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第27話 敵のアジト

 サトルがいなくなった後、私は混乱しながらも宿に戻った。ここなら絶対サトルが戻ってくるだろうと信じていたからだ。頭に被っていたフードを背中に戻し、ベッドに座りながら時間が過ぎるのをただ待つ。すると、魔法陣が光った。私はサトルが戻ってきたと思い、思わず立ち上がる。しかし、そこにいたのは三人の男たちだった。全身黒く、顔は確認できない。私はその姿に見覚えがあった。


「貴方達は……」


 体の震えが止まらない。黒い服の右胸のところには龍のマークが描かれていた。


「龍の裁き……」


 シーファが言葉を発すと、真ん中に立っていた男は高らかに笑った。


「ははは。よく覚えてくれていたな。そうだ、俺たちは『龍の裁き』だ。お前を捉えに来た」


 見つかってしまったか。私は奥歯を噛みしめる。


「ガキの頃に逃げたくせに、ここまで見つからないと思っていたが……。わざわざ敵の拠点まで来てくれるとは思わなかったな」

「……拠点?」

「覚えていないのか?まあ、あれはガキの時だしな。それを知らないのなら、俺たちも教えることはないだろう。……やれ」


 2人の男が迫る。シーファはウォールバリアでその進行を邪魔した。窓を開け、ローブを外す。真っ白な翼が広がった。


「やはり。あの時の小娘だったのか!」


 シーファが逃げようとしていることには関わらず、男は笑う。2人の男はウォールバリアによって邪魔されているが、なぜか真ん中の男だけはシーファの背後に立っていた。


「こっちへこい!」


 手首を掴まれ、私はもがく。だが、男の力は強大で私の力などすぐにもみ消されてしまった。


「その翼を使いこなせているか?一旦頭に報告しなければいけない。もう一度言うぞ。こっちに来い」


 私は迷わなかった。


「嫌!絶対に、嫌です!」


 男は眉をひそめる。その手の力が強くなった。


「っ!?」

「このまま俺に抵抗すれば、今ここでその手首だって折れるんだぜ?」


 気がつくと、ウォールバリアを破壊した男たちが私にに迫っている。


 ーーサトル、助けて……。


 彼はここにいない。誰かに連れられて消えてしまった。


 これ以上抵抗しても無駄だろうと思い、力を緩める。ここで無駄な体力を消耗してはいけない。せめて、サトルがもし助けてきた時のために、足手まといにならないようにしなければ。


 男はにやりと笑い、シーファの手首に魔法の手錠をかけた。これは、かけたものの命が尽きるか外すという意志がなければ絶対に外れない。


 シーファは広げていた翼をゆっくりとしまう。男が手をかざした。


「《偉大なる光の精霊よ。空間を繋ぎ移転の力を》」


 地面に魔法陣が現れ、私たちはその場から消えた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その人は女だった。突然現れた俺に感知することができず、汗を垂らして手を挙げる。俺は警戒を強めた。この状況で武器を持っているとしたらこちらが不利になってしまう。


「あ、ああ」


 しかし、女の顔は絶望に歪んでいた。武器はないようだ、と俺は剣に入れていた力を抜く。


「早くしろ。獣人ーーいや、シーファの居場所を!」


 かなり訓練されているのか、女は一言もしゃべろうとはしない。そこで、威圧をたっぷりと浴びせてやった。常人なら気絶するほど、本気でやった。


「くっ……話す! 話すからやめてくれ!」


 ついに女は根を上げた。俺は火魔法を消す。少し剣と喉からも距離を離した。その差といえば、0.5ミリほどだが。


「この街の南の路地にあたしたちのアジトがある。獣人はそこに連れ込まれたはずだ」

「そうか、分かった」


 剣を降ろす。女は安堵した表情を見せた。しかし、俺は剣を横に振ってその首をはねた。服に返り血がつく。この情報をアジトやらに持ってかれては困る。なら、ここで殺したほうがマシだ。……しかし。


 落ちた首からは虚ろな目がこちらを見つめてくる。その瞳は白く濁っていて、死んでいることは明らかだった。


「やはりいいもん見ている気がしないな……」


 人間を殺すのは二回目。あの時はシーファを助ける一心で行動したため少し気にとめただけでそこまで気にはならなかった。だが、今度は違う。今は飛んだ2つの生首をまじまじと見つめることだってできる。俺は、嗚咽を漏らした。


「うっ……」


 ここから立ち去ろう。


 俺は足早にそこから去った。


 一本道の路地に入ると、そこは人気も全くない薄暗いところだった。まだ昼間なのに、ここはどこかルーゲラ大森林を思い浮かばされる。ここにはなにか邪悪な人が潜んでいると気がしてやまない。


「薄気味悪い……ここにいるな」


 ここにシーファをさらったゴミクズ野郎がいることを確信する。それほどの邪気が流れていた。


 歩いていると、1つだけ違和感を感じる地面があった。常人なら気がつかないが、サトルはかけ離れたステータスを持っている。そこから感じる魔力がだだ漏れだった。


 手を触れると、灰色の取っ手が現れた。取っ手をつかみ、引いてみると地下へ続く階段が現れる。


 迷わず中へ入る。ここにシーファがいると直感で感じた。


「お前、なぜここに!?」


 見張りだろうか?男1人が切り掛かってくる。俺はそれを剣で受け流し、片手に火球を宿らせる。詠唱をする暇はないので、無詠唱だったが多少の威力は出た。男の剣の先端が溶ける。動揺した男を躊躇いながらも切りつけた。


「ぐあっ……」


 男は倒れる。俺は見なかったふりをして、奥へと走った。

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