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第4話 ヤバい奴がいた

  ……薄暗い。空気が冷たい。怖い。帰りたい。


  え?帰りたいんなら帰ればいいじゃん?NONO。そんなことできない。だって、迷ったんだもん!


 いや、広すぎるんだよ、この遺跡!


 不幸中の幸いかモンスターには遭遇していないし時間も少ししか経ってないけど、いずれなんか出てきそう。他にもいろいろトラップがあったりして転移させられモンスター部屋に閉じ込められたと思ったけど、水たまりの真似してたら大丈夫だった。スライム万能。


 そこでもモンスターは見なかったしね。一体どうなってるんだか。ジッとしてたら元の場所に戻されたからラッキーって進んでたら迷った。


 最初の方は覚えている。


 迷わないように記憶しておいたが、トラップが出てきたあたりからなんか混乱して道がわからなくなった。


 本当、散々だった。緑色の煙を吹きかけられるわ上から鉄球が降ってくるわ壁から針が出てきたり。緑色の効果はステータスを見てわかったが、混乱状態にするらしい。


 くそっ。まんまと引っかかってしまった。


 鉄球が降ってきたのはスライム特有で全視点見えているためすぐに回避できたが、ものすごい勢いで針が突き出してきたときは油断してた。


 死ぬかと思った。


 しかし、咄嗟に体の真ん中に丸い空洞を作るように形を変えたらちょうどそこを針が通ったわけで、助かったのだ。スライム万能。


 その時、僅かながらの気配を感じた。この通路の奥からやってくる。もちろん隠れる場所はないので、あの時のように水たまりになった。


「シィ?」


 頭が二股の蛇で、体は馬。その巨体が悟へと顔を近づける。


 怖い怖い怖い怖い。


 不自然な水たまりがあるのが気になったのか、その周りをぐるぐる回る。


 そうだ、鑑定しよう。


 バチィ!


「っ!?」


 電気が走ったかのような音が流れ、鑑定は防がれた。蛇馬モンスターは、もともと黄色だった目を赤くし、辺りを警戒している。焦った……この音、相手にも聞こえるんだ。


 こそこそと逃げ出そうとすると、1つの首の蛇が俺に気がついた。やっべ。


「ジィィィィィ!」

「ジャアァァァ!」


 そいつが叫ぶともう1つの頭も俺の方を向いて叫ぶ。そして、向かってきた。


「うわあああああ!」


 何回も攻撃されたが、壁をかけ巡ったりして悲鳴を上げて逃げていると、大きい広場のような場所に来た。


 ここなら広いし、ルーゲラフラワーに変化すれば時間は稼げるかもしれない。見つけられても毒を放とう。大丈夫。この毒は魔物に有効だ。


 俺は大きく跳ね、天井に張り付いた。スライムならこんなこと容易い御用だ。そこからルーゲラフラワーに変化する。赤い花になり、荒い息を整えた。


「シィィ」


 蛇馬が飛び込んでくる。俺の姿を見失ったことに苛立っているのか、目を鬼のように釣り上げていた。その場で俺の探していた蛇馬だったが、ついにしびれを切らしたのか二股の蛇、どちらも口を開けて雄叫びを上げた。


「ジャアァァァ!!」

「ジィィィィィ!!」


 空気がビリビリと震え、念のため俺は根っこをもう少しだけ伸ばす。遺跡の石の間に根っこを伸ばしていたため、逆に強度が増していた。これなら見つからないーーはずだった。


 急激に力が失われていく。魔力切れかと思ったが、まだ半分は魔力がある。魔力は1分につき1減っていたから、あと大体45分は持つだろう。根っこがシュルシュルと体に戻って行き、地面に落ちる。変化が解け、元の人間の姿に戻った。


「いてぇ……」


 二つの蛇の顔が、勝ち誇ったかのように笑ってみせる。くっそ……!


「ジィィ!」


 1つの首が、今までとはまるで違う猛スピードで襲いかかってきた。もしかしたら、さっきの追いかけっこはただのお遊びだったのかもしれない。


「結局、俺はここまでなのかよ。折角ならあの神様、魔法攻撃ぐらいくれれば良かったのに」


 最後まで悪態をつきながら俺は笑った。


 覚悟を決めて目を瞑る。首に衝撃が走ったが、それだけだった。目を開けると、蛇馬が悟の首に噛み付いている。不思議と痛みは感じなかった。


 まだ助かる可能性はあるかもしれない。


 精一杯の抵抗として、握った拳に魔力を貯め、蛇のほおに向けて放つと驚いたことに蛇馬はあっさりと首から離れ、反対側の壁まで吹っ飛んで行った。


「は?」


 体の中にあった魔力が放出された感覚がある。なぜかは分からないが、蛇馬を吹っ飛ばせた。今なら鑑定ができるかもしれない。


 ルーゲラバイガル

 レベル???

 種族...不明

 状態異常...なし

 HP...4998/5000

 MP...4500/4500

 攻撃...3620

 防御...3021

 素早さ...3750

 魔法...4100


 そこまで見て、あとは弾かれた。それにしても、あの技で2しかへってないのかよ。さらに攻撃力も何もかもハンパねぇ。俺なんかワンパンだ。


 未だ呆然としている蛇馬を横目に、俺は走った。そこで、先ほどの魔力についてとある仮説を思いつく。


 ……俺が花になった時、根っこを生やしたから、遺跡の魔力を吸った? だから一度だけだと思うがあんな攻撃ができたのか。取り敢えず、今は逃げよう。


 ルーゲラバイガルは気が変わったのか、遺跡の奥へと引き返していった。


 それから数分後、俺はなんとか無事に遺跡から脱出した。

遺跡の魔力はその中に住んでいる魔物の魔力を長年浴び続けたおかげで世界有数の魔力に帯びた遺跡となっております。

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