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第31話 帰ったぞぉ

 街に出ると、日の出が始まっていた。俺が組織の中に乗り込んでいる間に一夜明けてしまったようだ。


 ギルドに戻ると、俺のボロボロの服を見て受付嬢のミーノは驚いた表情を示した。


「どうしたんですか!?サトル様とシーファ様は何も変な依頼はやっていませんよね?」

「ああ、すまんな。龍の裁き……だったかシーファ?」

「はい。あいつらは龍の裁きと言って、この街に拠点を作っておりました。私が囚われて、そこをサトルが助けてくれたのです」


 ミーノは目を見開いた。


「本当ですか!?少し、待っててください」


 そう言うと彼女は奥の方へ入っていった。数分後、俺の元に戻ってくる。


「ギルドマスターがお呼びです。こちらへどうぞ」

「あの小僧が?」

「マジかよ……」


 その会話を聞いていた人たちがざわざわと騒ぐ。俺は居心地が悪い気がして、ミーノに先を促した。


「こちらです」


 ミーノについていくと、いつもは見えない場所に階段があった。その上を登り、長い廊下を進む。その中の1つの部屋の前に行くと、ミーノは扉をノックした。


「ライラ様、お連れしました」

「そうか、入れ」


 ん?ライラ?聞いたことが……。


 扉を開けると、鎧を着た女性がいた。あ、ライラだ。思い出した。俺がルーゲラビッグウルフと戦った時に倒れてこの街で助けてくれた人だな。あれはすごく感謝しているぞ。


 ミーノは部屋から出て行く。俺はすれ違いざまに部屋へと入った。


「久しぶりだな、サトル。シーファ」

「本当ですね。あの時は、どうもありがとうございます」

「敬語はいらない。こうやって私も普通に話しているのだから」

「……分かった」


 ライラは俺とシーファを交互に見た。俺は1つ疑問があり、それを聞くべく口を開く。


「ライラさんはギルマスもしていて騎士団の団長なんだよな?それってすごいんじゃないか?」

「いや。私でも、騎士団の団長とギルドマスターを両立することはできない。少し臨時としてギルドマスターをやっているだけだ。今は、彼が不在なのでな」

「ふーん」

「ライラさん、私たちを呼んだ要件って?」


 仕切り直すようにシーファが言う。


「お前たちは龍の裁きのアジトを見つけ、さらに潰してくれた。奴らは気に入らないことがあるとすぐに何かをしでかす連中で困っていたのだ。それに、どこを探してもアジトがどこにあるかも分からなかったが、まさか街の中にあるとはな……」

「灯台下暗しだな」

「なんだそれは?」


 おっと。ここにはことわざがないことを忘れていた。


「身近なことはかえってわからないという例えだ。俺の地元にあった言葉なんだが」


 すると、ライラは吹き出した。


「それは面白い言い分だな。覚えておこう。……それで、灯台とはどういう意味だ?」

「遠くを明るく照らす建物だが、近くは照らせないからこの言葉ができた」

「ほう。中々面白いではないか。……話を戻そう」


 シーファが呆れて見ているのに気がつき、ライラは咳払いをした。


「報酬を与えようと思うのだ。それと、2人のランクアップ。シーファは捉えられたといっていたが、彼女が捉えられたおかげでお蔭でサトルが見つけてくれた。ここは感謝してる」


 複雑な感情がこもった表情でシーファは俺を見てくる。俺は小さく肩を上下した。


「その話だ。本当に、龍の裁きのやつらを倒してくれたことを感謝している。本来のギルドマスターもサトルとシーファに報酬を与えるだろう。それと、その服はボロボロのようだし私が修理代を出してやる。ほら、これでぴったりだと思うぞ」


 お金を渡され、俺はポケットの中へしまった。


「あ、あと、ハンマーを持ち帰ってきたのだが……」


 アイテムボックスからハンマーを取り出すと、それを床の上へと置いた。重さで少しよろめいてしまい、地面に少しヒビが入ったが見なかったことにする。


「これは……」


 クールなライラも少し驚いたような顔をした。


「かなり強いものじゃないか。売ったらかなりの金になるぞ」

「そのつもりだ。普通に武器屋で売ればいいのか?」

「そうだ。防具屋と間違えるんじゃないぞ」


 俺は文字が読めないしなぁ。また道行く人に聞くか。あまり気乗りはしないけど。


「ありがとう。参考になった」


 ハンマーをアイテムボックスにしまう。ライラと別れて部屋に戻った。


「俺は武器を売ってくる。それと一緒に防具屋でこの服を修理しに行くが……シーファはどうだ?」


 怯えた表情でシーファは首を横に振った。あんなことが起こったのだから、当分は外に出ないだろう。それに、俺はシーファを1人にしたくなかった。だから、スライムになりプイに留守番を任せる。


『オッケィ。任せてよ』


 プイの了承が出たところで、俺は外に出た。もちろん人の姿に戻っている。いつもよりも身長が小さいが。


 武器屋でハンマーを売ると金貨3枚になった。中々お高い。嬉しいな。子供であることを疑われたが、聞かなかったことにする。だって面倒いんだもん。


 防具屋に行くと、前の女性がいた。


「君、ここは子供が来る場所じゃないよ」

「俺はサトルだ。ほら、この服」


 俺の服を見ると、すぐに事情を察したのか奥へと消えていく。次に現れた時には杖を握っていた。


 詠唱を唱えて杖を振りかざすと、3回ほどで俺の服は治った。ライラから貰った金でちょうどだったので、そのままギルドに戻る。受付嬢のミーノは俺を見て声をかけた。


「坊や。ここは、君のくるところじゃないよ」


 うん。知ってた。


「サトルだ。俺だよ。用事が済んだのなら部屋に戻るぞ」

「……?」


 呆然としているミーノの目の前を通り抜け、部屋に戻る。シーファとプイが出るときと変わらぬ格好で俺の帰りを待っていた。


「プイ。仕事ありがとう」

『当たり前よ!』


 俺の体の中に吸収されると、俺は疲れたようにベッドに腰掛けた。今日はMPを消費しすぎた。ルーゲラベアーの時が1番やばかったな。体が大きいから結構MPを消費する。しかも徹夜だしな。


「お休みなさい、サトル」


 シーファの優しい声を聞いた途端、俺の意識はブラックアウトした。

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