第214話 アーヌの思考
風邪を引いてしまいました……。
執筆頑張りたいです……!
俺、もといアーヌは混乱していた。
今までの経緯を思い出してみる。
まずは、ミィトの家にいきなり大きな穴が開いた。これだけでも腰を抜かしそうな思いだったが、なんとか耐える。
そして、彼女の安否を確認したところ中にいるサトルという人の心配をしろと逆に怒られてしまった。
聞いたことはある。半年という短期間でSランクまで上り詰めた実力者。パーティーも組んでいて、その中に普通の人間はいない模様。サトルは陰で「裏のギルマス」とも呼ばれているらしい。
ギルマスだけの会議にも参加したことがあるみたいだ。
問題なのは、そこではない。
サトルは部屋の中央で横たわっていた。看病しようと走り寄るが、唐突に現れた仮面の女に邪魔をされる。
気が付いた時には、俺は倒れていた。
「え……」
一番驚いたのが、ミィトが俺の心配をしてくれたこと。並べられる言葉に対して疑問を持ったが、全て偽りのないものだと分かる。
「あ……、て、ミィト様!?」
「様……? どうしたの? サトルらしくない」
「え……。サトル? 俺、サトル?」
「も、もしかして! 記憶喪失だね! 頭を強く打ったからだよ!」
「記憶喪失って……」
「ああ。寝ている場合じゃなかった。サトルのためにも早く治療をしなければいけないんだった。シーファを呼んでくるから、待っててね」
一方的に会話を進められ、去っていくミィト。
その途中で誰かを見たところで漸くもう一人の男に意識が向く。
誰だ……?
そいつはミィトが走り去った方角を見て呆然としていた。
「お、お前……ッ、どうして……!」
やつは俺の顔をしていたのだ。
自分の顔を触る。どことなく、形が違う気がした。服はところどころ破けているが、先ほど着ていたものではない。
それに、ものすごく体が痛い。
何が起こっている?
「ぐっ……」
腹ばいになりながらも男へ近づいていく。
立ち上がり、持ち前のプライドで痛みを無視する。
「おい、お前……」
結果を言うと、シカトされた。
聞こえなかっただろうか?
「聞いてるのか?」
やはり無視。
このあとも相手にされなかったので、自分で考えることにした。
一旦しゃがみ込んだ。痛みで動けない。立ったことが痛手にまわったのだ。
「ゲホッ、ゲホッ」
血反吐を吐いた。
こぼれ落ちる血の塊を見て、ギョッとした。
一体この俺はなんなんだ……?
近くの水たまりで確認してみる。
「なっ……!?」
全く知らない男の顔。いや、少しは知っている。
こいつはサトルだ。
混乱して頭が爆発しそうだ。意味が分からない。
「……と、いうことは」
不意に目前の男が呟いた。何かの答えにたどり着いたらしい。
俺も、その答えやらが分かっていた。
それでも、考えたくはなかったのだ。
……そう。入れ替わっている。
にわかには信じがたいが、今のところ有効な説はそれくらいだ。夢にしては鮮明すぎるし、激痛は感じない。はず。
と、男が消えていた。その姿はすぐに見つかる。数百メートル奥で膝をつき、ゼエゼエと息を切らしていた。
何やってるんだ? あいつ。
「サトル! 記憶が消えたって、本当なんですか!?」
と、俺の元に美女二人が駆け寄ってきた。
「本人は記憶がないんだから、聞いても無駄だよ」
ミィトと……。
「私です! シーファです!」
シーファという女。
と、とりあえず記憶はあると言った方がいいのか……?
いや。中身が俺なんじゃ、記憶があるとしても彼らしい行動を取れそうにない。積極的に依頼をするのか、それとも部屋に引きこもっているのか。それすらも分からないのだから、記憶はないと言った方がいい。
そのあと体が戻った時、彼のためにもなる。
記憶がある状態で俺がヘマやらかしたら、あの男は頭を抱え込むだろう。最悪俺は殺されるかもしれない。
実力差は歴然としているし、そっちが最善策。
記憶がないと言っておけば、多少のヘマも許されるだろう。
無視されたことは腹立たしいが、それだけで問題を起こすほど俺はバカではない。と思う。
「え、えっと……誰だ?」
「あ……」
よし、上出来!
自分を褒めたくなるくらい演技がうまくできた。反応は……!?
「ちょ、シーファ!?」
ぶっ倒れた。
額に手をやったかと思うと、前のめりに倒れた。ミィトが素早く支えたから地面へ衝突することは免れたが。
「そんな……サトル……ぶくぶく……」
「泡吹いてる!? そんなに!? って、治療してあげて! サトル、瀕死だから!」
指摘された途端、痛みが走った。シーファはハッと意識を取り戻し、治療魔法をかける。
凄まじい回復力。あれだけ痛かった脇腹の肉が再生されていく。少し気持ち悪い感覚だったが、治してもらったのに文句を言う筋合いはない。
「あ、ありがとうございます」
「敬語はいいんです。私たちはパーティーなので」
「君が言うかな」
苦笑いのミィト。
思えば、彼女の笑顔を見たのは久しぶりだ。
なかなか俺の前では笑ってくれないし、当たり前か。
……となると、ここにいるメンバーは大切な仲間みたいなものなのか?
俺が介入してしまって悪い気もする。
……俺は悪くない気がする。
好きでこの男の体の中に入ったのではない。
というか、元凶はなんなんだ?
記憶はないと言ってしまった直後だし聞くのもあれだ。
俺は思い出す。
そうだ、仮面の女。あいつが現れた瞬間、意識を刈り取られた。
そう考えると、仮面の女しか犯人がいない。
はっきり言って、イラつく。
人の有無を聞かず勝手に中身を交換するなんて、普通の人間がやることではない。まずやること自体が常軌を逸している。
中身を交換するなんて、魔術で出来る範疇なのか?
見たことも聞いたこともない。でも、その魔術があるのは確か。
……目的が決まった。
俺を、俺たちをこんな羽目に合わせた仮面野郎をぶっ殺す。
そして、中身を戻してもらう。
決まれば早い。俺の目は自然とあの男を捉えていた。
足が動き出す。
協力しようじゃないか。
「待ってください。どこへ行く気ですか?」
「いい流れだったのに制すなクソが」
シーファは泡を吹いて倒れた。




