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第222話 マオウとオレ

 全速力で飛んで帰国。因みにシロが飛んでいる。


 冒険者ギルドに入ると、そわそわしたミィトがギルド内を歩き回っていた。


「あっ! サトル!」


 俺を見つけると、一瞬目を逸らしたもののすぐに気がつく。姿はアーヌだしね。仕方がないよ。


「こっち」


 部屋に案内され、椅子に座った。防音結界を張っておく。やっぱりアーヌの体だと結界が使いやすい。適正様々だ。


「待っていたってことは……知っているんだな?」

「…………」


 沈黙を肯定と受け取り、俺は話を進める。


「一応言おう。魔王が進軍を始めた。それも、8時間前」

「時間がありません。今すぐにでも迎え撃つ術を考えなくては」

「そう……だね。でも、もう……」


 ミィトが言葉を濁す。


「もう?」

「ラギ森林から、魔王軍が見え始めてるの」

「……マジか」


 俺たちからは見えなかった。つまり、見張り台があるのだろう。


「時間がない。なさすぎる」

「うん……。私以外のギルマスは動けないし、こんな絶望的な状況、始めて」


 重い空気に支配される一室。何か話そうとしたが、どんな言葉も空回りしてしまいそうだった。開きかけた口を閉じる。


『ケケケ。アーヌとやらはいないのか?』


 ガームが念話を飛ばす。姿は見せてないが、ミィトにはちゃんと伝わったみたいだ。キョロキョロと辺りを見回している。


「聞こえた?」

「ああ。っていうか、俺たちの仲間だ。警戒することはない」

『お前と契約を結んだつもりはないがな』


 "契約"という言葉に過剰に反応したミィト。


「契約……!」


 俺を見てくるが、誤解を解くべく首を振った。


「違う! 契約したのはシロ! そもそもミィトが忠告をくれる前に契約は終わっちゃってたから止められなかったんだって! 俺のせいではない!」

 ーーひどい! 少しはかばってくれてもいいのに!


 シロがいじけてそっぽを向いた。じょーだんじょーだん。あははー。


「シロ、こっちに来てください」


 シーファが胸の前でシロを抱える。


 ーーシーファ大好き。悟嫌い。


 ひどい!


 ーーどっちが!


「ちょっ、ちょっと……」


 ミィトが困ってるのを見て、ビシッと姿勢を正す。


「どうぞお話の続きをしてくださいませ」

「う、うん。アーヌはまだ帰ってないよ。クエストに出て、それっきり」

「まずい。かなりまずい」


 あいつがいないとろくに対抗せずに終わる。


 アーヌカムバアァァァック!


 無理か。距離が離れすぎているのか、アーヌの思考は読めそうにない。帰ってきてくれることを願うしかないな。


「どんなクエストを受けたんですか?」


 あ、その手があったか。


「ええっと……少し待ってて」


 ミィトが退室する。


「なぁ……ここはオレが足止めに行くってのも手じゃねえか?」

「え、ガームが……!?」


 彼からそんな言葉が出るとは、驚きだ。


「べ、別に、役に立ちたいとかそんなんじゃねぇからな。マオウとオレの仲だ。オレが行った方がゴウリテキってやつよ」


 まあ、今進軍をしているのなら時間稼ぎは重要。俺が行っても戦闘が早まるだけだし、意味がない。シーファたちもそうだ。


 もし、シロがガームと契約を交わしていたことを知られていたらまずいけど……でもなぁ。危険だよね。


「オレが行くと言ったら行く。わかったか、劣等種族共」


 引いてくれる気がしない。……本人がやる気なのだから、行かせた方がいいのだろうか。


「サトル、これだよ!」


 ちょうどその時、ミィトが帰ってきた。アーヌの発注した依頼紙を持ってきてくれたみたいだ。


 彼女から渡された依頼紙に目を通し、驚愕する。頭を抱え込みたくなった。


 横からシーファが覗き込む。


「こ、これって……"果ての大地の調査"!?」


 入れ違いになったか……。


 ーーそれに、魔王と会ったら……。


 あれ? もしかして詰んでる?


『ケケケ! そのためにオレサマがいるってわけだ! 行ってくるゼ!』


 え、ちょ、待。


 ーーもう行っちゃったみたい。


 はや。気合い入ってんなー。


「私は軍を調整してくる。サトルたちも、戦う準備を!」

「「「了解!」」」

「……と言ったものの、なにすればいいんだろう?」

「締まりせんね……」


 シーファに苦笑いされた。




 その頃、マオウ軍。ガームもといオレが足止めをするべくマオウの元へ向かっていた。


 相手にはオレが契約を破棄したことなんぞ知れ渡っているだろう。近づいた瞬間、一斉攻撃を浴びること間違いなしだ。


 それでもオレはここまで来た。そろそろケジメをつけなければいけないからな。


 軍を上から見た光景は、さながらアリの大群のようだった。その後方にマオウはいる。


 オレが近付くと、マオウははたと足を止めた。気配を感じているらしい。


 カノジョが手をあげると、軍の進行が止まる。前の方は見えないはずなのに、どうやって判断しているのか。


「やあ。ガームくん。ボクの元に帰ってくる気になったのかなー?」


 にこにこと笑みを浮かべながら、オレの方を見る。


「それとも……既にボクたちの敵なのかなー?」


 "敵"という言葉に反応し、軍がざわめいた。オレの姿は見えないはずだから、まだ攻撃はされない。


「まあ、後者だろうねー。契約も破棄されちゃったし、どうせ足止めにきたとかそんな感じでしょ?」


 やはり見透かされてやがるか。


 ここからの挽回は厳しいか……?


 なら……。


『ケケケ。そうだよ。足止めにきたんだよ。だから、どうした? マオウではオレを倒せねえゼ! いくらでもかかってこい! オレがアイテをしてやるゼ!』


 その言葉と同時に姿を見せた。軍の中では弓を構える者、魔法を唱える者が出始める。周りの兵士の槍が全てこちらに向いた。


「ボクがやる。君たちは進軍を止めないで。ここで全員が戦ったらそれこそ向こうの思う壺だからねー」

「「「了解しましたぁっ!」」」


 軍は進んでいく。


「さて……ここでガームを潰しておけば、あとあと有利になるのは間違いないよねー」


 マオウの目が光る。


 オレは空間の揺らぎを感じ、その場から退いた。


「あー避けたかー」


 マオウは今、消滅スキルを使用した。不意打ちでオレを殺そうってこった。


「んな攻撃に当たるわけねえ。少し見ないうちに腕が劣ったか? マオウ」

「錯乱させようとしてるー? ボクには意味がないよ。精神的には誰よりも強いからさー」

「ふん」


 魔法の準備をする。マオウも小さな魔法陣を展開していた。


「フラッシュ!」

「光壁」


 オレの放った光は結界によって阻まれた。


 そう。今まで行動していたこともあり、マオウはオレの攻撃パターンを熟知しているのだ。しかし、オレはマオウの攻撃パターンを知らない。カノジョは余程のことがない限り力を見せないからだ。


 光が収まる。そこにマオウはいなかった。そして、オレも。


 地面が弾けとび、オレとマオウは衝突を繰り返す。


「闇球ッ!」


 マオウが右手を振っただけで闇球はかき消える。


「馬鹿力が……ッ」

「君に裏切られたせいで、これでも力が低下してるんだよ」


 戦いは熾烈を極めそうだった。

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