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第215話 寝る

日にちが空いてしまった……。

 俺もといサトルもといアーヌ。


 なんかややこしくなってきた。


「なんか、考えてることが分かる気がする」


 なにそれこわい。


「デリカシーっていうのを知ってんのか? プライバシーの侵害だわ」

「ひでえな!? 俺だって好きで思考を読んでるわけじゃねえんだよ! つーか俺が出来るんなら、お前も分かるもんじゃねえの?」


 そう考えてみると……おお、確かに分かるかも。


「だろ?」


 言い負かしてやった! みたいな表情をされた。


 俺はあの超一流冒険者を言い負かした! これは俺の中で後世語り継がれるだろう!


「ってやかましいわ」

「やっぱ?」

「思ってるんなら思うな」


 なんか言葉的に変だ。まあ、いいや。


 俺たちの居場所はギルドの一室。防音結界を張ってあるので外に音が聞こえることはない。


 俺が元々そんなスキルを持っていたかって?


 実はこれ、アーヌが持っていた。


 しかもかなり高度な魔法で、ミィトとかが頑張ってもそうそう壊れないようになっている。もう兵士とかやめてこの結界を役立てる仕事に就いた方がいいと思う。


 アーヌは仕事に対して嫌悪を覚えていたらしいし。


 なんでそんなことを知っているのかというと、俺はアーヌの記憶を盗み見ることができた。アーヌも同じだろう。過去にあった出来事でもすぐに分かってしまう。


 お分かりだと思う。


 それはつまり、俺が転生者だってバレていること。


 ま、バレだって別にどうこうっていう問題ではないけどな。


「死神の話だよな?」


 アーヌは腕を組み、どっかりと椅子に寄りかかった。


「ああ。それと、これからの方針についてだ」

「……方針?」

「そう。死神のことはあらかた話したし、むしろ今回の本題はそちらになるかな」


 こうなってしまった以上、死神をぶっ倒さなければいけない。それ以外に助かる方法は今の所ないからな。


 やること多すぎ。


 魔王とか、死神とか、邪神とか。


 神なんて二人いるし。


 魔王は魔王だし。


 全員強いのが難点。簡単に攻略できないし、かつ話し合いが通じる相手でもなし。


「俺、そんな状態でなんかできるの?」


 彼の言うことはもっともである。


 俺が背負ってきたものをいきなり担ぐことになったらそりゃ自信をなくす。


 そう自覚できるほど、俺は色々やってきた。レベルを上げて、ステータスを上げて、スキルを増やして。


 なんかゲーマーみたい。


 そこじゃなくて。


「なんか、拍子抜けだな」


 不意に挟まれた言葉に、俺は一瞬思考を止めた。


「ミィト様よりも強いって聞いて、どんなやつだと思ってみればって感じだよ」

「おい、どういう意味だよ」


 苦笑交じりに聞く。


「こんなにたくさんものを背負って、それでも気丈に振る舞って。……出会って数分の俺が言うことじゃないが、無理してないか?」


 優しい音色だった。思わず頬を緩めそうになったが、堪える。


「気持ちだけ受け取ってくよ。でもな、俺は無理なんかしてない。自分の出来る範囲でしかやらないんだ」

「魔王と、死神、邪神を相手にしても言える言葉か?」

「ああ」


 力強く言ったからか、アーヌはそれっきり黙ってしまった。


 あれ?


 結局本題に入ってないような?


 よし、無理やりにでも話の方向性を曲げていったる。


「俺はこれから、魔王と決着をつける気でいる」


 直角に曲がってしもうた。


 ええい! 話の方向性がなんだ! 俺は知らん!


 アーヌの喉仏が上下に揺れた。あ、俺のか。


「だから、決戦前にこうなってしまったのはかなりマズイ」

「…………」

「協力してくれるのはありがたいが、俺の力を完全に使いこなすとは思ってないんだよな。やっぱ、一長一短で身につけられるものではないものばかりだからさ」


 転生者特典とか。変化とか。


 この世界の住民には扱いづらいかもしれない。


「一つ忠告だが、決して鑑定スキルはオンにするな。意味は、分かるよな?」


 アーヌは黙って首を縦に振る。記憶を見ているため、その危険性については重々承知しているはずだ。


「アーヌが魔王と戦っている間、指をくわえて見ているわけにはいかない」

「……つまり?」


 彼は漸く口を開いてくれた。


「俺が魔王城に潜伏する」

「なっ!?」


 予想外だったのか、アーヌは声をあげて驚いた。


「難しいとは思うけどな……一か八かってやつだ」


 普通に考えて簡単に侵入させてはくれないと思う。だからこそだ。


 彼を頼る。


 その前にやることもあるんだけどな。実験も兼ねて、行くか。


「変化、やってみてくれ」

「変化……?」

「説明は後だ。とりあえず、背中にルーゲラホーホーの翼を生やしてみてくれ」

「え? え?」


 困惑しながらもやってくれるらしい。


 意識を背中に集中させ、アーヌは暫く唸っていた。


 ……一向に翼は生えてこない。


 これは無理だな。徒歩で行くしかない。


 シロたちを助けに行かなくては。


 悪魔にやられているかもしれない。その時、俺は後悔するだろう。どうしてもっと早く助けにいかなかったのか。この話に時間を費やしてしまったのか。


「走るか」

「は?」

「とにかく俺を背負って走れえ! チノ大草原に行くぞ!」

「頼むから事情を説明してくれえええええ!」


 俺の考えは杞憂に終わった。


 チノ大草原の前で倒れているのを見つけ、一瞬息が止まったのを覚えている。


 そこからはスムーズだった。


 シロと、もう一匹の悪魔を連れ、街に戻ってきた。


「そういうことで、会いに行くぞ!」

「え? は?」


 もう一つの目的ね。


 アーヌを連れてベッドにゴー。


 あ、別にやましいことじゃないからね?


「寝るぞ! おやすみ!」

「は、あ? 何を言って……」

「zzz……」

「……マジかよ」


 まだ真昼間だぞ?


 アーヌはそうボヤきながら、眠りにつくのでした。

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