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第227話 魔族との出会い

「で、君はのこのことまたボクの前に現れた、と」

 

 目の前でマオウが嗤う。オレの出現に軍を止めたせいか、至るところから視線が突き刺さる。

 

「まさか、こんな短時間に2回も戦うことになるとは思わなかったよー。一度殺されかけて戻ってくるその度胸は認めるけどさ」

 

 勝てると確信しているのか、マオウは隙だらけの背中を見せた。オレを馬鹿にしているのか。だが、罠ということは一目瞭然だ。

 

「ボクとしては、さとるにその力を分けて同時に襲ってくるっていうのが1番辛い手だったけどねー。君の力も増すし、さとるも強くなっちゃう」

「…………」

「言葉も出ない? 自分の愚かさにかなー?」

 

 マオウが手をあげると、周りの魔族たちが一斉に武器を構えた。魔法の詠唱をし始める者もいる。

 

「残念だけど、さっきみたいに戦ってる暇はないんだよねー。ほら、果ての大地ももう少しで抜けられるでしょ? 人間が防衛に集まる前に、さっさと始末したいんだよ」

 

 マオウが振り向く。その表情は、冷たかった。

 

 ごく稀にマオウが見せる、冷徹な顔。一体どんな過去が彼女にそんな顔をさせているのか、オレには判別もつかない。

 

「やれ」

 

 

 四方八方から魔法が飛び、地面からは魔族共が武器を持って押し寄せてくる。

 

「防壁」

 

 しかし、その攻撃は一枚の魔法の壁により全てが阻まれた。隙を晒した魔族共に特大の魔法を叩き込む。

 

「雷神風雲」

 

 範囲殲滅魔法は少なからずの魔族を巻き込み、散った。マオウが両腕をふるい、魔法を消し飛ばしていた。減ったとはいえ、魔族はまだ地面が見えないほど十分に残っている。

 

「へー。もう、契約(・・)してたとはね」

 

 マオウが可愛げなため息を漏らした。

 

「面倒くさいねー。でも、どうして契約したのにわざわざ敵軍なんかに突っ込んできたの?」

「…………」

「黙秘かー。まったく、さとるは精霊使いが荒いなー」

 

 オレのどこかで、ぷつんと何かが切れた。

 

「……オマエが、オマエが言うなッ!」

 

 叫ばずにはいられなかった。

 

「んー? ボクは感じたことを言っただけだよ?」

 

 それなのに、マオウは何も知らないような顔をして惚けやがった。

 

「オマエは、オレの仲間を、仲間たちを!」

「ああ、あのこと。でもさ、仕方がなかったんだよー? キミを探すのに少しの犠牲は大して痛くないしねー。元々精霊の世界なんてどうでもいいし」

「どうでもいい、だと!? オレたちの仲間を、罪もねえのに殺しやがってッ!」

 

 コイツは自分の力に似合ったセイレイを見つけるべく、手当たり次第に探していった。オレが見つからない間、それもだんだんエスカレートしていき、終いには拷問をするように

 なったッ!

 

 セイレイが逃げ出せない特殊な部屋を作り出し、セイレイを消すことのできる薬でじっくりといたぶっていった。

 

 オレの仲間は決して口を破らなかった。オレの情報すら、一切口に出さなかった。

 

 でも、マオウは諦めなかった。セイレイが死んだらまた次のセイレイを騙して部屋まで連れてきて、拷問の繰り返し。見過ごすわけにはいかなかった。

 

 オレは無条件でマオウの前に姿を現した。これ以上、仲間の被害を出さないためにも、オレがマオウに従うしかなかったんだ。

 

 セイレイに洗脳は効かない。だから、オレはジブンの意思で、マオウに従わければいけなかった! 今まで生きていて、これほどまでの苦痛はなかった。

 

 特に恨みがない劣等種族共を殺せと命令され、仕方なく行った。そのせいで国どころか大陸を滅ぼしてしまった。

 

 そのとき、そこにいたセイレイたちも、オレの手でーー。

 

 地獄のような日々だった。

 

 否、地獄だった。

 

 オレは逃げられる隙を窺っていた。マオウを倒し得る存在ーーそれを密かに探していた。

 

 見つけたのは、シロ。当時は気がつかなかったが、シロよりもサトルという小僧の方が上の存在であることも知った。

 

 コイツなら、可能性はある。

 

 オレは確信する。そして、偶然を装って接触を試みる。マオウに気づかれないためにもギリギリを演じられたのはジブンを褒めたいくらいだ。シロを殺しそうになってしまったのは誤算だが。


 コイツだけはジブンの手で殺さなければいけないと思った。これは、オレジシンの問題。他のヤツラを巻き込む道理はねえ。

 

「オマエはジブンのしでかしたことがわからねえのか! セイレイが絶滅すれば、世界の秩序も保たれなくなるッ! それが分かっててやってんのかッ!」

「うん。知ってるよ、そのくらい」

 

 マオウの声が一段と冷ややかになる。

 

「だからこそ、殺すんだよ。魔族も人族も精霊も死んで、何もかもを終わりにする」

「テメェ、正気か!?」

「正気じゃないよ。狂ってるよ。この世界も、みんなも」

 

 そう言って、マオウはマゾクを見回した。

 

「こいつらをまとめあげて、人族と戦う。ボク1人じゃ敵わないことだってあるんだよ。だからって、こんな奴らの力を借りなきゃいけない。『皮肉』っていうんだよね……」

 

 言葉が出なかった。マオウはどこか、儚げな光を目に灯していた。

 

 過去に何かがあった目。大切なモノを失った目をしていた。セイレイを亡くしたオレにはわかる。

 

 でもーー。

 

「だからって……セイレイを殺していい理由にはならねえッ!」

「キミにはそう思えるんだろうねー」

 

 マオウが間延びした口調に戻った。

 

「でも」

 

 マオウが幼げな顔を歪ませる。

 

「ボクには邪魔な存在にしか見えないんだ」

 

 足首に痛みが走る。

 

 見ると、オレの影から出た黒い手に足を掴まれていた。

 

「消滅」

 

 ま、まずいッ!

 

 振り解こうとするが、間に合わない。……オレは、死ぬのか? ナカマの想いも無駄にしてッ!

 

 刹那、手によって下に引っ張られた。すぐ真上で空間が歪む。状況がよくわからない。この手はマゾクがやったことじゃないのか……? 

 そうであったら裏切りもいいところだ。しかし、洗脳されているマゾクらに何かができると思えない。

 

 奇跡的に消滅を避けられたことはいいが、このままでは地面に叩きつけられる。その隙を狙ってもう一度マオウはスキルを発動させるだろう。

 

 ジブンの体の表面に魔法の障壁を張った。これで少しはダメージを緩和できるはずだ。いざとなれば最終形態になる切り札だってある。

 

 地面が迫ってくる。

 

 ずんっと違和感があり、あたりは暗闇に閉ざされた。

 

「ッ!?」

 

 何が起こった!? もしかして、今の一瞬で気を失ったか!?

 

 ここはオレの夢の中であるという可能性もある。まずい、このままではマオウに!

 

「お前、こんなところで何をしている」

 

 こ、声?

 

「後ろだ」

 

 振り向くと、額からツノを生やしたマゾクが立っていた。いや、立っているのか?

 

 周りは闇に閉ざされている。上も下も横も、真っ黒だ。地面なんて見当たらない。というよりも、マゾクだ。オレをこんなことにしたハンニンというわけになる! 

 早く目覚めねえと、死んでしまう!

 

「答えろ。お前はここで何をしている?」

 

 素早く魔法を構築。……できなかった。術式を組もうとした途端、バラバラに分散してしまう。

 

「言っておくが、ここで魔法は使えない。しかし、仮にも俺はお前を助けたのだ。命の恩人に向かってそれはなんだ」

 

 マゾクは表情には出さずとも、怒っているようだった。それに、首から口にかけて何かを巻いていて目しか見えない。表情が読み取りづらいのだ。

 

 そして、このマゾクからは敵意が感じられなかった。瞳には知性の光が宿っているためマオウに操られている線は考えづらい。

 

 本当に助けてくれた、のか? …………オレの覚悟を無駄にしやがって。

 

「チッ。無駄なことを」

「失礼だな。魔王の偵察にやってきたところ、交戦しているお前を見つけたんだ。見たところ精霊だが、何故こんな場所にいる? 何故魔王と戦っている?」

「お前には関係ねえ」

「…………怪しいな。悟にも一応伝えよう」

「あ? 今、サトルっつったか?」

「それ以外に何がある?」

 

 どうやらコイツは小僧を知っているらしい。どんな縁だか。

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