第24話 ゴブリン退治
この森はどこなのだろう?
ふと、疑問が頭に浮かぶ。馬車の中で待機しているだけであって、他の事は何も聞いていない。流石に依頼に向かった森の名前ぐらい知っておこうと思った悟は鑑定を使う。
《ザン森林 低ランクにお手頃な魔物たちが住んでいる森。食料となる魔物も多数住んでいるので、食料調達にとくる冒険者が多い》
初心者が来る感じの森だな。でも、なんでそこにゴブリンがいるんだ?ゴブリンって装備を持ってたり知能が少し高かったりするんじゃないのか?
《魔物や植物などの知識を与えるのが鑑定の仕事であります。その他の会話はできません》
ああ、出たよいつもの。もう何も言わんぞ。
ところで、なんかルーゲラ大森林にいた時よりかはずっと気が楽だな。何故だろ?
自分で考えていると、心が清々しい気持ちに満たされていった。森の空気っていいなぁ。あ、ルーゲラ大森林にあったうずうずしいオーラがないのか。だから、こんなにのびのびとできるんだな。
「サトル、気を抜かないでください」
伸びをしているとシーファに注意された。すんまへん。
「で、依頼は何なのだ?」
あれ?テズには話してなかったっけ?まあ、いいや。(口癖)
「ゴブリン10匹の討伐だ」
証明するために紙を見せると、テズは唸った。
「なんだ、そんなものか。其方等のことだから、フェンリルを倒すほどだと思っていたが」
「馬鹿にしないでください。フェンリルなんて見たこともない、伝説上の生き物ですから」
「む、そうなのか?余がいた時代ではそこ等へんにゴロゴロといたぞ」
シーファが笑う。やっぱり話についていけないのでは?
「フェンリル……一度は見てみたいですね」
シーファが夢見がちで呟くと、テズは前方に手を掲げる。俺は魔物が現れたのかと剣を構えた。テズの手の平に魔法陣が現れ、それはどんどん大きくなっていく。シーファが目を見開いた。
「な、何をしているのですか?」
「いや、フェンリルを召喚しようと思ってな。どうだ?従魔にでもするか?」
無理無理と言いたげに、必死に首を横に振るシーファを見てなのかテズの魔法陣はしぼんでいった。意外とテズって天然なのかな?
「それでいいのだ。フェンリルなんて間違ってもみたいと言うな。その目の前に現れたら、瞬きもしないうちにその命を散らすぞ」
ちゃんとシーファのことを考えてくれたのね。でも、本気でフェンリル召喚しそうだから怖い。
「でも、テズさんは昔フェンリルがゴロゴロいるって……」
「馬鹿をいう。そんなにフェンリルがいたらこの世界はもうないぞ」
試していたのか?そう思う。シーファはまんまと引っかかってしまったようだ。
「さて、来たようだが」
テズはどこから取り出したのか剣を構える。
「鎌じゃないのか?」
「然り。鎌は破壊力が強すぎる上に滅多なことには使わない。普段はこの剣だ」
デス・ソード
攻撃+30
魔法+30
はあぁ?こわぁ!俺の剣がゴミみたいじゃん!なんだよ、鎌よりも弱くてこれって可笑しいだろ!
鎌を鑑定するともっと自分の剣に自信が持てなくなりそうだったので、俺は鑑定をしなかった。
「ギィィ!」
前方から声。俺たちが剣を構まえなおすと、ちょうど15匹ほどのゴブリンの群れが現れた。ゴブリンは15匹を超えるとCランク指定なのだが、ここの三人は何も知らない。
「なんだ、すぐ終わりそうだな」
最初に動いたのはテズだった。一歩踏み出し、その羽織っている服がふわりと揺れたかと思うと8匹ほどのゴブリンの首が宙に飛んだ。くっ。俺には見えなかった。あの時の戦いなんて今の力の10分の1?いや、もっとかもしれない。
「半分殺したが、あとは依頼をした人が倒すのが基本だろう」
テズはもう戦わないといった感じで血に濡れた剣をまた何処かへしまった。
俺とシーファは残り7匹になったゴブリンを睨み、ゴブリンたちも睨み返す。俺は隙を狙って一体の鑑定をした。
ゴブリン
種族...ゴブリン種
状態異常...なし
レベル5
HP...32/32
MP...1/1
攻撃...25+2
防御...5
素早さ...12
魔法...2
《スキル》
・嚙みつき・意思疎通
《称号》
・武器使いの魔物
解説
知能もあり、人の使っていた武器を盗んで使うため、厄介な魔物として知られている。肉も不味く、当発部位の耳を持っていっても銅貨1枚という価格なので、冒険者たちからは避けられる魔物だ。繁殖力が強く、すぐに子供が生まれるためこの世界からゴブリンが絶滅することはないだろう。
うわ〜。そういう感じなんだ。でも、依頼は銀貨一枚だったよね?それプラス等発部位だから……銀貨2枚と銅貨一枚!結構お高いね。やっぱしいい依頼を選んだよ。
正直言って弱いので、サクサク倒していこう。まずは1番近いやつを殺すぞ。耳を残せばいいから、体を……って、げげっ!?。こいつら全員鎧着てんじゃん。これは難しい。ならテズのやったみたいに首を狙うか?よし、そうしよう。
「首を狙うぞ、シーファ」
「分かりました!」
シーファは俺の狙っているゴブリンに向けて風圧変化で支援した。後ろから風を送り、油断していたゴブリンはほんの少しだけ体勢を崩す。そこを俺が見逃さない。まあこんなことをやらなくても楽々で勝てちゃうんだがここはコンビネーションだ。
ゴブリンの首を跳ね飛ばすーーことはできなかったが、首から血を吹き出して倒れる。
風圧で後ろにゴブリンが迫っている感覚があったので、剣で首筋の後ろを薙ぎはらうと、ちょうどゴブリンの顔面に剣が当たった。
「ギィ!」
顔をえぐられたゴブリンは絶命する。シーファはすでに3匹倒していた。俺、負けてね?よし、ここは新しく覚えた魔法でちょいちょいっとやっちゃいますか。
手の平を困惑している残りのゴブリン2匹に向け、魔力を込める。すると、火の玉が出てきてゴブリンに襲いかかった。
「ギギ!」
いち早く危険を察知したゴブリンが逃げていくが、もう遅い。爆発の範囲に入っている。
火の玉が光を出して爆発すると、2匹のゴブリンは黒こげになって死んでいた。耳は……残っている。大丈夫だな。
「よし、テズ。終わったぞ」
「漸くか」
テズは近くの木に腰掛けていたが、すぐに立ち上がった。その足元にはきっちり15匹分のゴブリンの耳が置いてある。い、いつの間に……。
ゴブリンの耳を受け取り、シーファが持っていた袋に詰めて馬車へと向かった。そこまでの道中に、テズが足を止める。
「どうした?」
「少し急用ができてしまってな。余は行くぞ」
「そ、そんな。せっかく仲良くなれたのに……」
仲良くなれたかどうかは分からないが、本当にシーファは悲しそうにしていた。
「すまんな。またどこかで会おう」
そう言うと、俺たちの景色が変わり、馬車の目の前へと転移していた。




