〜死神の思考2〜
少し短めです
「……出られるみたいだな」
超空間から出られることを確認すると、テズは迷わず飛び出した。早く変化スキルをゲットしたい。あの男を殺したい。
そんな気持ちが彼女を動かしたのである。
遺跡からすばやく出て、とある場所へと向かう。もちろん、エルシャルト国だ。あそこにサトルとシーファがいると確信していた。まだ、彼奴等は街から出ていないはずだ。それは、ただの直感だったが彼女の勘はよく当たる。今まで勘は外れたことがなかった。
途中すれ違った人間どもの首を跳ね飛ばし、その魂を食らった。だが、まだ力を取り戻すにはたくさんの魂がいる。もっと、もっと、たくさんの魂だ。
エルシャルト国に着くまでには、人を10人ほど殺していた。すれ違い際と言っても、相手には速すぎて自分の姿は見えていない。ただ、何もわからずに生涯を閉じて行った。それだけだ。
上空からエルシャルト国に入り、人目のつかないところに降りる。今の力が弱っている状況でも、十分にここの国を滅ぼせたがそのために第一の転生者が来てしまっては面倒臭い。暴れるのは力をつけてからにしよう。
テズは大通りに出て、ギルドを探した。幸いなことに、探知能力ですぐ見つかる。だが、受付嬢にサトルたちがどこへ行ったのかを聞いたが個人情報は無理なので、と断られた。
その声に惚れた男たちが近づいてきたが、鎌でその体を真っ二つにする。流石の受付嬢も驚いていた。
「ちょっ、ちょっと?落ち着いてくださいよ、テズさん!?」
「其方が落ち着け。余は落ち着いている。それに、今のは敵が来たからによっての正当防衛だ。もし誰かに尋ねられたとしてもそう伝えとけ」
「……」
苛立ち、思わず切ってしまったが、殺気じみた声で言っただけでことはすみそうだ。余に近づこうと席を立っていた他の男も席へ座って行った。顔は青ざめている。余はそんな奴らを嘲笑するかのようにふんと鼻を鳴らし、前を向いた。
「それで、やはり教えてはくれぬのか?」
「……はい。申し訳ないのですが、それがギルドの決まりなので……」
中々肝が備わっているようだ。あれを見ても考えを改めないなんて。
少しばかり感心したが、すぐにそんな感情は消え失せた。
「すまんな。おかしなことを聞いて」
余が去ると、後ろからはほっとした安堵のため息が聞こえた。数メートル離れているが、後ろを向いたままでも聞き取ることは容易だ。そこまでテズの五感は常時研ぎ澄まされていた。いつなにがされても大丈夫なように。あの時のようなことがないようにーー。
テズは探知能力を全力で解放した。彼女の探知が広がっていく。かつてならば銀河1つの地図を脳内で作り出すこともできたが、今はここの大陸しか探知ができない。それに、この力は負担が大きかった。だから使いたくなかったのだが・・・こうとなれば仕方がないだろう。
すると、かなり先に霧に覆われた滝があった。その中にサトルとシーファの反応がいる。それに、もう1つのこと反応は……ミスト?
テズは仮面の下で嬉しそうに目を細めた。
「彼奴、生きていたのか。てっきり、余は死んでいたと思ったぞ」
これで、楽しめる。あの時みたいに、サンドバックになってもらわないとな。
ミストの幻影は凄いもので、自分に危機が迫ると必ず発動するようになっていた。今はどうか知らないがそれはそれで良く、幻影対策の練習になった。何度も殺しかけたことはあったが。
滝がある方へ向かおうと思った時、身体中が凍りつくようにブルリと震えた。この威圧、存在感……なんだ?なんなのだ?ここまで余に戦慄を覚えさせるものとは、何があるのだ?
何か、不吉な予感がした。だから、サトルの元へは行かなかった。
この感じは似ているのだ。自分のよく知っている人物。いや、自分。そうーー死神に。




