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第38話 ホーンビートル

俺たちがギルドに行くと、受付嬢ではなく男性が迎えてくれた。茶髪に黒い服で決めたにこやかな人だ。その人は気前よく宿の案内をしてくれて、すぐに手続きができた。


「それでは良い夜をお過ごしください」


俺たちは部屋に入る。すると、尋常ではない殺気を感じ、身を翻した。すぐ横を尖ったものが通過していく。もう少し遅かったら脇腹の肉ごとえぐられていただろう。


「シーファっ!」

「はいっ!」


シーファが杖を構えていつでも魔法が打てるように備える。俺の横をかすめたそれは、フワリと床に着地した。


「こいつは・・・」


図鑑でみたぞ。確か名前がホーンビートル。あ、前言い忘れてたけど図鑑は翻訳機能があるから文字が読めない俺でも読めるぜ☆


話が逸れてしまったな。この魔物は、特徴的な大きな角で体当たりをしてくるんだと。見た目はカブトムシだが、角の鋭さは驚異的だ。体型はキャベツ1個くらいの大きさ。全身緑色で、足が8本。これ昆虫じゃなくてもう蜘蛛。ビートルって言ってるからカブトムシなんだろうけども。


ホーンビートルは光の灯っていない目をギョロギョロと動かし、最初にシーファをとらえた。そして、これまた驚異的な移動速度でシーファに近づく。


カサカサカサ


足音はゴキ○リだったぁぁぁ!ぎゃあああぁぁぁ!!


気がつくと、ホーンビートルはいなくなっていた。開けられた窓と少し臭う手。深く考えないようにしよう。


少し涙目になりながら俺は水道で手を洗った。俺、ゴキブリ苦手なんだよお。


「ど、どうされましたか!?」


すると、先ほどの男性が魔法陣から入ってきた。


「すごい悲鳴が聞こえましたが」


ああ、心の中で叫んでいたつもりが普通に叫んでしまったか。結構恥ずかしい。


「ホーンビートルがいたもので・・・」

「あいつですか」


すると、この部屋に魔物がいたにも関わらず男性はうんうんと頷いた。過去に何かあったのかもしれない。


「困ったことに、このギルドにはいつも現れるのですよ。巣があるのかと思いましたがて当たりなし。依頼も高報酬で出しましたが、たくさんの冒険者たちが断念してしまいました。未だに謎が解けず、ホーンビートルが現れたら速やかに対処するように言っていたのですが、私の説明不足でした。すいません」


ぴっちりと45度に頭をさげる男性に、俺は手を降った。


「大丈夫だ。ちょっとビックリしただけで、すぐに外にリバースしたから」


大丈夫じゃないが。


ん?外の被害?ナニソレオイシイノ?


この問題は解決したいうことになり、男性は戻って行った。俺とシーファはようやく一息つく。


なんだよ、害虫って。この世からいなくなれば良いのに。本当憎いわ。


「そういえば、シーファも核印が消えてすごく強くなったと思うぞ」

「本当ですか!?」

「俺が嘘つく理由がどこにある」


そう言うと、シーファは余計嬉しそうに微笑んでいた。俺も微笑を浮かべる。俺が笑ったことに、シーファはさらに気を良くした。


「それにしても、ホーンビートルの巣があるのは少し気がかりだな」


同意見だとシーファもいう。あんなのがうじゃうじゃいると考えたら、俺だって夜眠れるかどうかわからない。特にカサカサという音!地球の人ならこれを一瞬聞いただけでも絶対ゴキさんしか想像できないでしょ!俺だったら家から逃げる。それほど嫌い。さっき手で触ってしまって今はめちゃくちゃへこたれてるし。


「それでは、調査という依頼を受けてみませんか?」


俺はあまり気乗りではない。


「時間以内にやらなきゃ違約金が発生するんだろ?俺たちまだお金があまりないし・・・」

「ここは賭けです!成功したらお金がたくさんもらえて、失敗したら有り金すべて持って行かれる。なんか、ハラハラする気がしません?」


なんだろう。シーファって結構ギャンブル?


「お金を持ってかれるのはなぁ。やっぱり生活面でも不安があるし」

「そこは私の羽変化で光銀貨をじゃんじゃん生産しますよ。だから、ここは一回やってみましょうよ」


冗談かと彼女の目の色を伺ったが、その目は本気だ。だけど、俺はもうシーファに無駄な羽変化をやらせたくないんだよな・・・。HPも減るし。


「私の許しがあります。だから、羽変化ぐらい大丈夫ですよ」


シーファが迷っている俺に二言。俺は折れた。


「だあ!わかった。分かったから、明日やるぞ!」


ギャンブルっこにはかなわん。シーファも可愛いし、そんなに見つめられたら俺の心が持たない。


そうして俺たちはまた1つしかないベッドで寝た。もう蔓を置いたりはしない。蔓を置いてもシーファの寝相だとコロコロ転がってくることがわかったし、必要ないと判断したからだ。


ああ、見つけたとしても入りたくないな。ホーンビートルの巣。ただの迷い込んだ魔物でありますように。巣なんか絶対に、ぜっっったいりませんように。


しかし、次の日にその願いは叶わなかった。


「ありましたよ!ホーンビートルの巣!」


シーファが叫ぶ。それは地中深くの巣だった。中からワシャワシャとホーンビートルが出てくる。俺は落胆のため息をついた。そして、はちきれたように叫ぶ。


「なぜこんなことにぃぃぃぃ!」

因みに私はゴキさん大丈夫系です。虫も全然オッケー。蜘蛛とかも。だけど、虫よりもはるかに怖いのが蜘蛛の『巢』!あのおぞましい形・・・ああ、震えが止まらん。

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