第213話 話した
ちょ、めっちゃ、疲れるんですけどー!?
なんだこいつ! ステータス鍛えてないな!?
空飛べないし、走っても数百メートルで息切れるし。せめて30キロは全速で走れるくらいにならなきゃ。あ、時速30キロね。
ゼエゼエ言ってると、こちらに近づく足音が聞こえてきた。それも複数。
任意的だ。俺に用があるみたい。
こっちはシロを助けに行かなきゃまずいんですけど……。
「ついてくんな! クソ!」
「がふっ……」
「シーファァァ!」
俺の姿をした男と、シーファ。叫んでいるのはミィトで、血を吹いて倒れているのは……。
「ええええ!? シーファァァ!」
すでに屍のようだ。
じゃなくて!
「大丈夫か!? シーファ!」
駆け寄るが、ミィトに突っぱねられた。
「あなたは来ないで!」
あ、そっか。この姿だと俺ただの兵士だもんな。
「あんまりだよ! シーファ、死にそうだよ!」
ミィトが男に向かって叫ぶ。
「だって俺記憶ないから。用があるのはこいつだし、話しかけないでくれない? ウザい」
「がはあ……」
「シーファァァ!」
吐血するシーファを横目に、その男はずかずかと大股で歩み寄ってきた。
見たところ脳筋って感じかな? こんなやつが俺の体に移ったのかー。ヘマやらかしてくれたら困る。
「協力しろ」
俺の仲間を精神的な瀕死状態まで追い込んだくせに、この態度。
「なんか嫌。断る」
「……は?」
まさか断られるとは思ってもいなかったのか、男は間抜けな声を出した。うん。間抜けだ。俺、こんな声出してたのかー。今度から気をつけよう。
「何故だ。全くわからない」
「いや、だってそんな傲慢っぽい態度で迫られてもって感じ。俺的に嫌いなタイプだし、上から目線っていうのもな。協力と言ってるんだから、せめて同じ角度から話しかけてくれないか?」
俺は吐き捨てる。
「不愉快だ」
ピキッと音を立てて男の額に青筋が浮かんだ。やめてくれー。
「ふ、ふざけんな! 俺だって悪気があってやったわけじゃねえ!」
あれ?
普通に謝ってないか?
思ってたよりも心が広いやつなのかも。
「条件付きならいいぞ」
「……なんだ?」
気が変わったので、条件を提示してみる。いたって簡単だと思うけどな。
「まず、この状態から抜け出すこと。お前も分かってるだろ? 俺たちは入れ替わっている。スキルだけは入れ替わってないけどな。だから、こんなことをしたやつをぶった斬る」
男は即座に頷いてくれた。彼も犯人には憤りを感じていたらしい。なら、話は早いな。
「ということで、お前には俺のスキルを駆使してもらう必要がある」
これが妥当だ。俺のスキルを使ってもらい、犯人と戦う。俺はすぐにダウンすると思うから、こいつが主戦力となるかな。ギルマスたちにも参加して欲しいところだけど。
「俺が、スキルを……?」
「今、お前は俺が元々所持していたスキルが使えるはずだ。そして、俺はその反対。お前が持っていたスキルを使うことができる」
水魔法で水を作り出す。
男は手を握り、開く。その中には小さな火が灯っていた。
「おお!」
なんか感激してるし。
「俺、火魔法に適性がなくてさあ! うわ〜! こういう機会なんてほとんどないから、楽しむわ!」
「楽しむな」
かなりまずいんだよ、こっちは。
「目的忘れてないか?」
「あ……」
やっぱ馬鹿なのではないだろうか。
「ま、こんなことをする敵なんて一人しかいないけど」
「分かるのか!?」
男は殺気を放つ。
心が震え上がり、息が苦しくなった。心臓を鷲掴みにされているようだ。
俺、いつもこんな威圧出してたんだ……。
「と、止めてくれ……」
必死の思いで止めさせる。
「で、そいつは誰なんだ?」
彼の問いかけに答える。
「死神だな」
「しに、がみ……!?」
「ま、まさか知ってるのか?」
「いや。全く」
茶番止めようねー。
この男はノリがいいみたいだ。どうでもいいけど。
「簡潔に言うと、生命を操れる狐の仮面を被った女性だな。死神のイメージとしてマイナーな骸骨ではない」
ん?
いつも顔隠してるし、本当はホネホネなんじゃないか?
仮面が外れてホネが覗いたりしちゃ軽くホラーだわ。あんな美しい女性の雰囲気漂わせといて。詐欺だ詐欺。
これは考えてはいけないやつだ。
「俺、そいつ見た」
記憶を掘り起こしていたのか、少し間があった。
「狐の仮面だろ? 忌々しいあの姿は一生忘れられないぜ……ッ!」
怨念が滲み出る。
「そいつをぶちのめすんだな?」
「あらかた間違ってはいない。だがーー」
俺の視線はミィトに向いた。一瞬意識をこちらに向けた気がしたからだ。ステータスが下がっていても、経験でそれくらいは分かる。
「……ミィト。外してもらえないか?」
「わ、分かったよ」
彼女は考えていたのだろう。
俺が死神というワードを知っていること。
俺がミィトを"様"付けしないこと。
ミィトは渋々頷き、シーファを担いでその場から去って行った。
「ここじゃあれだし、場所を変えよう」
「ああ」
俺はまだ聞いていなかったものを思い出す。
「お前、名前は?」
実際は今の俺の名前になるかな。
「アーヌだ。……サトルだろ?」
「おお、よく知ってるな」
「知ってるも何も、めちゃくちゃ有名人だろ!」
「えーマジかー」
「なんで残念そうなの!?」
なんやかんやあり、俺たちは場所を移しました。




