第206話 精霊登場
結局更新ができませんでした(´;ω;`)
チノ大草原に向かって出発。
ーーミィトは休暇中でしょ? それでも依頼は出せるんだね。
だからじゃないか? 自分が動けないから、俺に頼んだ。それが一番有力な説だ。
ーー確かにー! でも休暇って強制なんだね!
念を押されているんだろ。絶対に家からは出るな、とか。
ーー1週間坊主だ!
三日坊主は聞いたことあるけど……まあ、いいや。
移動は空を飛んだ。馬車とかもう古い。空を飛んだ方が行く手を阻む障害物を無視できるし。それに、馬車は金が必要だ。腐るほどあるけど、そこは……あれだ。空を飛んだら気持ちいいからだ。
シロの雷獣化はコストが高いため、俺が抱えて飛んだ。部位変化があってよかったって本当に思う。空中戦も楽になったし、剣を持ちながら魔法も打てるし。
まさしく一石二鳥。
チノ大草原を取り囲むフェンスと結界が見えてきたので、俺は着地した。兵士たちが厳重にその場を管理しているなか、空から人間が飛んできたとなるとかなり大騒ぎになる。
「誰だ、貴様!」
動揺される。不審がられる。剣を向けられる。今ここ。
「冒険者ギルドから派遣された者だ。今回現れた魔獣を討伐しにきた」
依頼紙を見せると、兵士は剣を鞘に収めた。
「すまなかったな」
そう言い、兵士は西側を指差した。
「結界の円周を辿りながら進むと、魔獣が見えてくる。こちらも魔術師総出で結界を修復しているのだが、間に合わなくてな……。今日には壊れるという。冒険者が来てくれて本当に助かったよ」
ホッとした表情で俺を見つめてくる兵士。目の下にはクマが浮かんでおり、相当の時間を警備に肥やしてきたことが分かった。
「俺たちが倒してきてやるから安心しろ」
「ああ……!」
兵士に言われた通りの道を進んでいく。
ーーこれで負けたら格好悪いよ。
一言余計だぞ、お前は。
でも、それらしき魔獣の姿は一向に見えないのが不思議な点だな。
チノ大草原は比較的木が少ない方で、かなり遠くまで見渡せる景色となっている。それなのに魔獣が見えないとはどういうことだろうか。
ーーもう結構歩いたよ。
シロが不機嫌そうに尻尾を垂らす。
「おかしいな……。兵士が間違った方向を指差したとか?」
ーー戻るの?
げんなりとした声が返ってくる。
「一度戻ってみるか」
ーーえー……。
しょうがない。
踵を返したその時だった。
『オレはここにいるけど』
「っ!?」
即座に剣を引き抜き、戦闘態勢に入る。
『ケケケ。やっぱりオマエじゃオレを感知することはできないか』
あたりに姿はない。そいつは念話で話しかけているらしい。
ーー臭いもない!
シロの嗅覚にも引っかからないとすると、これは大変だぞ……!
魔獣って感知できないの? 俺、全ての感知を持ってるんだけど?
「ケケケ。オマエの目の前だ」
何の前触れもなく、気がついたらそこにいた。
片手ほどの大きさの、小さな魔物。全身は黒で細長い尾。耳は獣耳で、つぶらな瞳が印象的だ。そして、特徴的な翼を持っている。これは、まるで……。
「悪魔だな」
「アクマじゃねえ。セイレイだ。もっとも、劣等共はマジュウと呼んでるがな」
見下す笑みで俺の発言を訂正した精霊。 いるのは知ってたけど、精霊なんて初めて見たな。っていうか魔獣じゃなかったんかーい。
「ケケケ。マオウの野郎が言った通り、ユカイなヤツだ」
ということは魔王に派遣された精霊なのか?
精霊は姿勢を改め、優雅に礼をした。
「理にかなって自己紹介といこうじゃねえか。オレの名はガームグラナ。ガームでいいゼ」
「随分と礼儀正しいな。俺は悟だ」
ーーシロはシロ。あまり教えたくないけど……。
ガームと名乗った精霊はにんまりと笑みを浮かべる。
「もっと喋りしたいところだけどよ、残念ながら命令なんだ」
そう言い、ガームは空を飛んで距離をとった。
「魔王の手下か?」
一応聞いてみる。
「少しちげえなあ」
ガームは魔方陣を展開していく。
「オレはマオウと契約を交わしたセイレイだ。手下やらの劣等共と同じにすんじゃねえ!」
魔方陣から青白い閃光が解き放たれる。雷の魔術だ。
ーーまかせて!
シロが前に出て、雷獣化を始めた。その体に攻撃が当たるが、吸収し自らの力に変える。
ーー雷!
視界が白く塗りつぶされ、遅れて耳をつんざく轟音が響いた。
視界が回復するまで感知に頼る。全感知上位を発動し、意識を集中させた。
何も見えていないのは相手も同じはずだ。条件は同じ。なら、先に手を打ち流れを作る。
俺は自分の考えが浅はかだったことを思い知らされた。
『ケケケ。お前はバカか? セイレイであるオレを感知するなんて、魔法を使わずに火球を出すほど難しいゼ! そしてそれは、不可能なんだッ!』
まさか……この状況で見えているのか? だとしたら非常にマズイ。
『知らねえのか? セイレイには目潰しが通用しないってなァ!』
くそ! 念話で話しかけてきてるから場所が特定できない!
ーー悟!
と、焦った声を出すシロの念話が届いた。
ーー一旦離れよう!
『賢明な判断だ。イヌッコロのくせにやるじゃねえか』
一歩後ろに飛び退く。
「ま、意味はねえが」
「なっ!?」
ーーっ!?
真後ろからだった。
大雑把に剣を振ったが、当たるわけもなく。直後、体がくの字に折れ曲がった。
「がはっ!」
血を吐き、数メートル吹っ飛んで地面を転がる。いや、実際は数十メートルかもしれない。あまりにも空を飛んでいる時間が短すぎてよく分からなかった。
身体中の骨が軋む。肋骨も何本か折れた。
……視界が回復していく。
シロとガームの姿を探したが、見当たらない。
それよりも、もっと驚くことがあった。
「ぼ、僕の家が!? どうして……! あ……。サト……ル?」
目の前に立っていたのはミィトだった。
ーーここは、ロット国だった。




