〜死神の思考〜
情報は得られなかったか。
死神ことテズは心の中で舌打ちをした。
なんとか友好的に接していたが、どこかサトルは警戒をしていた。それも最初の頃だけだったが、まだ信用していないのか最後まで《変化》スキルを見せなかった。
ユニークスキルは、相手が使用している時に殺さないと奪えないものだから、タチが悪い。《変化》を使ったところを殺して逃げようと思ったが、まさか魔物退治で一回も使わないなんて。
いっそ、フェンリルを召喚して強い魔物を呼ぼうかと思った。しかし、今はフェンリルのような強い魔物を召喚できない。
魔法陣だけは組み立てられるが、そこからは力不足でどうやっても強い魔物が召喚できないのだ。
「もっと、魂が必要だな」
死神は魂を吸うと強くなる。今日魂を吸ったあの男たちも、その生気をすべて吸い尽くしているためあの後数分も持たずに死んでしまっただろう。
脅しをかけてみるか?そう思ったが、絶対にあの男が脅し程度で変化するとは思わない。力づくだとそのまま死んでしまいそうだし、シーファという女を奪っても変化を使うという保証はない。それから敵対視され、距離を置かれてはなおさらだ。だから、消去法で友好的に近づいたのだが……。
「失敗したな」
結局時間が来てしまった。今の力で超空間から出られる時間は決まっている。長い眠りにつきすぎたのが、欠点だった。
眠りから覚めたとき、サトルの変化スキルを見て余は目を輝かせた。また、パグが力を授けたのだと。
1人目の転生者のスキルも奪おうとしたが、自分が元から持っている不老不死だったので止めておいた。あと一つあるが、それはまた違う話だ。
パグから直接スキルをもらおうと手がけたことがあったが、死神という存在には絶対に破れない神の結界が張っており断念。そこで、パグが能力を授けた生物を狙い始めたのだ。
最初は普通のやつから魂を奪ってスキルを手にし、その時点でほぼ最強となった。そして、パグの能力しに勝負を挑んだところ、呆気ないほど早く勝負はついた。テズが白旗を掲げたのだ。
そして、数々のユニークスキルを奪い続けてここまできた。そして、次のスキルを持った子供が遺跡に入ってきたのだ。テズはそのスキルを見て、一目惚れした。
どうしても、あのスキルが欲しい。
変化というスキル。自分が倒したものにならなんでもなれるということだ。この世に敵がいない余としては、最高のスキルじゃないか。
姿形を変えただけで何倍もの威力を出せるかもしれないのだ。
それはなぜか。
仮に、普通の人間が火魔法を使うとする。1つの火が出るが、そこで変化を使って10首龍へ変化したらどうなるか。答えはもちろん、×10の攻撃を出せることができる。まさに、非の打ちようがない。今の力の10倍という、未知数の力を体験してみたかった。
遺跡で見かけたときに殺したい気持ちがあったが、それはできなかった。何故か自分の作った遺跡だとうまく力が発動できないのだ。そのときは目覚めたばかりで外へ追う気力もなかったし、不運が重なったと言えるだろう。
超空間で、テズは考える。これからどうやってあのスキルを奪うか、だ。並列思考のおかげで案はすぐに浮かんだ。
「魂を食って食って食いまくって、力を取り戻すしかないな」
それまではおさらばだ。長く超空間から出たいのならば、それしか方法はない。
テズはーーいや、死神は仮面の中で不敵に笑った。
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「おいおい。ビックリしたな。急に現れて、転移魔法でもなんでも持っているのかい?」
ライズは驚きながら言う。
「もう1人の女の人はどこ行ったんだ?」
事情を説明すると、ライズはなるほどと頷いた。わかってくれたみたいだ。
「それにしても、あの嬢ちゃん転移魔法が使えたんだな。凄いじゃないか」
「俺もそう思うな」
馬車の中に入り込むと、お茶が用意されていた。これどっから来たんだ?
飲んでみると、その温かみが身体中に染み渡った。これは、紅茶だな。俺紅茶好きなんだ。何しろ中学時代には吐くほど飲み続けて……あ、吐いたんだった。
暗い過去はともかく、テズは大丈夫なのかな?急用ってなんだろ?
「サトル、今日は変化を何故使わなかったのですか?」
「ああ、変化な。ただ、忘れてただけだ。それに、剣の性能も試したかったしな。今度ルーゲラウルフにも変化してみるつもりだ」
ステータスどうなったかな。そういえばだけど、行きの馬車の中で密かに鑑定さんマナーモードにしたんだよ。だから、経験値を獲得しました、とか聞こえなかったんだと思う。俺も戦闘中に雑音が入るのも嫌だからな。
サトル・カムラ
種族 人間種
状態異常 無効
レベル33
HP...530/530
MP...862/865
攻撃...201+10
防御...190+10
素早さ...208+10
魔法...279+10
《スキル》
・成長 ・鑑定・火魔法・風圧感知・言語理解
《ユニークスキル》
・変化
《称号》
・神に気に入られた者・感知ができないただの馬鹿・怒ると怖い・仲間思い・馬鹿買い・詐欺師・
おお、1レベ上がってる。あの雑魚で上がるんだな。ギリギリまで来てたったことか。
ライズの声がして、外を覗くともうギルドの真ん前だった。やはりこの馬車は快適でいいな。時間を忘れてしまう。
ライズに礼を述べ、ギルド内へ入る。受付嬢のミーノがにこやかに対応してくれた。
「こんにちは!ここに討伐部位と依頼紙をお願いします」
指定されたところにゴブリンの耳15匹分を置くと、ミーノはそれをしっかりと数えて微笑んだ。
「ちょうど15匹ですね。報酬と合わせて銀貨2枚と銅貨5枚となります」
金を受け取ると、俺は宿のお駄賃のことを聞いた。今日も泊まれればいいな、と思っていたからだ。
「ああ、昨日と同じ部屋が空いていますよ。一泊銅貨2枚です」
お安い!てっきり銀貨使うのかと思ってた。
「じゃあ、2泊分頼む」
「はい。まだサトルさんとシーファさんは冒険者登録して間もないので特別に銅貨2枚でいいですよ」
「ありがとうございます」
シーファが頭をさげる。そして、銅貨を払うとうずうずといった感じで俺を見つめてきた。俺は覚えている。
「それじゃあ今から街を回るか!」
「はい!」
俺たちはギルドから出て、街を回り始めた。




