第226話 謝罪と出陣
その後、俺はとあるギルドの一室に入った。
「で、話したいことってなんだ? まさか、プレッシャーに負けてこれから自害しに行くとかじゃねえだろうな?」
机の上に座っていたガームが茶化してくる。ここにいるのは、俺とガームだけだ。
言いたいことがあった。これだけは、どうしてもいいたかった。
「ガーム」
「……?」
何か感じ取ったのか、ガームはふざけた表情を引っ込めてくれた。
「すまなかった」
腰を曲げ、俺は謝った。
「ど、どういうことだ? お前に謝れる筋合いはないゼ」
珍しく困惑した様子のガーム。俺は言葉を継いだ。
「止められなかった。魔王へ行く、ガームを。これはパーティのリーダーでもある俺の失態だ。危うく仲間を死なせるところだった。本当に、すまない」
「…………」
ガームは何も話さない。
「お前からは違うと思うが、俺からはガームは立派な仲間なんだ。だから、死なせるわけにはいかない。仲間は俺が守ると決めていたのにーー」
「ああ、もういい。めんどうくせえ」
ポンと頭を軽く叩かれた。
「顔をあげろよ。リーダーがみっともねえ」
顔を上げると、目の前にガームが見えた。
「それにな、オレはマオウのところに行ったこと、後悔してないゼ」
「え……」
「踏ん切りがついたのかもな。それまでは本当に裏切っていいのか心の奥で迷っていた節もあった。そこを、劣等種族共が後押ししてくれたんだろ?
だからオレは、後悔してないゼ」
……なんだ。
俺よりも、ずっとリーダーが務まる性格じゃないか。いい心を持っている。俺がいうことじゃないけどな。
「ていうか、こんな些細なこと普通謝りにこないだろ」
「え?」
「オレのことをあのままで放置しても死ななかったゼ?」
「ええ!?」
「なんてったって、精霊の頂点に立つのがオレだからな。頭と腹をなくしたくらいでくたばってちゃ王は務まらねえよ」
じゃあ、何? シーファの努力は? 俺が頭を下げたことは? あれれ?
「ケケケ。意味がなかったな!」
意地悪く笑うガーム。ほんと、嫌なやつだよ。
「あ、そうだ」
俺はもう一つ話したかったことを語った。
「俺がいうのもなんだけど、絶対に1人で行動しないでくれ。魔王のところに行くとか、そういうのね。俺が許さんからな!」
「たりめーだ。あんなバケモン、ダレが単騎で突っ込むかっての」
「それもそうだな」
俺たちは笑い合う。
「じゃ、そろそろ準備の最終確認に移るわ。ガームもいつでも行けるようにしとけよ」
「おぅ」
俺は部屋を出た。
これが、俺とガームとの最後の会話となった。
「なんて嘘をついて、騙されるところが素直なんだよな。精霊のことも…………マオウのことも」
ーーーーー
「ゲシュタルトオォォォォォ!」
突然大声を出したもんだから、シーファがビクッと体を震わせた。
「ど、どうしたんですか? 急に叫び出して……げしゅたると?」
「いや、特に意味はない。あるっちゃあるけど、叫びたくなっただけ。なんか言いやすいじゃん?」
「は、はぁ……」
すっごい引かれた。
俺たちは冒険者を引き連れてラギ森林に移動中だ。ミィトが先に出発してしまったため、俺が指揮することになった。道中だけ。ま、ぶっちゃけ丸投げである。ひどい。
ちなみに俺が指揮をとることに反対する者もいた。元は普通の衛兵だしね。ミィとの代理と説明するとようやく納得してくれたよ!
「「「ゲシュタルトオォォォォォッッッ!」」」
と、背後の冒険者たちがなんか叫び始めた。俺の真似してね?
「全く……戦場前にゲゲシュタルトとか叫びやがって……」
「最初に言い出したのはサトルでは?」
…………。
あ、でも士気は上がってるみたい! 結果オーライ!
なんか気に入ったらしく、ラギ森林に着くまでずっとゲシュタルトゲシュタルト叫びまくってた。うるさいっての。俺が元凶だけど!
〈見えたわ! 魔王の軍勢!〉
お、プリン。
プリンは上空からの偵察を行なっていた。俺の横まで降下してきて、告げてくる。
「うわ、なんだあれ!? ドラゴンか!?」
「さっきからなんか飛んでるとは思ってたけど、マジかよ!」
「しかもあれ光龍じゃね!? 初めて見たわ! あんな化け物も味方につけてる……!?」
「本人はそれこしちゃって人外? アーヌ人外説」
「龍の頂点に君臨する者とか」
「超あり得る。さすが人外」
アームの知らないところで急激に株価が上がっています。これ戻ったときとかにどうなるんだろう。冒険者に囲まれて、龍飼ってるのか!? とか話しされて……。
うん。アーヌよ、強く生きろよ。
ーーミィトの姿は見えたりする?
シロからプリンに質問が。プリンは頷いた。
〈ここからほぼ真っ直ぐのところにいるわ。魔王軍の正面に立ってる。軍とはまだ距離はあるけどね〉
なるほど。じゃあいきなり不意打ちくらうってのはないかな。
ドオオオォォォンッッッ!
前方から粉塵が! なんでだよ! フラグ回収はやすぎ!
「ちょ、意外と風すごい!?」
なんでシーファたちはそんな平然としてるんだよ! くそう、ステータスめ!
結界!
広い結界で包み、冒険者たちを守る。相変わらず結界が得意ですね。そうなんですよ。
あ、でもFランク冒険者とかちょっと飛ばされてる。支障はないし、大丈夫だよね。あまりダメージも負ってなさそうだし。
風が止み、俺は結界を消した。
「…………oh」
眼前には裸になったラギ森林ーーラギ草原が広がっていた。
力加減間違ってませんか?




