して買ったのに違いねえ」
なんかシーファを俺が買ったみたいになってるんだが。シーファも不愉快になるし、やめていただきたい。
「と、突発部位と依頼達成の報酬合わせて金貨1枚と銀貨1枚です」
くっ。やっぱりホーンビートル1匹だけじゃあまり報酬にはならないな。あの時火魔法じゃなくて……うん、あの時には火魔法しかないな。俺火ぐらいしか使えないし。剣で突っ込んだら自殺するぞ。多分。
まあ、いいや。お金にはなったんだし贅沢は言えないだろ。
さて、お金も受け取ったし早いところ部屋に戻らなきゃな。
「今日は疲れたので早く眠りたいのです」
シーファもそう言っているようだし、俺も一緒に寝るとするかな。ああ、ホーンビートルの巣の中に俺たちどれだけの時間いたんだろ。スマホがあればチェック出来たのになぁ。腕時計でもいいから欲しいぞ。
ささ、帰ろう帰ろう。他の冒険者が絡んでこないうちにーー。
「おい!待てや!」
M・A・T・A・K・A・Y・O!!!




