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第221話 ドローン

 やってきたのは、ラギ森林。その林の奥に果ての大地がある。


「やっぱりシロがいると速いなあ」


 俺たちはシロの背に乗ってここまできたのだ。


 シロが誇らしげに胸を張った。


 ーーでしょでしょ?


「サトルなら走ったほうが速いのでは?」


 なんか聞こえてきたけど、無視しよう。俺はそんな人外なことはできない。そう! できないんだ!


 ズシンと地響きを立て、プリンも着地する。その体が小さくなり、人型になった。

 

「ノリでついて来たのと同じなんだけど、ドローンって何?」

 ーー空を飛ぶ小型の機械だよ。

「へえ。今時そんなものがあるのね」

 ーーこの世界にはないと思う。

「……? そうなの?」

「もうそろそろですよ」


 シーファがレーダを見て呟く。プリンは興味ありげの顔で上を見上げた。


 ブーンと音を立てながらドローンが飛んでくる。その下部分にはカメラが搭載しており、レーダーに連動してドローンが映す映像を見ることができるのだ。


「てってれーん! ドローン!」


 俺の手の中で動きを止め、それを掲げた。


「これが、どろーん」


 プリンはまじまじとドローンを見つめる。手で触れて、すぐに引っ込めるがドローンが何もしないのを確認すると上からつまみ上げた。


「なにこれ……? さっきまで空を飛んでいたのに、どうして動かないの? もしかして死んだふりとか?」


 息を吹きかけたり、揺らしてみたりしているが勿論ドローンは動かない。


「念のために撮っておいた映像を見てみるか」


 カメラをプリンに取ってもらい、レーダーと接続。上の部分がスライドし、映像が映し出された。


「なにするの?」


 プリンが覗いてくる。


「まあまあ、見てなって」


 頭上から撮った魔王城が見える。


「想像通りで逆に拍子抜けするな」

「はい」


 夢の国にありそうな立派な城。しかし禍々しい黒の炎がその雰囲気を台無しにしている。城も白銀ではなく、漆黒に支配されている。


 いかにも魔王城! って感じだ。


「ドローンは果ての大地のマッピングもしています。これで魔王城の位置も正確にわかるはずですよ」


 レーダーをいじり、地図を映す。世間では靄に隠されていた果ての大地のマップが、正確に表されている。


 魔王城は果ての大地の奥地にある。大体、北東の位置だ。果ての大地の切れ目は崖になっており、その先は海。ここまで行った人はいないだろう。


「いますよ」

「え、そうなの?」


 そのことを言うと、シーファが予想外の一言を飛ばしてきた。


「はい。昔の勇者は単身で魔王城に乗り込んだみたいですしね。果ての大地のマッピングくらいはしているでしょう」

「くらいって……」


 どんだけ大変だと思ってるんだ? こっちはドローンがなければほぼ詰んでたのに……。地図作りにうだうだしている間に攻められて終わりだろうな。


「なんでそんなことを知ってるのかしら?」


 プリンが首を傾げる。俺も気になっていたことだ。


「歴史本に書かれていますよ? その後勇者は魔王によって相打ちになったと記されていました」

「相打ちか……。じゃぁ、違う大陸にいるって噂の勇者はまた違う人物なんだ」

「はい。勇者は魔王の消滅スキルにより消されました。最後の足掻きだったんでしょうね」


 それで、新しい勇者が召喚されたってことね。


「なんか、おかしくない?」


 しかし、プリンはシーファの話を聞いて疑問を感じたようだ。


「私、勇者がいる大陸に一回行ったことがあるじゃない? 蟹をとりにいったんだっけ? まあ、そこら辺はどうでもいいとして……勇者に会ったのよ。私」

「えっ!?」


 とんでもない発言に硬直する。


「どういうことだ? 勇者に会ったって……」

「言った通りよ。勇者は蟹を取るのを手伝ってくれたりした優しい人だったの。けれど、今の話を聞くと……なんか、違う気がするのよね」

「どういうことだ?」

「勇者はね、自ら語ってくれたの。"僕が魔王を封印したんだ。その時、色々あって消されちゃったけどね。今はこうして代わりの体で行動してるわけ"とか、そんなこと言ってたわ」

「嘘をついてるようにしか思えません」

「ああ。どうせ、からかって楽しんでるだけだと思うけどな」

 ーー……シロ、シーファの横で一緒に本とか読んでたけどさ。


 それまで黙っていたシロが会話の隙を突き、割り込んでくる。


 ーーそんなこと、書いてなかったよ?

「……え?」


 今度はシーファが驚く。キョトンとシロを見つめた。


 ーー勇者って特大転移魔法で違う大陸に飛ばされたって話なんだけど……。


 なんか、言ってることに齟齬がある。


「よく分からなくなってきたわ」


 プリンが顔をしかめる。


「俺もだ」

「私もです」

「……おいおい。これ、見なくていいのか?」


 その時、ガームの声が聞こえる。って、普通に喋ってるな。


 いつの間にかシロの横にガームが姿を見せていた。その手にはレーダーが握られている。


「え、え?」


 シーファに気づかれずにレーダーを取ったらしい。当の本人は何もなくなった右手を見つめてポカンとしていた。


「これ、見ろよ」


 画面を見せつけてくる。


「ちょっと、なにこれ!?」


 俺も叫びたい一心だった。


 映されていたのは魔王城。別に、先ほどと変わりない映像だと思われたが……城から丸い粒が出てくる。


 いや、違う。それは魔族だった。ゴマ粒ほど小さく見える魔族が何万人といる。


「ズ、ズームしてみてくれ」


 映像を拡大する。魔族は全員規則正しく並んでおり、武装もしている。その先頭には見たことある人物が。


「ツォッカ!? だったっけ……」


 一時俺たちの見方をしてくれた魔族。けれども、洗脳にかけられていたことで裏切りにあった。被害はなかったけど。忠告して帰っただけだし。


 あいつ、結構偉い位置にいるんだなぁ……。


 はっ!? いかんいかん。現実から目を逸らしてた。


「これは……マズイですね」


 うん。ヤバイね。かなり。


「何時間前の映像ですか?」

「……8時間前」

「マオウが進軍を始めたってかあ! ケケケ! 面白くなってきたじゃねえか!」

「全然面白くないよ!?」


 ガームは心底楽しそうに笑っている。そして、その言葉が知らずのうちに現実を叩きつけていた。


「進軍……。一度ロット国に帰ったほうがいいんじゃないかしら?」

「そうだな」


 プリンの意見に賛同。


「私もそう思います。ミィトさんに伝えなければ」

「ああ」


 ギルマスで唯一動けるのがミィト。他は精神的状態異常に侵されているため、戦闘することは無理。魔王はこの隙を突いてきたことになる。


 でも、ギルマスがこんな状況になっているのは一部の関係者しか知らないはず。何故魔王が知っているんだろう?


 考えてもしょうがないか。今は早く戻ることに専念しよう。


 ドローンはまた飛ばすことにしておいた。何かと役に立つかもしれない。


 シロの背中に乗る。


 ……アーヌ、クエストから戻ってきてるといいけど。

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